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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
スナイパーズレスト編

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第152話 金剛火針と不審者 その1

『もしもし』

「よう梓羽! 元気にしてるかぁ?」

火針(ひばり)……声が反響してるんだけど、まさか』

「風呂だよ。湯船に浸かって足の疲れを取ってるんだ。今日はめちゃくちゃ走ったからな」

『なにかあったの?』

「ああ。実はな――」



 ---



 夏休み某日。

 あたし金剛火針は駄菓子屋で駄菓子を買い、本屋で漫画を買った後、フーセンガムを膨らませながら道路沿いを歩いていた。


 古式梓羽率いる生徒会の副会長。それがあたしの肩書き。

 しかし夏休みの今、生徒会の仕事はあまりない。あっても梓羽が片付けてしまう。


 暇だ。夏休み終盤となると、もう遊び尽くしてしまって……日課のトレーニングと勉強を終わらせてしまうとやることがない。


 フラフラと小遣いを浪費する日々。なにか面白いこと起きないかな~と思っていた矢先、数メートル先にあるエアガンショップから誰かが出て来た。


 こんなバカ暑いのにパーカー、マスク、サングラス。しかもパーカーのフードを深く被っていやがる。胸の膨らみは僅かで、それだけじゃ性別の判別はできないが、短パンの下の脚……あのすべ肌を見るに女子だろう。

 パーカー女子は紙袋からエアガンの入った箱を出し眺めると、ニタ~とマスク越しでもわかるぐらいに笑った。


(怖っ!)


 しかし、体格とか見るにあたしとそんな変わらないぐらいの歳だよな……。

 女子中学生か女子高生で、エアガンで喜ぶ人物……梓羽ぐらいしか思い浮かばない。アイツは決してあんな気色悪い表情はしないが、誰も見てない場所ならそういう面を出しても不思議じゃない。


 髪の色とか、横顔、後ろ姿。よくよく見ると梓羽にそっくりだ。というか、梓羽だろアレ。


「おい」

「!?」


 背後から声を掛けると、梓羽らしきパーカー女子は背中をビクゥとさせた。


「梓羽だよな? あたしだよ。火針だ」

「……」


 パーカー女子は少し黙った後、唐突に――走り出した。


「はぁ!?」


 数秒呆気に取られたけど、すぐに気を取り直して後を追う。


「なんだぁ? 鬼ごっこでもしたいのかよ!!」


 梓羽の足はあたしよりも速い。けど、パーカー女子とは徐々に距離が詰まっていく。

 走り方が梓羽と違う。短距離走者(スプリンター)の走り方じゃない。全身を効率よく連動させて、スタミナを温存する走り方……長距離を走る人間の走り方だ。


 速い。走り方さえ習えば陸上で良い線いけるバネを持っている。

 だけど現状負ける気はしない。50m走で学年トップ3に入るあたしの方が速い。問題なし。すぐに捕まえ――


「なに……!?」


 距離10mでパーカー女子は急に体を反転。()()()()で逃げ始めた。


(バック走!? なんで!? つーか速っ! そこらの女子中学生のダッシュより全然速いぞ!!)


 だが距離は詰まる。結果は変わらない。

 なのになぜバック走を?


「……」


 サングラスの先の瞳が、あたしを観察しているのが気配でわかる。


(なんだ、この感覚……!)


 凄まじいプレッシャー。さっきまで子犬のような雰囲気だったのに、今はまるで――狼だ。

 体の隅から隅まで、眼球の動きから指先の動きまで()られている。


「まさか……!」


 バック走に切り替えたのは、あたしを観察するため。

 観察し、一瞬の隙を狙うため。つまり逃げるのではなく、コイツはあたしを抜こうとしている!


(ならあたしがすることは簡単! 意識を一瞬たりとも緩めず、隙を作らない!!)


 パン!!!


 と、あたしの鼻先で手拍子が鳴った。

 猫だまし――張り詰めた意識を無理やり一瞬、空白に染め上げる技。

 まだ距離はあったはずなのに、いきなり目の前に来た。バック走から正面ダッシュに切り替え、急激に距離を詰めたんだ。切り替えがあまりに滑らかで反応できなかった。


 跳ね飛んだ意識が再び脳に着地した時にはすでにパーカー女子は後方に居た。


「しまった!!」 


 パーカー女子は狭い路地に入っていく。


「ははっ! 面白い! 梓羽だろうがそうじゃなかろうが関係ない……絶対逃がすか!!」


 あたしは遅れながらも細道に入る。


 予期せず面白い遊び相手を見つけた……!

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レイ「(エアガン買いに来たら不審者に絡まれた……!? ど、どうしよう……!?)」 梓羽「(この勝負厨は何で道端で見かけた私の姉に襲いかかっているのだろう……())」 格好は確かにパーカーさんが不審に見…
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