第155話 ラビとロゼッタ その2
『脱獄者ハッケン! 脱獄者ハッケン!!』
牢屋から出たラビリンスとロゼッタはあっという間に警備ロボットに囲まれてしまった。
警備ロボットの種類は人型からドローンまで様々。2人の戦闘力なら問題なく突破できるが、
「こらこらチミ達~、私達は味方だよ~?」
「盗人の言葉を信じる看守がどこにいる?」
「君も似たようなもんでしょうが」
ロゼッタは気怠そうに一歩下がり、
「事が解決した後、監獄側との関係が悪化するのは避けたい。ここは君の愛銃の出番じゃないかな?」
「も~、サボりたいだけでしょうよ」
ラビリンスがRed-Lieを構えると同時に警備ロボット達は一斉に襲い掛かってきた。
機銃の弾丸を、サーベルの一閃を、捕縛網をラビリンスは派手且つ華麗に躱し、赤い弾丸をぶつけていく。
警備ロボットはロゼッタにも襲い掛かるが、ロゼッタは最小限の動きで効率よく攻撃を躱し切る。
「はい、仕込み完了」
ラビリンスはRed-Lieをストッキングに差し込む。
Red-Lieは弾丸を当てた対象にナノマシンを撃ち込み、カメラ及びレーダーをハッキングする効果を持つ。無い物を有るように見せたりはできないが、対象の視界から1~5人のプレイヤーの姿を消す事ができる。
「ようこそ。嘘塗れの世界へ」
ラビリンスはRed-Lieの力で自身とロゼッタの姿を警備ロボットのカメラ及びレーダーから消す。2人は包囲網をまるで散歩するように通り過ぎる。
「気分は透明人間だ」
「そんでどうするの? 相手の位置がわからなきゃ追い詰めようがない」
「確かに脱走者――ソニック君の居場所はわからない。だが、ソニック君の居場所を知っている者の位置はわかっている」
「そいつはどこかね」
「――看守長室だ」
看守長なら当然脱走者の位置は把握しているし、看守長室から離れもしない。
「あー、なるほど♪」
目的が決まれば後は早い。こと行動力においてトップレベルの両者はあっという間に監獄を攻略し、地下1階、看守長室の前に辿り着く。
チェーンソーの刃が看守長室の鋼鉄の扉を切り裂く。
「な!? なな!!?」
監獄の王、看守長グニスは椅子から滑り落ちた。
ラビリンスとロゼッタは両手を上げてグニスに近づく。友好の意を示すため、2人共きっちりスマイルを浮かべている。
「ハロー♪ ちょっと道を尋ねたいんだけどさ」
「脱走者は今どこかな?」
グニスは顔を引きつらせ、ラビリンスとロゼッタを指さした。
ラビリンスとロゼッタは上げた手を下げ、武器を出し、グニスの顔に突きつける。
「冗談が」
「聞きたいわけじゃないんだけどにゃ~?」
グニスは涙目になりながらソニックの居場所を吐いた。
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『ヴォルテックス』1階、玄関。
脱獄まであと一歩という場所に多くのスペースガールが揃っていた。
彼女たちは全員囚人。ソニック先導の元、揃った32機。
ソニックは監獄から奪った二足歩行型戦車に乗り、彼女たちに指示を飛ばしていた。
オケアノス兵が必死に足止めしているが、ソニックの指揮の前に成す術なく攻略されていく。
「やっぱりさぁ~。ボクっちって強いよね~? 毎度毎度相手が悪いだけ。相手を選べばこんなもんよ~」
勝ちを確信し、ぷくくと笑うソニック。
囚人達もソニックに釣られ薄ら笑いを浮かべている。――死神がすぐそこまで近づいているとも知らずに。
「残念。今回も相手が悪かったようだ」
チェーンソーがエントランスの床からザクっと生えた。
「え?」
チェーンソーは高速で動き、彼女たちの足下の床を縦横無尽に切り裂き――床を崩落させた。
「んにゃああああああああああ!!?」
ソニックと囚人達は下の階へ落下する。
落ちた先は囚人用の運動場――広大且つまっさらなコンクリートの空間。
立ち上がる囚人の前に立つは、2人の凶悪犯罪者。格の違う悪党。
「おやおや、知ってる顔がちらほら……元メーティス軍を中心に脱走させ、部下にしたって感じかな」
「へぇ。じゃあ君の元部下ってことじゃん。やりにくい?」
「ああ、まったくかつての仲間を手に掛けるなんて心が痛むよ」
ソニック及び元メーティス兵はロゼッタを見つけると、怒りを露わにさせる。
「テメェグリーンアイスゥ!!!」
「お前が負けたせいであたし達は捕まったんだぞ!!」
「絶対勝つって言ったくせに!!」
「莫大な資産と土地をくれるって約束しただろうがぁ!!」
「マジそれなぁ! ボクっち達に謝罪しろぉ!!!!」
集まる非難。敗戦の将に批判が集まるのは当然のこと。
普通なら集団の勢いに押され謝罪の言葉1つでも述べる所だが、グリーンアイスもといロゼッタは侮蔑に満ちた笑みを浮かべた。
「あっはっはっは! 科学者の『絶対』や『約束』という言葉を信じるなんて、とんだ愚か者達だ。どっちみち吾輩は、勝利したとてコロニーをぶっ壊すつもりだったからねぇ。結果がどう転ぼうが君達に幸福な未来は無かったよ。むしろ敗北した今の方が住処があるだけマシと言える。まったくもって……お気の毒ぅ~!」
「「「テメェ!!!!!」」」
「……最低だね君」
さすがのラビリンスもロゼッタに引いた。
ソニックはロゼッタを指さし、
「グリーンアイス……君が強いことは良く知っている。だけどもねぇ、この状況は流石に無理だと思うよ~?」
囚人だけじゃない。
部屋の扉から、上の階から、警備ロボット達がカメラを赤く光らせ集結してくる。警備ロボット達の狙いは囚人ではなく――ラビリンスとロゼッタだ。
「ほう。監獄の警備システムをハッキングしたか。そういえば君はハッキングスキルもまぁまぁだったね」
「つーかこの監獄が管理杜撰過ぎるでしょ。ラビちゃんげんなり」
「行け! 警備ロボット達! あのざっこざこ科学者をぶっとばせぇ!!!!」
襲い掛かるロボの群れ。
ロゼッタはニヤリと笑い、手元のボタンを押し込む。
瞬間――ロボ達の動きが止まる。
「あり……?」
「先ほど看守長を脅迫し、メインコンピューターをひととき借りてね。警備システムにカウンタープログラムを仕込ませてもらった」
警備ロボットは体を反転させ、ソニック達に向く。
「うっそ……!?」
「吾輩に技術力勝負を挑むとは本当に愚かだな。さぁ諸君、命令する。敵機にしがみつき、そして――」
ロゼッタは凶悪な面で、
「自爆せよ」
「「「「鬼だぁーっ!!!!!」」」」
阿鼻叫喚。
警備ロボット達は囚人に張り付き、そして自爆する。
「関係が悪化しないようにするんじゃなかったっけ? 監獄の警備ロボ勝手に自爆させたら100%恨まれるでしょ」
「尊い犠牲というやつさ……みんなわかってくれる」
さて。とロゼッタは目を起こす。
自爆の嵐を受け、残った敵はソニックとソニックが乗っている全長15mの二足歩行型戦車のみ。
「これで終わりじゃないだろう? 音速の攻略者」
「もちのロンだよ。とっておきを見せてあげる……!」
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