第172話 永華の惑星
永華の惑星。
自然豊かだけど山とか丘は無く、平坦な地形。人里は無いけど代わりに至る所に大規模な遺跡がある。なんというか、人類が滅んで1万年後の世界って感じだ。
推奨レベル120だけあって、着いた途端から大忙し。常に敵が襲ってくる。
「おっとぉ!」
体長10mはあるゴーレムの拳を避ける。
この10m級のゴーレムが雑魚敵感覚で襲ってくる。胸の中心にあからさまな弱点、コアがあり、僕はスタークでそれを撃ち抜きゴーレムを破壊していく。
「最近は対人戦ばっかりだったけど、ソロでモンスターを狩るのもやっぱり楽しいなぁ~」
というか僕の場合これが基本だったからなぁ。対人ばっかやってるこのゲームが珍しい。
イヴさんの話だと機世天使オリオンは『光る小型機』を撃つと現れるらしい。色とか形の情報は無く、大きさは直径10cm程で時速は150km~200km。とにかく光り輝いていてすばしっこいそうだ。
僕は巨大な古びた塔に入り、20分でこれを制圧。塔のてっぺんからライフルのスコープを使って索敵する。すると、
「あれかな?」
距離4km地点に星空に浮かぶ星のような、キラキラとした物体を見つけた。木々の隙間をゆらりゆらりと移動している。動きは一定で、2アクション毎に1秒止まる。僕は止まったタイミングを狙い、光る的を狙撃する。
「これで出てくるはず……」
瞬間、天から光が降ってきた。僕は青白い光に照らされる。
(まずい!!)
僕はスラスター加速して塔から飛び降りる。すると入れ替わりに、機械の天使が降ってきた。天使は塔を踏みつぶし破壊する。僕は地面に着地し、天使と相対する。
「綺麗……」
機械で出来た女神、という印象。
体長は12m程。カラーリングは青メインで、背中からは純白の翼が生えている。僕らが使っているような機械の翼ではなく、本当の天使に生えているような翼。
――機世天使『オリオン』 レベル120
オリオンは12基のピースを飛ばす。アレがまさか、
「アステリズム……!」
イヴさんから貰ったアステリズムの画像と同じだ。
ピースは散開し、角度を付けて青白いレーザーを僕に向けて放ってきた。
僕はライトウィングを起動し、高速移動してレーザーを躱す。オリオンは手に持った弓にレーザー性の矢を装填し、放つ。僕は斜め上に飛び上がって躱すが、
「うわっ!?」
矢の着弾地点から天に向けて巨大な火柱が上がった。
「あ、あっぶな~! 真上に飛んでたら終わってた!!」
僕は空中で姿勢を制御し、狙撃体勢を作る。
今オリオンは弓にエネルギーを溜めている。隙だらけだ。僕はスタークでオリオンの顔を狙って撃つ。するとアステリズム3基がレーザー弾とオリオンの間に割って入ってきた。
「なにをする気だ……」
3基のアステリズムが光を放つ。
アステリズム3基の間にエネルギーの膜が張られる。
「Δのシールド……!?」
スタークの黒いレーザーはΔシールドに触れると跳ね返り、僕に向かって飛んできた。
「反射機能まで……!」
僕は弾丸を肩に掠める。
地面に着地した僕に、Δシールドが迫ってくる。
「そういう使い方もできるんだ……!」
あのシールドを僕に直接当てて攻撃するつもりだ。さっきよりもシールド面積を広げて攻撃範囲を拡張している。速度はそこまで無いのでダッシュで避ける。
「またさっきのが来る!」
僕がΔシールドを避けている間に矢の再装填が終わってしまった。光の矢が放たれる。僕はまた飛んで躱すけど、アステリズムが僕を空中で囲い込んできた。
「包囲射撃……回避ムリ!!」
全方位からの射撃で僕を倒す気だ。でも、
「緋威炎纏!!」
僕は紅いマント緋威を羽織り、『炎纏』を起動。アステリズムのレーザーを全てマントで跳弾させ、その跳弾でアステリズムの半数を撃墜する。
(半分逃した。マントでの跳弾はまだ精度が甘いか)
スタークで残りのアステリズムも狙撃して撃墜する。
「次は僕の番だ!」
僕はバレットピースとスタークでオリオンを囲い撃ちする。オリオンは全弾浴びた。オリオンは怯み、初めて地面に足を着けた。
「反射機能付きのΔシールドに、足の速い射撃機能。小回りの利く機動性……! いいね。むちゃくちゃ欲しい!!」
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シキとオリオンの戦いを、遥か上空の黄金の戦艦から見ている者がいた。
「アレがシキ。六仙の懐刀か。いや、懐銃と言った方が正しいかな?」
ブリッジの玉座から、彼女はシキを見下ろす。
「はたして単騎でオリオンを倒せるかな。1撃でもまともにもらえば耐え切れまい」
金髪でグラサンを掛けた20歳程の女性。彼女の名はPPP。コロニー『火緋色金』の王である。
「C級ランクマッチでツバサを撃破。ラビリンスを単独で捕縛し、Ωアーツを使用したグリーンアイスをノーマル装備で打倒……しかもインフェニティ・スペースを始めてまだ1か月ちょっとって噂ですが」
PPPの横に黒髪のバニーガールが立つ。
「実際見てみると、なんとも覇気の感じない女。クイーン、どうか私にあの女を倒せと命じてください。すぐさま首を刈り取って見せます。『狙撃手殺し』の名に懸けて」
「シノハ」
PPPは立ち上がり、シノハの腹に肘打ちする。
「うごぁ!?」
濁声を上げ、腰を折るシノハ。PPPはシノハの前髪を掴み上げる。
「お前は私のなんだ? シノハ」
「ど、奴隷です」
「奴隷が主人に命令するなど許されんだろう。お前はいま、私に命じろと命じたのだ。弁えろ」
「は、はいぃ……♡」
痛みは無いとはいえ、暴力を振るわれたのにシノハは頬を赤く染めている。
PPPは羽織っていた黄金のマントを脱ぐ。
「私が直接見てこよう」
「いけませんクイーン。クイーンに万が一のことがあれば」
忠言したシノハを再びPPPは蹴る。またシノハは「ぐあっ!?」と濁声を漏らす。
「Prime(最良)にしてPinnacle(絶頂)にしてPerfect(完璧)。それが私、PPPだ。万が一? そんなものありはしない。クイーンを舐めるなよ、シノハ」
「し、失礼しました……♡」
恍惚とした表情を浮かべ、涎を垂らすシノハを、周囲の乗組員たちは不気味がる。
「留守は任せる」
PPPは格納庫より飛び降りる。パラシュート無しのスカイダイビングだ。
空中で、PPPは手を前に出す。
「∞アーツ……」
PPPの手元に機械のキューブが現れる。
「起動」
キューブが弾け、空間に稲妻が走る。
次の瞬間、PPPの背中に黄金の実翼型ウィングが装着された。
『∞アーツ、【砲皇】Kaiser-Herrschaft。展開完了』
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