第157話 ラビとロゼッタ その4
ロゼッタはButterfly-Modeを解き、ラビリンスもRed-Lieを収めた。
その瞬間、レーザー弾が両者の間を通った。
「動くな!!」
部屋に現れたのは1人の看守。
看守はアサルトライフルを構え、ロゼッタとラビリンスを睨みつけている。
「ありゃりゃ? 囚人を捕まえに来た……って感じじゃないね」
「なるほど。そういうことか」
ロゼッタは含みのある笑みを浮かべる。
「脱獄の手際が良すぎると思った。やはり、監獄サイドに協力者を持っていたか」
「ぬっはっは!」
ソニックは立ち上がり、腰に手を当て胸を張る。
「そうとも! あの子はボクっちのファンさ!! 鍵の調達とフレアレッグの奪取はあの子に手伝ってもらったのさ~」
「ソニックさん! 早くこちらに!!」
ロゼッタとラビリンスは静観する。
ソニック達を警戒したためじゃない。その背後に迫っている影を警戒してのことだ。
運動場の入り口で、ソニックと看守は合流する。
「ご無事で何よりです!」
「マジ助かった~! 出たらサインあげるね!!」
「本当ですか!? あ、ありがとうございます!!!」
「……喜ぶな。露と消える約束だ」
看守は後ろから頭を掴まれる。
「え――」
次の瞬間、看守の頭部は黒い波動によって焼かれた。首を失った体は力なく倒れ、ポリゴンになって散り去る。
看守をデリートしたのは――
「どういう風の吹き回しかなぁ? ――カムイ君」
格ゲー界の覇王、カムイ。
カムイは両手に波動を滾らせ、ニヤリと笑う。
「なぁに、ただの仕事だよ」
カムイはいつもの学ランではなく、青い軍服……オケアノス軍の軍服を羽織っている。武装も僅かに変わっており、ウィングは実翼型から光翼型にシフトしている。
「ちょちょちょ、そりゃ無いって……!」
後ずさるソニック。
ロゼッタとカムイはソニックを無視して会話を続ける。
「オケアノス軍に入ったのか」
「ああ。六仙と契約したのだ。オケアノス軍に所属することで、我の罪は帳消しとなった。首輪は外せぬが」
カムイの首にはハイテクな首輪が装着されている。
「爆弾付きの首輪かな?」
「そのようなものだ。今の我は猟犬……といったところだな」
カムイは右手に波動を溜め、ソニックに向ける。
「ちょっ!? ボクっち達仲間でしょ! カムイ!!!」
「すまんが、貴様らを仲間と思ったことは無い。我が友は強者のみ」
カムイは波動の弾を飛ばす。ソニックはスラスターを吹かし、飛び上って躱す。
「音速を騙るのだ。さすがに一手じゃ詰まんか」
カムイが双翼を展開する。同時に、ゴオォン!!! と轟音が鳴り響いた。
まるで、稲妻が落ちたような音。
「なにさアレ」
「分類は光翼型だが……アレは光翼というより雷翼だな」
カムイの背には雷の双翼が生えている。
雷鳴が再び響くと、カムイはソニックの背後を取っていた。
「嘘……!?」
「光翼型ウィング『雷閃』。これを手懐けるのには苦労したぞ」
カムイはソニックの背に右手を押し付ける。
「さらばだ」
右手から黒い波動を展開し、ソニックの上半身を弾き飛ばす。
カムイは双翼をしまい、右手をグーパーする。
「これにて任務完了。いや、あと2人残っているか」
ソニックを始末したカムイはラビリンスとロゼッタに殺気を向ける。
「君が軍の犬になるとは驚きだ」
「強者と戦えるなら場所も地位もこだわらん。特に今はどうしても倒したい相手が居てね。手段を選んではいられないのだ」
ロゼッタは両手を上げる。
「吾輩はButterfly-Modeでエネルギーを使い尽くした。戦う気はない。大人しく牢に戻るさ」
ラビリンスは頭の後ろに手を回し、
「私もいいや。君と戦うのは面白そうだけど、もうすぐリアルでやることあるからさ」
「そうか。酷く残念だ。貴殿らが脱走者の鎮圧に協力してくれたことは上に伝えておこう。ではな。我も忙しい身、これにて失礼する」
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牢屋に戻ってきたラビリンスとロゼッタは壁に背中を預け会話する。
「やっぱりさぁ、シキちゃんとやった後だと……」
「ソニック君程度じゃ満足できないね」
2人の共通点と言えば、シキに敗北し牢屋に入ったこと。
脱獄に乗り気じゃないのも、カムイとの手合わせを断ったのも、シキと熱い戦いをしたことが原因だ。2人はまだシキとの戦いの余韻にあり、次の戦いに身を投じる気になれないでいた。
「ところでさ、君はここから出たらシキちゃんとまたやり合うの?」
「さぁね。ただ何らかの形で接触することにはなるだろう。彼女ほど面白い観察対象もいない」
「ふーん。一応聞いとくけど、シキちゃんへの感情って恋じゃないよね?」
「恋? ふむ、そうだな。女性との交際に興味はあるよ。1度は経験しておきたい。だが、シキ君は恋愛対象としては幼過ぎるねェ。肉体的にも精神的にも熟している方が吾輩は好みだ。女性と付き合うならやはり……まぁシキ君は、あの人に良く似た人物ではあるが」
「え? なに『あの人』って! あの人って誰!? ねぇねぇ!」
ロゼッタは少し考え、
「端的に言うなら……人妻だ」
「人妻ぁ!?」
「いや、今は離婚したんだっけか。まぁそんな話はどうでもいい」
「どうでもよくないって! 金払ってでも詳しく聞きたいんだけど……!!」
ラビリンスは前のめりになるが、ロゼッタは無視し、
「それよりもだ。知っているか怪盗。近々、大きな祭りが起きるぞ」
「祭り……?」
「ああ。メインコンピューターを借りた際に、看守長のメッセージボックスを探ったのだが……」
ラビリンスはロゼッタから話を聞き、ニッコリと笑う。
「にゃっはっは! 凄いね。全てがガッチリとハマったよ。六仙がここに来て私や君のような厄介者を一斉に排除したのは……」
「これに備えるためだったのだろう。事の前に膿を全て出したかったのさ」
「シキちゃんは参加するかなぁ?」
ラビリンスの質問に対し、ロゼッタは肩を竦める。
「どうだろうね。面白いと思ったら参加するんじゃないかな。そういう子だ」
2人はシキの姿を浮かべ、同時に微笑みを浮かべるのであった。
「そんで人妻の話!!」
「もう忘れたまえ」
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