第128話 Combo:Arms
シーナの強みは高い脳波強度と洞察力の高さだ。
ゲームを始めたばかりのシキ、ニコ、ツバサ。さらに表舞台に立たず活動していたチャチャの力を初見で見抜いたその洞察力は戦闘においても活用される。
相手の動きの癖や思考の癖を瞬時に見抜くだけに留まらず、相手の潜在能力すら把握し未来の成長すら読み切る。
シキがシーナに敗北した要因はここにある。分析力という1点に限ってはシーナは確実にシキの上をいっており、さらにスタートの時点で互いに大きな情報量の差もあった。シキはシーナの手札を表面的にしか把握しておらず、逆にシーナはシキの手札をある程度把握していた。直前に砂漠で手合わせしたことも大きい。あの戦いでより正確な現状をシーナは把握することができた。
相手の能力を完全に『観測』したシーナを崩すことは最強のガードナーであるツバサを崩すよりも難しい。
奇しくもその特性はソニックのものと酷似している。両者共に分析家、ならばその戦いを分けるのはデータの量と分析力。
前者においてはソニックが優勢だが、後者においては――
「知ってる知ってる! 最大出力はその二丁の性能を限界まで引き上げるやつ! 紅竜は1撃の強さが増し、蒼竜は連射の速度が2倍になる。効果時間は最初に引き金を引いてから10秒! 全部知ってる!!」
「互いのプレイヤースタイルが同じだった場合、勝負を分けるのは何だと思いますか?」
シーナはせっかく解放した双銃を上に投げ、レールガンを肩に装備し、左手にサーベル、右手にスナイパーライフルを同時に展開する。
ハンドガン・ハンドガン・サーベル・スナイパーライフル・六花・レールガン……ここに、シーナの全ての武器が揃う。
「――格ですよ」
シーナはまず狙撃銃を右手で撃ち、ソニックの顔面を狙う。
「くらうわけ……!」
ソニックはへパイトスでそれを防御するも、視界をへパイトスで埋めてしまった。
シーナはライフルを捨て、サーベルを高出力モードにし、近距離にあったバレットピース5基を2振りで破壊。出力を失ったサーベルも捨て、先ほど投げたハンドガン二丁をキャッチし、同時に発砲。連射力を上げた蒼竜でバレットピースの残り全てを撃ち落とし、破壊力を上げた紅竜でへパイトスを全て破壊する。
「なっ! は!?」
ソニックはあっという間に武装を丸裸にされる。
ソニックは新たに武装を展開しようとするも、六花に両腕を斬り落とされ武装展開の機を失う。
「ち、違う……こんなの……!?」
「残念ですがソニックさん。私の下位互換であるあなたはこのゲームでトップにはなれません」
ブーストモードが終わり、エネルギーを失った双銃を捨て、シーナは最後にレールガンを構える。
「僕っちが攻略されるはずがない! 僕っちは……最速の攻略者なんだから!!」
ソニックは背中を向け逃走するも、雷速の弾丸はそれを許さない。
「“Combo:Arms”」
電磁弾がソニックの胴体を消し飛ばした。
武装をフルに使い、連撃を繰り出す“Combo:Arms”。全ての武器種を満遍なく使えるシーナの奥義である。分析家であるシーナは相手の急所をこのコンボで突き切るのだ。ツバサはこの連撃を捌くために、C:Aegisを生み出した。
――第24研究所・シーナvsソニック。勝者、シーナ。
「さて、あとはこの黒い箱の解除ですが……」
シーナは黒い箱の周辺を探索し、箱に接続された操作盤を発見した。操作盤のすぐ近くには扉があるが、どうアプローチしても開かなかった。
シーナは仕方なく操作盤をいじりだす。
「……こういうのはチャチャさんの領分なのですが、戦艦からここまでの距離は長い。仕方ない。私でも何とかなりそうなレベルですし、やってみますか」
シーナは1分ほど触ってみて、解除までの時間を予測する。
「……5分、はかかりますかね。それにしても」
箱の中からは激しい戦闘音が聞こえる。
(この箱、かなり頑丈だ。防音室なんて比にならないほどのシャットアウト力を持っているはず。なのに、中の音が聞こえる。一体、中ではどれだけ激しい戦闘が行われているのか……)
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