第146話 正体不明! 謎の転校生登場!!
9月2日、今日は始業式♪
怒涛の夏休みを終え、ついに新学期がやってきました。
熱もすっかり下がり、体調は万全。気分はルンルン♪ 久しぶりにかわいくて大好きな学生服に身を包みます。
久しぶりにクラスメイトのみんなに会えるなぁ~! みんな元気にしてたかなぁ? 会うのがとっても楽しみ♪
「はあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
怠い。めんどくさい。誰にも会いたくない。帰りたい(まだ家も出てないけど)。
「やぁだぁ~~~っ。いぎたくないぃ~~~~~っ! 制服重い~~~っ! 好きなタイミングでジュースもアイスも飲みたい食べたい~~~~~~~~!! 誰かに自分を管理されたくないぃぃぃ~~~~~~~!!」
なんて言いつつも、JKの朝準備を着々とこなす自分の体が恐ろしい。
準備を終え、部屋の扉に手を掛ける。
「……」
部屋を振り返り、机の上のフルダイブ機器を眺める。
――ここに帰ってきている未来の自分が羨ましい……!
なんてどうしようもないことを思いながら、僕は部屋を出た。
「お姉ちゃん」
キッチンの梓羽ちゃんが手招きしている。
誘わるままキッチンに入ると、梓羽ちゃんは小さく口を開き、
「はい。あーん」
なんだろう、と思いつつ口を開くと、口の中にしょっぱい飴を入れられた。
「なぁにこれぇ?」
「塩分補給用の飴。まだ暑いから体調気をつけてね。病み上がりだし」
今日も今日とてできた妹だ。お嫁さんに欲しい。
「私帰り遅いから、お昼ご飯は自分で準備してね」
「はぁ~い。行ってきまぁ~す」
「水分補給しっかりね」
「はいはーい」
マンションを出て通学路を歩く。
見慣れた道ながらも久しい道だ。終業式が遠い昔に思える。夏休み中、色々とあったせいかな。
学校に到着。教室に入り、そそくさと誰とも挨拶せず自分の席へ。
(この朝のフリータイムが1番困る。なにもすることがない。堂々とスマホをいじるわけにもいかないし、かと言って朝っぱらから寝たふりもおかしい。黒板のニュースでも見てるかな……)
電子黒板にはこの夏休みで部活動が残した功績が流れている。特筆すべき好成績を残した部活はほとんど無かったけど、1つだけ、eスポーツ部のみ違った。eスポーツ部は数々の高校生大会にて全国出場を果たしたらしい。
(へぇ。ウチのeスポーツ部って強いんだ)
ちなみにその功績の中にインフェニティ・スペースの名前は無かった。メジャーなゲームだし、大会に出てるはずだけど、ロクな成績を残せなかったのかな。
「はーい。全員席に着け~」
担任の桜井先生が教室に入ってくる。
(あれ?)
桜井先生と一緒に、制服姿の女の子が入ってきた。
知らない子だ。しかもとっても可愛い子だ。黒髪だけど、毛先だけ桜のようなピンク色の女の子。誰?
(なんか、見覚えがあるような……)
クラスメイト達もザワザワし始める。
「ね、ねぇアレって……!」
「うそ。なんでなんで!?」
僕以外の人達はその人物を知っているのか、歓声に似た声を上げている。
「今日から転校生がウチのクラスに来ました。ほら、挨拶……って必要ないかな」
「いえいえ。ちゃ~んとご挨拶させていただきますよん」
女の子は電子黒板にタッチペンで名前を書き込む。
――『百桜千尋』
そう書き込むと、転校生の女の子はこっちに向き直った。
「百の桜と書いて『百桜』、神隠しでお馴染みの『千尋』で、百桜千尋って言いまーす。気軽に千尋ちゃんって呼んでね。よろしく~」
きゃーっ!! と歓声が上がる。
(え?? なになにこの騒ぎ!?)
このクラスだけの騒ぎじゃない。他クラスの生徒も廊下に集まっている。
「やっぱり女優の百桜千尋じゃん!」
「すっごい! あれ? 出身ってこの辺だっけ!?」
女優!? 道理で……あまりドラマとか見ないから気づかなかった。
す、すっごぉ……め、目立つなぁ~。できるだけ近づきたくない。
「!」
「……」
め、目が合った!
僕はサッと目を逸らす。
(影薄く……うすーく!)
話しかけられたくないため、気配を限界まで消す。
「ほらほら! これから始業式だから質問とかは後でな! 他クラスの連中も帰れ――って、渡辺先生まで何やってるんですか!! ……ったく、百桜の席は……窓際の一番後ろな」
嘘!? 僕の後ろ!?
「やったーっ! 主人公席だ~!」
と、百桜さんがこっちに歩いてくる。
百桜さんに釣られ、みんなの視線がこっちにくる。
うっ……新学期早々最悪だ……。
百桜さんは僕の席の傍でふと足を止め、ニッコリとした笑顔を向けてきた。
「よろしくね」
「は、はぃ……よ、よろしく、お……おねがぃしますぅ……」
限りなく小さな声で言う。
百桜さんはなぜかムスッとした顔をし、僕の後ろの席に座った。
や、やばい。なにか気に障ることしちゃったかな。って、こんな小さな声で挨拶されたら、そりゃ印象悪いよね……。
「さぁ始業式だ。全員、AR(仮想体育館)に入れ」
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