第144話 夏休みが終わる
「C:Aegis!! ――“Last-Parade”!!!」
3枚のアイギスそれぞれがバリアを纏う。
恐らく、C級ランクマッチでは制限を喰らって使えなかったアイギスの奥の手……!
「かかってきなよぉ!!!」
巨大なレーザー弾が放たれる。
ツバサさんは3枚のアイギスでレーザー弾を受け止める。僕とシーナさんはツバサさんの背後に身を隠すが……、
(ダメだ……! 押し切られる!!)
レーザー弾にアイギスのバリアが割られ、盾が破壊される。
最後……レーザー砲の最後のひと絞りが、襲い掛かってくる。
――その時。
ツバサさんは金の塗色(?)がされたシールドピース100枚でレーザー弾を受けた。シールドピースは破壊され、その余波でツバサさんは大破するも、シールドピースに触れたレーザー弾は跳ね返り、ヴィクトリア頭部のレーザー砲を破壊した。
「レーザーを跳ね返すなんて……まさか!!」
「へっへっへ! アイツがツバサと一緒に爆破したあの反射結晶……アレでコーティングしたシールドピースさ!」
下半身を失い、左腕も失い、全身にヒビを作りながらもツバサさんは右手の人差し指をヴィクトリア――ロゼッタさんに向ける。
「ばーか」
そう言い残し、ツバサさんはデリートされた。
(凄い! あのレーザーを防御して、しかも頭部のレーザー砲を破壊した!!)
「やはり、ガードナーにおいてあの人以上はいませんね……!!」
問題は残された僕達だ。
スラスターがもう切れる。ここに、空中に留まり続けることができないっ!!
『上に乗れぃ!!!』
通信機越しにレンさんの声が響く。同時に、レンさんが乗った戦闘機が僕らに向かって飛んでくる。
僕らは戦闘機の翼に捕まる。
「シキさん! 上部に体を固定する器具があります! それで体を固定してください!」
「は、はい!!」
僕とシーナさんは何とか戦闘機上部に移動し、手足首に装着する器具やワイヤーで体を固定。上部にある取っ手を両手で握り、身を屈めて振り落とされないようにする。
ヴィクトリアから放たれるレーザーの嵐を躱しながら、戦闘機は頭部の周囲を周回する。
『クレナイ! ニコ! 活路を開け!!』
レンさんが指示を飛ばす。
『あいよ了解!』
『だから命令すんなっての!!』
ヴィクトリアの頭上に2人は飛んでいる。
ニコさんとクレナイさんはワイバーンから飛び降り、それぞれヴィクトリアの右肩と左肩に着地。同時に剣を振りかぶって頭部に突進する。
『『高出力モード!!!』』
ニコさんの双剣が、クレナイさんの大剣が、ヴィクトリアの顔面にXの傷を付ける。
だけどアレでは足りない。割れ目がついただけ。もう1撃――と思った所に、そのXの傷にロケットが着弾した。
『ワシも狙撃手の端くれ。狙い撃ちはお手の物じゃ』
戦闘機は現在ヴィクトリアの正面。顔の直線上。僕はヴィクトリアの破損状況を目視する。
顔に、コックピットに大穴が空いた。ロゼッタさんの姿が、微かに穴の先に見える。
――ロゼッタさんと目が合う。
ロゼッタさんはニヤリと笑い、あるスイッチを押した。瞬間、ヴィクトリアの頭部の装甲が剥がれ、中から大量のバレットピースが射出された。
『ちっ! コイツ!!』
『やっば!!』
数にして300。
ニコさんとクレナイさんは剣で数十基は払うもバレットピースに全身を撃ち抜かれデリートされる。
『いかん!!』
残ったバレットピースは戦闘機を追ってくる。
(早く狙撃しなくちゃ!!)
両手を戦闘機から離し、座り姿勢で狙撃体勢に入る。
ロゼッタさんに狙いを定め、スタークの引き金を引く――寸前で、バレットピースの1撃を銃身に喰らってしまった。
スタークが、破損する。
「しまっ……!?」
レンさんは必死に逃げるも、バレットピースから逃げ切れずエンジン部分を撃ち抜かれてしまう。
『ここまでか……!! 降りろ!! 爆発に巻き込まれるぞ!!!』
狙撃銃が無い。
他の武装じゃ威力が足りない、届かない……!!!
ダメだ。思考が回らない。どうすれば――
『なにをボーっとしておる!? シキ!!』
「――六花!!!」
シーナさんの六花が僕を固定していたワイヤーと器具を断ち切った。
「シキさん!!」
シーナさんが僕を突き飛ばす。
「シーナ……さん!?」
「後は任せます」
シーナさんは戦闘機と共に彼方へ飛んでいき――戦闘機と共に爆発した。
シーナさん、ツバサさん、ニコさん、クレナイさん、レンさん。皆いない……もう、僕しか――
でも、僕にできることなんてもう何もない。負けた。ここまで来たのに……! 皆が繋いでくれたのに!!!
「え……?」
ビュン。と、戦闘機の爆風に乗って、六花がある武装を運んできた。
それは、シーナさんの置き土産。
電磁の弾丸を放つ、超威力の砲台。
「レールガン……!?」
僕はレールガンを受け取る。すると六花は力を無くし、落ちていった。
「ありがとうシーナさん! これなら……!!」
1分。確か1分は所有者が消えても武装は残る。やれる!!
僕はスラスターを絞り出し、上昇。ヴィクトリアの顔面と高度を合わせる。
みんなが開いた穴に、狙いを定める。
「いっけぇええええええええええええええええええええっっっ!!!!!!」
引き金を引く。
砲口から発せられた電磁の弾丸が穴を通り、ロゼッタさんの胸部を今度こそ弾き飛ばした。
トライアドが全て、消失する。
ロゼッタさんは最後に、納得したような笑みを見せ――ポリゴンになって散った。
同時に、ヴィクトリアは動きを止め、海へと落下を始めた。
沈みゆく巨大ロボット、メーティス軍の基地。
勝敗は決した。メーティス軍は壊滅……長い戦いは幕を閉じる。
僕は逆さのまま、ただ落下していく。スラスターも切れた。成す術なし。脳疲労も限界だ。アラートがうるさい。あと1分と待たず強制ログアウトを喰らうだろう。
『お疲れ様シキ君。おかげさまで我々の勝利が確定した』
六仙さんから通話が来る。
『祝勝会は日本時間、リアルタイムの22時にでもしようか』
僕が返事せずとも、六仙さんは勝手に話を続ける。
『1つだけ聞かせてくれシキ君。この夏休みは……楽しかったかい?』
僕は微笑み、答える。
「ええ……とっても」
その言葉を口にすると同時に、水面に激突。僕は耐久値を0にし、散り去った。そのままリスポーンを待たず、脳疲労による強制ログアウトをくらう。
第二次オケアノス大戦――終幕。
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