第135話 シキvsロゼッタ
「ツバサさん!?」
ツバサさんが敵を倒した瞬間のことだった。
ロゼッタさんは、手元に握ったリモコンのボタンを押した。
すると、ツバサさんのいた部屋が基地から射出され、爆散した。
「ロゼッタさん……あなたは……!!」
「あっはっは! イイ~散りっぷりだ。あの子は残しておくと面倒なのでね、ここで処理させてもらったよ」
ロゼッタさんは椅子を回転させ、僕に体を向ける。
「もちろん、賭けは君の勝ちさ。ステージを選びたまえ」
どのステージにもあの金結晶の部屋のような仕掛けをしているに決まっている。
ならば、
「ステージは――」
僕はG-AGEをロゼッタさんに向ける。
「ここだ」
「いいだろう」
僕は引き金を引き、防御貫通の弾丸を発射する。ロゼッタさんは操作盤を蹴り、椅子のローラーを滑らせ背後に避ける。
ロゼッタさんは手に持ったままコーヒーカップを投げてきた。僕は右手でカップを払う。同時に、ギュインギュインと、空気を削る音が聞こえた。
「そぅれ!!」
「うわっ!?」
ロゼッタさんはチェーンソーを振り回す。僕はなんとか身を翻して躱すも、頬に1線の傷を負う。
(戦うには狭い場所。あっちの間合いだ……)
僕は光翼を展開し、真後ろへ飛ぶ。
「逃がすか……!」
ロゼッタさんは追ってくる。
アサルトライフルで牽制しつつ、部屋の外へ。廊下を飛行して逃げる。ロゼッタさんはシールドピースでアサルトライフルの弾丸を受け、真っすぐ迫ってくる。
(完璧なガード! というかこの人……)
ウィングを使ってないのにウィングを使っている僕より速く、しかもスラスターの持続時間も長い!!
「くっ……!」
スラスターを回復させるため廊下に着地する。僕の着地を狩ろうとロゼッタさんが迫る。
チェーンソーの突きは躱すも、腹を蹴り飛ばされ突き当りの壁まで飛ばされた。
壁に背中からぶつかる。
「かはっ!?」
ただの蹴りがなんて威力! 20mぐらい吹っ飛ばされた……!! スペースガールの馬力じゃない!!
「この、力は……!?」
「終わりかなぁ!!」
ロゼッタさんは僕に接近し、狂ったようにチェーンソーを振り回す。
僕は立ち上がり、回避する。
(こんな読みにくい太刀筋は初めてだ!!)
僕はなんとか躱し切るも、僕の背後の壁は斬り刻まれ破壊。外に繋がる巨大な穴ができた。
(しめた!)
僕は穴から基地の外へ脱出。UFOの外壁を足場に駆け上がる。
(開けた場所に出られた。ここから巻き返す……!)
ロゼッタさんも穴から外へ出て、スラスターで空を飛んで追跡してくる。
(この速度、それに馬力……明らかにスペースガールの枠を超えている!!)
チートか、バグか。
どっちだろうが撃ち抜く!!
