第156話 ラビとロゼッタ その3
ソニックが乗っているのは戦闘特化型ツインレッグ『フレアレッグ』。
大監獄『ヴォルテックス』の守護神であり、恐るべき機能が――
「それにしてもあのコックピットの位置さぁ……」
ラビリンスはコソコソとロゼッタに耳打ちする。
「ちょっと卑猥じゃない?」
ツインレッグは人間の腰から下を模した兵器だ。移動式高台であり、スペースガールが上に乗って狙撃などの遠距離攻撃をする。複雑な操作はいらないためコックピットは無く、リモコンで操作することができる。それ単体では戦闘力は皆無に等しいが、安価且つ簡単に操作でき、利便性に優れる。
しかし、ソニックの乗るフレアレッグはツインレッグの分類にあっても用途や機構はまったく別物。
高価で、操作は難しく、それ単体で強力な火力を持つ。
当然リモコンでは制御しきれず、コックピットを搭載することになった。
そこで問題となったのはコックピットを置く位置。
上部――本来『足場』であった部分は機銃などの兵器に占領されている。『脚』に搭載すれば揺れが激しくパイロットが酔う。ならばどこに置くか。技術者は悩んだ末に、あの部分にコックピットを置いた。
人間で言う所の――股間の部分である。
股間の部分に、透明な球形のコックピットがあるのだ。
「正直、吾輩もアレは趣味を疑うよ……」
2人の声を拾い、顔面を真っ赤に染めるソニック。
「――違うから」
「……股間に玉ぶら下げないよねぇ。普通」
「……ああ。しかもその中に入るとは……やれやれ業の深い」
「違うからぁ! これ監獄から奪ったやつだから! ボクっちの趣味じゃないからねっ!!」
ソニックはゴホンと咳払いし、
「馬鹿にできるのも今だけさ! くらえっ! フレアショット!!!」
「「!!?」」
フレアレッグは宙に浮かび、上部の機銃から紅いエネルギーで構築された散弾を放つ。
「ちょいなぁ!?」
「……ちっ」
ばら撒かれる灼熱の散弾。ラビリンスとロゼッタは飛んで躱すも、ラビリンスは右肩を、ロゼッタは頬に傷を付けた。
「これはまずいね」
「ああ。太陽熱を模したエネルギー体フレア。それを生成できるってことはフレア機関を搭載してるってことだ。つまり……」
ラビリンスがRed-Lieを構えて撃つ。すると、
「無駄だよ!」
ソニックは灼熱のバリア、フレアフィールドを纏い、弾丸を焼き払った。
「それもあるよね」
「どうするのアレ。突破できる?」
「無理だろう。全方位完全防御だ。レールガンやアイギスならともかく、我々の武装では触れた瞬間焼却されるのみ。ただあの兵器に搭載できるサイズじゃ展開できる時間は知れている。エネルギー切れを待とうか」
フレアレッグはフレアフィールドを纏いながら突進。
2人はまた回避するも、突進の熱風に吹き飛ばされる。
床に転がった2人をソニックはコックピットから見下ろす。
「あのグリーンアイスが! あのラビリンスが! ……ボクっちの目の前に転がっている。やっぱりボクっちは強い!!!」
ロゼッタはシステムメニューを開きラビリンスにある動画データと、ある位置情報を送信する。
ラビリンスはメッセージを見て、OKとジェスチャーする。
「どうするのかなぁ? この絶望的な状況をさぁ!!!」
「決まっているだろう」
「私達はヒーローじゃ無いからね~。勝ち目のない勝負からは……」
2人は声を重ねる。
「「――逃げる!!!」」
「……は?」
ロゼッタは床にチェーンソーで穴を空け、そこから下の階へ脱出。ラビリンスは不透明のシールドピースで身を隠し、姿を消す。
「うっわぁ、だっさぁ。別にいいけどさ。ボクっちの目的はここから逃げることだし……」
部屋に1人残されたソニックは天井に空いた穴に向かって飛翔しようとするが、
「ソニック!!」
1人の来客が運動場に現れソニックを呼び止める。
ソニックはその来客を見て驚いた。
99と書かれたマスクをしたスペースガール。自分と同じ、他ゲームから引っ張り込まれた存在――
「99! え、君もここに捕まってたの!?」
「アンタよりも下の階に幽閉されてたんだ。頼む! あたしも連れて行ってくれ! アンタに協力する! やられっぱなしじゃ終われない!」
「ふふーん」
ソニックは品定めするように99を眺め、
「ボクっちの部下になるなら連れて行ってあげてもいいよん」
フレアレッグはフレアフィールドを解き、着地する。
「わかった。それが条件と言うなら……」
「――ちょっと待った」
違和感。
なにか口調や態度に問題があったわけじゃない。けれど、ソニックは直感で99に違和感を覚えた。
「本当に……99?」
99は微笑み、右の手の平からワイヤーを射出。ワイヤーをフレアレッグの右足の付け根に絡める。
「え……?」
99はワイヤーを縮め、同時にスラスターで加速し、フレアレッグに飛び掛かる。そして手に持ったダークライトのレーザーダガーでフレアレッグの右足の付け根を貫く。
「さすがに会ったこともない人間を完璧に真似るのは無理だよねぇ~」
99の幻影が消え、中からラビリンスが現れる。
「ホログラムを使った変装……!? しまった!!」
ラビリンスはレーザーダガーは突き刺したまま、フレアレッグから離れる。フレアレッグの右足の付け根、レーザーダガーが刺さった部分で放電が始まる。
「フレア機関を……!?」
フレア機関が起爆し、大爆発を起こす。
フレアレッグは右脚の付け根に多大なダメージを受け、右膝を床につけた。
「フレア機関破壊。ロゼッタの言う通りの場所だったね。まったくさぁ~、あの短い時間でフレア機関の場所割り出すとか怖すぎ」
先ほどロゼッタがラビリンスに送ったのは99とソニックが喋っている動画とフレア機関の位置情報のみ。
それだけの情報でラビリンスはロゼッタの意図を汲み、見事に実行した。
「後は任せたよ」
床を切り裂き、金銀の翼を持ったロゼッタが飛び出してくる。
「Butterfly-Mode」
ロゼッタはコックピットの接合部分を切り裂き、コックピットを落とす。
「むぎゃ!?」
コックピットは床に落下し、割れ散った。
コックピットから転がり落ちたソニックに、悪党2人は近寄っていく。
「君は99と仲が良かったからねぇ。99と出会ったら気を緩めると思ったよ」
「元部下の美しい友情を利用するとは、とんだ悪党だねぇ~」
正面突破が無理なら奇策で崩す。
2人の策略のレベルは高い位置で一致していた。
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