第124話 Legion
「そぅら、ご挨拶!!」
六仙の狙撃銃からレーザー弾が放たれる。
レーザー弾はまず戦闘機を1機貫き、その後で弾道を急激に屈曲させ、別の戦闘機を貫き、さらに弾道を変えて飛行艦を撃ち抜く。計3度の弾道変化で2機の戦闘機と1機の戦艦を破壊した。
「トリプルアクシス!!!」
212基の子機が戦場に散り、一斉射撃。空の敵機を次々と撃ち落とす。敵空軍も負けじと六仙及び周辺の戦艦へ向けて弾丸の雨を降らせるが、子機同士の間を埋めるようにバリアが展開され、弾丸を全て防いだ。
「なっははぁ!! ……相変わらず脳が狂いそうになる情報量だ」
∞アーツ『Legion』。【軍神】の異名が示す通り、Legionはただの1武装で軍隊を構築することができる。
Legionを起動するとまず狙撃銃『ファランクス』と万能子機『トリプルアクシス』を展開する。
ファランクスの射程は22.5km(六仙の技量の問題で9.5kmが最大射程)。さらに脳波で軌道を大きく変更することが可能で、六仙の脳波強度(521)では3度の弾道変更が可能だ。破壊力も凄まじく、∞アーツ以外ではまず防ぐことが不可能の代物。
子機であるトリプルアクシスはピース系武装であり、3種の形態を持つ。
射程2.5kmの射撃ができる射撃形態。
レーザーの刃を形成し相手を貫く突撃形態。
ピース同士の間を線で繫ぎ、その線で囲んだ範囲にバリアを張る防御形態。
攻防・近遠、全てに対応できるまさに万能。
トリプルアクシスは使用者の脳波感度によって展開される数が決まり、六仙の脳波感度(510)では最大255基展開することが可能である(調子により上下あり)。
ファランクスもトリプルアクシスも脳波による操作が主であるため、脳の疲労は半端ではない。しかし、その殲滅力は戦局を容易に変える。
『嘘だろ!? 前衛が全滅!?』
『なんなんだこの弾幕は!?』
『……こんな……これが……∞アーツの力。たった1人、たった1武装で、艦隊が殲滅されるのか!!』
メーティスの空軍はLegionの殲滅力に成す術なく撃墜されていく。
これだけの強さだ。もちろんLegionのエネルギー消費・反動は半端なものではないが心配はいらない。∞アーツは共通して使用者のステータスに大幅なバフを掛ける。
Legionの場合、全ステータスに+300の補正、ENには+3000の補正が入る。レーダーの索敵範囲は2.5kmまで拡張。ウェイトマイナス・耐熱装甲・遊泳装甲が自動装備され(元々装備されている場合はさらに性能を強化)、馬力も倍になる。
∞アーツを起動させたスペースガールは通常のスペースガールとは一線を画す。だがその大幅なパワーアップに神経を追随できる人間は限られており、誰でも使える代物ではない。
六仙は敵空軍の大部分と、敵海上艦隊の前線を壊滅することに成功するが、
「ふぅ……!」
ついため息を吐く程に疲弊していた。
六仙はトップクラスの指揮能力を持つ。ゆえに、大量の子機で自在に陣形を組めるLegionの性能面との相性はバッチリだ。だがLegionのリスク面である脳疲労との相性は悪い。六仙の脳波数値は常人よりは遥かに優れているが、Legionを扱うにはギリギリ。たった数分の使用でもその疲労は凄まじいものだ。
(限界が近いか。だけど、最後にもうひと仕事)
六仙は狙撃体勢に入り、敵海上艦隊上空に向かってレーザー弾を放つ。
レーザー弾はある戦艦の真上・上空で弾道を曲げ、まるで雷のように真下に落ちる。レーザー弾は下にあった戦艦を貫き、破壊する。
六仙が落としたのはメーティス軍の中で最大機体収容量を誇る航空母艦だった。
「……ここまでだ」
六仙は港まで退避し、∞アーツを解く。同時に、脳疲労アラートが響きだした。
「アラートが止むまで休憩しないとな。いま強制ログアウトになったら最悪だ」
六仙はその場に尻もちをつき、ゆっくり深呼吸する。
周囲の兵士たちが感嘆の言葉を叫んでいるが、六仙は自分の世界に閉じこもる。戦局に影響のないただの称賛に耳を貸す余裕は無かった。
(これで海戦は制したも同然。だけど、実際に戦ってわかった。相手の主戦力クラスはここには居ない。きっと基地に揃っている)
ならば、と六仙はネスに通信を繋ぐ。
「ネス君、浮いている戦力は全てサザンフォード島に向かわせるんだ。増援部隊の指揮は君に任せる。僕は間もなく管制室に戻り、引き続き海軍の指揮を執る」
『了解しました』
「増援が着き次第、君のタイミングで宇宙で待機している彼女たちに合図を頼む」
指示を出し終え通信を切り、六仙は遥か彼方の空を見つめる。
「君がいるおかげで、大胆なカードも切れる。ホント、良い拾い物だった」
六仙はある日の光景を思い出す。ある月面での出来事を思い出す。
「月の上で、初めて君の狙撃を見た時から……僕は君のファンなんだよ。シキ君」
六仙は右手で銃の形を作り、空に人差し指を向ける。
「さぁ存分に見せてくれよ。僕の推しの力をね」
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