「G-AGE!!」
G-AGEでロゼッタさんを狙う。
ロゼッタさんはG-AGEを警戒し、速度を緩めて慎重に弾を避ける。
「ちっ。厄介なんだよその銃」
よし、G-AGEは良い牽制になった。
僕はUFOの屋上へ到達する。平坦且つ障害物がなく、見晴らしのいい場所だ。
ロゼッタさんも屋上へ出てきて、僕と対峙する。
「いつの間にか、随分と掃けてしまったな」
ロゼッタさんが言っているのは自軍の空軍のことだろう。無数にも思えたロゼッタさんの防衛兵器たちはオケアノス軍の地上軍を抑えるために下に行ってしまったようだ。
どうやら地上の攻防はオケアノス軍が押しているらしい。きっと、指揮官さんが僕らに集中しているおかげだ。
「なんですかその体……明らかに普通じゃないですよね」
「ん? ああこれね。ようやく馴染んできたって感じかな」
ロゼッタさんはシャツのボタンを外し、胸の谷間を見せてくる。
「ちょっ!? いきなりなんですか! お色気攻撃ですか!」
僕は顔を両手で覆い、指の隙間から谷間をじっくり見る。
「そんなつもりは無いのだが、それなりに効果はあるようだな……」
違う。谷間じゃない。ロゼッタさんが見せたかったのは、胸部の輝きだ。
左右の胸あたりと、鎖骨のあたりが琥珀色に輝いている。輝きを繋ぐように光の線が走っている。
――光の三角形が見える。
あの輝きは見覚えがある。そう、アレはトライアドの輝きだ。
「トライアドを内蔵しているんだよ。トライアドを取り込んだことで、∞アーツ使用者と同様に吾輩のステータスも上昇しているようだ。完全に同調すれば、∞アーツにすら対抗できるだろう」
ロゼッタさんはシャツのボタンを戻さないまま話を続ける。
「もっとも、トライアドを全開にすればタイムリミットが発生する。君相手には使えないね。とっておきは六仙討伐に残しておかないと」
まだ上があることをアピールして、僕の戦意を削ぐのが目的かな。
生憎、逆効果だ。そう言われると意地でも全力を引き出したくなる。
(トライアドとはいえ、G-AGEは効くはずだ。あの三か所の内、一か所でも撃ち抜ければ……)
現在ロゼッタさんは∞アーツ並みのステータス強化を受けている。
馬力はもちろん、装甲値もスラスターも桁外れだ。エネルギーも戦闘中に尽きることはまずなく、レーダー勝負も勝てるはずなし。
隠れることも、逃げることも、スタミナ切れを狙うことも不可能。真っ向勝負で片を付けるしかない。
「!?」
ロゼッタさんはチェーンソーを――投げた。馬力が強化されている分、投擲物の速度も速い。
僕は右に飛んで躱すも、
「そぅれ!!」
ロゼッタさんはチェーンソーから伸びたスターターロープを引っ張る。チェーンソーは横に流れ、僕を追撃する。
僕はG-AGEを発砲。伸びたスターターロープを撃ち抜き断ち切る。続いて勢いのついたチェーンソーの持ち手の部分を空いている手、左手でキャッチしようとするが、
「……嫌な予感」
カチ。と、チェーンソーから音がした。
(またやらしい手を!!)
僕はキャッチはせず、アサルトライフルを実体化させてライフルの先でチェーンソーを上に弾き、上に飛ばしたチェーンソーと自分の間にシールドピースを張る。
チェーンソーが起爆。爆風をシールドピースで防ぐ。
ザ。と、足音が聞こえた。
気付いた時にはロゼッタさんは距離2mまで来ていて、また新たなチェーンソーを構えていた。
チェーンソーを斜め下から振り上げてくる。僕は屈んで振り上げを避ける。
屈んだ僕に向けて、ロゼッタさんは左手の裾に隠した銃を向けてくる。
(列車で見せた仕込み銃!!)
僕はシールドピースを7枚直線に並べて置き、仕込み銃の1撃を受ける。仕込み銃から放たれたレーザー弾はシールドピースを2枚割るも、3枚目で止められた。
僕はG-AGEを2発撃つも、簡単に躱され、距離を取られる。ロゼッタさんは軽いフットワークで、残像を生む程の速度で動き、攪乱してくる。
「さてどうする? これだけのステータス差……はたして埋められるかな」
ただステータスを上げただけならそこまでの脅威じゃない。元々体術ができる人だからこそ、このステータス強化が厄介なんだ。
ロゼッタさんは純粋に強い。あれだけ強化された体は逆に扱いづらいはずなのに、完璧に適応している。
それでいて狡猾な戦術、変則的な戦法を取る。ラビちゃんとニコさんの戦闘スタイルを足して2で割った感じだね。
このままペースを握られ続けるのも癪だ。
1つ、トリックをかまそうか。
「緋威」
僕は赤いマントを纏う。
「……一時的にレーザーを弾けるマントか。だけどその衣、吾輩のチェーンソーには無力だよ」
「せっかくですロゼッタさん。1つ、妙技を見せますよ」
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