第143話 最強トリオ
作戦会議を終えた後、僕はオールザウェイの倉庫に入った。
壁を背に座り込み、息を整える。
「はぁ……はぁ……!」
脳疲労アラートが視界に出ている。
(ダメだ。これ以上無理したら強制ログアウトをくらう)
僕は∞バーストを解き、脳を休ませる。
∞バースト……やはり集中力の消費が激しい。
それに1度手放したらその輪郭を見失った。好きな時に入る、ということはできそうにないね。月上さんは意識的に入っていたけど、同じことはできそうにない。
別に∞バーストが無くてもいい。ロゼッタさんの居場所を特定した時点で役目は果たしている。
「……あ~、楽しかったなぁ……」
もうすぐこの祭りが終わるのは残念だけど、終止符は打たないとならない。
バッドジョークで、美味いドリンクを飲むために……。
(∞バーストはいらない。体中の集中力を絞り出して、1発だけ……完璧な狙撃ができればそれでいい)
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作戦決行の時。
例の巨大人型ロボット――ヴィクトリアは島を出て海の上を飛び、アシアに向かっていた。
僕らはオールザウェイで海の上空を走り、ヴィクトリアを追う。すでにオケアノス軍の空軍はヴィクトリアに仕掛けていて、大量の残骸が雨の如く海へと落下している。
甲板にはチャチャさん以外の全員が揃っている。チャチャさんにはイヴさんの代わりに舵を握ってもらっている。
「よし。十分近づけた。 ――行くぞニコ!」
「命令すんなっての!!」
陽動係のニコさんとクレナイさんが飛空機で甲板から飛び出す。
「ワシはこいつでいく」
甲板の上にはレンさんが持ち込んだ戦闘機が1機ある。
レンさんは戦闘機に乗り込み、エンジンを掛ける。
「厄介なTWはワシが排除しておこう」
「お願いします、レンさん!」
「詰めは任せるぞ」
レンさんもニコさんとクレナイさんを追うように飛び出した。
甲板に残るは3人。僕とシーナさんとツバサさんだ。
「あんまり言いたくないけどさぁ、最強のトリオなんじゃない?」
「あはは……バランスは良いと思いますよ」
「そうですね。客観的に見て、隙の無いメンバーではあります」
オールザウェイはどんどん上昇していくが、相手がこの戦艦を放置するわけもない。
ヴィクトリアの全身から砲口が顔を出し、オールザウェイを捕捉する。多数のレーザー、ロケットが飛んでくる。
「C:Aegis!!」
「双天竜、最大出力!!」
ツバサさんの大盾と、シーナさんの双銃がレーザー・ロケット・デブリを処理してくれる。おかげで僕は狙撃に集中できる。
僕はスタークを構え、準備が整うのを待つ。
「シーナちゃん! でかい瓦礫くるよ!!」
上からオケアノス軍の戦闘機が落ちてくる。シーナさんはレールガンで戦闘機を粉砕する。しかし、
「しまった!!」
シーナさんが戦闘機に集中した刹那、ロケット弾がオールザウェイの船底に着弾し、炸裂した。
大破とまではいかないけど、エンジンが故障したのか上昇が止まる。
「でも、ここなら……!」
高度十分――距離十分――
「――チャチャさん!!!」
『あいよぉ! 甲板射出!!!』
戦艦の甲板が分離し、搭載されたスラスターによって上に飛び出す。甲板は一時的に飛空機と化した。
200m程上昇したところでスラスターは切れ、上昇は止まる。僕らは自前のスラスターにより浮遊に移行し、足から離れた甲板部分は落下していく。
「……チャチャさんの発想にはいつも驚かされます」
「君んとこのメカニックがいっちばんイカれてるよ!」
(あの人ホント、人の家になに仕込んでるの……!!)
ともかく僕らは一瞬で、ヴィクトリアの頭と同じ高度に飛べた。しかも頭の後ろ、距離150m。
「シーナさん!」
「はい! レールガンで装甲を剥が――」
その時、ヴィクトリアの頭部がぐるんと180度回った。
「「「なっ!?」」」
ヴィクトリアの額にはレーザー砲が付いている。1撃でオールザウェイを破壊できるレベルの、戦艦の主砲サイズのレーザー砲だ。
(まさかロゼッタさん、僕らがこの位置を取ることを読んでた……!?)
レーザー砲が、僕らに狙いを定める。
空中――予測される攻撃範囲――回避不可……死――――!!!
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