第142話 ましゅまろの翼
屋上へ飛び出し、うずくまるロゼッタさんを見下ろす。
トライアドは三位一体。その内の1核を失った時点で、効力は無くなる――はずだった。
「吾輩の負けだシキ君」
胸部を失ったはずなのに、ロゼッタさんはデリートされない。
「そんな……!?」
「これはバグと言わざるを得ないな……」
ロゼッタさんは立ち上がる。その胸部は金銀のエネルギーで補完されていた。
壊したはずのトライアドまで、金銀のエネルギーで補完されている。
まさか――
「トライアドもロゼッタさんの体の1部になっていた……だから!」
「そう。トライアドに対してもButterfly-Modeによる『失った部位を補完する』作用が働いたのだ」
すぐさまG-AGEをロゼッタさんに向けるも、足下が揺れたせいで狙いを外す。
「基地全体が、揺れている!?」
まるで地震だ。
「もっとも、こんなもの製作者側の意図した仕様ではないだろう。予想外の組み合わせによる異常事態、処理ミス。いつウィルスとして除去されるかわからんが、この存在が保てる限りは足掻かせてもらう!!」
ロゼッタさんはUFOに右手を押し付ける。
「刮目せよ! この基地が持つ第二の姿――ヴィクトリア起動!!」
UFOが、傾いた。
「くっ!?」
UFOは分解し、ロゼッタさんを中心に再構築していく。
僕の足下も分解され、僕は足場を失った。
「まっずい!!」
そのまま大空に投げ出される。
ウィングで基地に戻ろうとするも、基地は変形しつつ急速に上昇しているため追いつけない。
「シキさん!!」
戦艦が変形中の基地から飛び出してきた。僕の家……オールザウェイだ。
甲板を覆う装甲は突入の際に剥がれ、甲板はむき出しになっている。その甲板の上にはシーナさんが立っていた。
「こちらに!」
シーナさんが手を伸ばしてくる。
僕は手を取り、甲板に引っ張り上げてもらった。
「ありがとうございます、シーナさん」
「いえ。礼には及びません。それにしてもアレは一体なんですか」
「僕にもわかりません。ただ、ロゼッタさんがアシアを落とすために隠していた奥の手だということはわかります」
基地の変形が終わる。
――人の形になった。
巨大人型ロボット……否、
「超巨大人型ロボット……!!」
山のように大きい。全長1000mは超えている。
圧巻の迫力……かっこいい!!
「アレを落とすのは至難ですね」
その1踏みでオールザウェイは塵と化すだろうね。
戦艦は1度、地上へと下りる。
すでに地上戦はオケアノス軍が制しており、オケアノス兵しかいない。
「シキ! シーナ!」
甲板にスペースガールが乗り込んでくる。
乗り込んできたのはピンク髪のスペースガール……ニコさんだ。
「ニコさん!? なぜここに……」
「ニコさん達は地上部隊に参加していたのですよ」
「達……?」
「はい。ニコさんの他にも……」
新たにアタッカーとスナイパーが地上から飛んでくる。
「ワシらを負かせたチームが勢揃いじゃな」
「ホントだ。今すぐにでもリベンジマッチがしたいとこだぜ」
「レンさん! クレナイさん!」
紅蓮の翼の2人まで!
「あと、コイツもいるぜ」
「――だー! くっそぉ!!」
最後に乗り込んできたのは最強のガードナー……。
「可愛い可愛いツバサちゃんをダストシュートするなんて……! 許されないっての!! もうさいっあく!!」
「つ、ツバサさん……あんな仕打ちを受けてよく生き残れましたね」
空に投げ出された挙句爆破されたのに、左腕の欠損だけで済んでいる。アイギスが3枚減ってるから、アイギスも3枚犠牲になったかな。
「ギリギリアイギスでガード固めて爆撃は防御した。落下ダメージは色んなアイテムと技術を駆使して軽減した。それでも装甲値が高く無きゃ死んでたけど……てか、見てたのシキちゃん! なら助けてよ!」
「す、すみません。さすがにアレはどうしようもなく……」
戦艦の中からチャチャさんから姿を現す。
「面子は揃ってんねぇ~。それで、どうするよ皆の衆」
「決まってるでしょ。この屈辱、絶対叩き返してやる~!!」
ツバサさんはメラメラと盛り上がっている。
「私も暴れ足りないっての!」
「下は銃撃戦メインで、ロクに斬り合いできなかったもんなぁ」
ニコさんとクレナイさんも乗り気だ。
「なんじゃ、全員意思は固まっておるな」
「ええ。あの空飛ぶ巨人を我々で撃墜しましょう」
レンさんとシーナさんも呼応する。
「撃墜は無理じゃない?」
と冷静に言ったのは意外にもチャチャさん。
「そ、そうですね。あのロボットを破壊できる武装は無いです」
「ならどうすんの? ――アンタのその顔、もう道は見えてるみたいだけど」
「はい。あのロボットを破壊するのは無理ですが、頭を潰せば止めることはできます。ロゼッタさん……グリーンアイスを倒せば、アレは止まるはずです」
僕は∞の瞳を通してロゼッタさんの周囲を確認する。
ロゼッタさんはコックピットであの巨大ロボットを操作している。かなり複雑な操縦だ。ロゼッタさん以外の人間、あるいはAIでは後は継げない。
「チャチャさんも同感だけどさ、相手の位置がわからないと……」
「位置は視えてます。あのロボットの頭部、あそこにいます」
「なんでそんなのわかるのよ?」
「それは……」
なんでと問われると難しいなぁ。
「こ、根拠は無いですぅ……」
しまった。嘘でも設計図を見たとか言えばよかった。
「今はシキさんを信じましょう」
「そだね。シキっちょが冗談言うわけも無いし」
シーナさんとチャチャさんが言うと、ニコさんはため息を吐き、
「それもそうね。戦場においてはまぁ、1番信用できる」
「皆さん……」
シーナさん、ニコさん、チャチャさん、ツバサさん、クレナイさん、レンさん。
全員を視界に収める。
「お……お願いします。今回の作戦指揮、僕に任せてください。必ず、グリーンアイスを撃ち抜いてみせます……!」
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