第136話 見守る人々
UFO型基地『アテナ』。
その上空を、1機のヘリが飛んでいた。
「さぁ見えますでしょうか皆様! ここはサザンフォード島、メーティス軍基地の上空です! 凄いですねぇ、どでかいUFOがあります! あ! 改めて自己紹介します! アナウンサーのくじらです! 今日も元気溌剌、向かうところ敵なしの実況をお届けします!!」
アテナの防衛システムがヘリにレーザーを放つが、ヘリは躱して滞りなく撮影を続ける。
「戦況はオケアノス軍優勢か! このままメーティス軍は敗北してしまうのか!? ――おぉっと!? なんだアレは!!」
カメラマンがアテナの屋上、とある2人の女性をズームする。
「あれは……間違いない! メーティス軍のリーダー! グリーンアイスだ!! グリーンアイスが何者かと戦っているぞぉ!?」
その映像は各地に届く。
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酒場『バッド・ジョーク』。
酒棚にあるテレビに、30人を超えるスペースガール達は釘付けになっていた。カウンターの前でスペースガールが山になっている。
「おいアレ! シキじゃないかシキ!」
「マジじゃん! なんでなんで!」
「シキは六仙のお気に入りって噂はあったけど……」
「え!? じゃあなに! 六仙の指示で敵の大将を倒しに行ったってこと!?」
カメラに映るシキに慌てふためくジョリー・ロジャーの人々。
バッド・ジョークのマスター、ビヤンカは全員の最後尾から声を出す。
「ほらみんな。一旦敵軍が引いたからって油断しないの。またいつ襲ってくるかわからないんだから」
「もう大丈夫だと思うけどねぇ」
と、最前列でテレビを見ていた軍警フーリンが言う。
「フーリンちゃん……軍警が戦争中にサボるってどうなの……?」
「それよりママ、見てみなよコレ」
観衆はビヤンカのための道を開ける。
ビヤンカはカウンターに入り、カウンターの中からテレビを見る。
「シキちゃん……」
ビヤンカはシキの戦いぶりを見て、1人で戦うシキを見て、拳をグッと握る。
「が――」
息を大きく吸い込み、
「頑張れーっ!!」
と大声で言い放つ。
静寂に包まれる店内。おしとやかなビヤンカが大声を出したゆえに、みんな驚きのあまり数秒沈黙した。
だけどすぐさまビヤンカに続くように、
「頑張れシキ!!」
「そこだ! やれ! やれぇ!!」
「ぶっ放せ!!!」
まるでプロ野球の観客のように、声援を送り始める。
いつの間にか店内は夜の宴よりも騒がしくなっていた。
ゲーム内時間で16時。夕方を迎える前に戦いは終わるのか……2人の決着にオケアノス中が注目する。
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戦艦『オールザウェイ』。
オールザウェイの修理を行っていたチャチャとシーナとソルニャーだったが、チャチャの声で一時3人は作業を止め、集まっていた。
「見てよこれ」
チャチャが展開した電磁スクリーンには報道ヘリの映像――シキとロゼッタが映っていた。
「これは……UFOの上ですかね」
「うん。行こうと思えばすぐに行けるね。どうする? 援護に行く?」
シーナは首を横に振る。
「無用でしょう。加勢に行けばシキさんの能力に蓋をしてしまいます。今のシキさんはいつもと違う……なにか、特別なものを感じます。邪魔をしてはいけません」
分析家のシーナの的確な判断。チャチャは「そだね~」と同意する。
「我々はいざという時のため、戦艦の修理を急ぎましょう」
「アイアイサー」
「あいあいにゃー」
3人は作業に戻る。
シーナは天井に空いた穴を見て、微笑む。
「頑張ってください……シキさん」
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高層マンション『ムーンライト』、最上階。
巨大スクリーンを前にソファーに腰かける人物が2人。月上星架と月上乱月の月上親子だ。
「お、良い映像があるじゃないか」
と、乱月がチャンネルを合わせたのは報道ヘリの映像だ。
「シキ……」
「もう片方は誰だ?」
「敵のリーダー」
「へぇ、ラスボス戦ってわけだ」
乱月は「ふーん」と興味深そうな目をする。
「相変わらず良い動きだねシキちゃん」
「相手も良い動き。トライアドの力を引き出せてる」
「トライアド……∞アーツに匹敵する宝珠か。というかあの白衣の方、なんだか見知った面影が見えるなぁ」
シキが紅い衣を羽織る。乱月はシキの意図がわからず眉をひそめた。
「なにをするつもりかな? シキちゃん」
「詳細はわからない。けど……きっと面白いことだよ」
星架はシキの真剣な眼差しを見て、小さく口元を笑わせた。
「頑張れ……シキ」
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