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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
コロニー崩し編

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122/202

第121話 脳波強度・脳波感度

 カプセルに戻ってきた僕は立ち上がり、体を伸ばす。シーナさんとツバサさんも遅れて戻ってくる。


「やられました。僕の完敗です」

「ウィングのせいか、いつもより動きが(にぶ)ってましたね」

「はい……慣れるまで時間がかかりそうです」


 でもそれを抜きにしても、シーナさんには勝てそうになかったな……。


「驚きました。脳波武装ってあんなに速く動かせるものなんですね」


 僕があの対戦で抱いた疑問。それは僕とシーナさんのピース系武装の速度差だ。

 アレはやっぱり武装のランク差によるものなんだろうか。


「シーナちゃんの脳波強度は異常だからね」


 と忌々し気にツバサさんが呟いた。


「脳波強度ってなんですか?」

「はいぃ? 本気で言ってる?」


 ツバサさんは呆れたように肩を竦める。どうやら脳波強度とやらは常識問題らしい。


「説明してあげればいいじゃないですか」

「はいはい」


 ツバサさんは指を2本立て、


「脳波系武装を扱う際に重要な能力が2つある。1つは脳波感度。これは1度に操れる脳波武装の数・質量を決める能力。そしてもう1つが脳波強度。これが高いと1つ1つの脳波武装の動きが速くなり、器用になる。シーナちゃんはこの脳波強度が恐ろしく高いから、脳波武装の動きがアホみたい速い」

「ですが、脳波感度は並レベルなので、ツバサさんのように大きな盾を幾つも併用し、さらにシールドピースを全て同時に動かすなんて芸当はできません」


 脳波感度に脳波強度! コレ、結構重要な要素じゃないかな……。

 このゲーム、脳波で動く物いっぱいあるもんね。


「脳波系武装の商品に必要脳波強度とか書いてあったでしょうに。よく今まで知らずにこれたねシキちゃん」

「そ、そういえば、値段の下になんか変な数字が書いてあったような……」


 売り物のバーコードの下にある数字(JANコードだっけ?)と同じようなモノだと思って無視してた。


「ではシキさんは自身の脳波数値を知らないのですか?」

「は、はい」

「よし! いま測ってみようよ。シキちゃんの脳波レベル気になる!」


 ツバサさんに(うなが)されるまま、僕は頭に機械仕掛けのヘルメットをかぶる。これが測定器らしい。

 ツバサさんが測定器を操作する。


「脳波測定開始――っと」


 測定は数秒で終わった。


「お。出た出た。えーと……うっわぁ……」

「ど、どうですか?」

「さすがですねシキさん」


 測定器を外し、測定器にある液晶画面を見る。


『脳波強度:882 脳波感度:890』


 と、液晶画面には映っていた。


「どちらも平均が100ですので、凄い数値ですね」


 どっちも平均値の約9倍ってこと!?

 本当に? 測定の仕方間違えてないですか??


「ちなみに私は脳波強度が1001、脳波感度が182でした」

「ツバサは脳波強度が500ちょっとで、脳波感度が960とかだったかな」


 シーナさんもツバサさんも僕と違って数値に偏りがある。

 僕は脳波強度も脳波感度もほぼ同じ。バランスが良い。


「合計値で言えば、私が見て来た中でシキさんが1番です」


 嬉しい。けど、


「シーナさんとの脳波強度の差は100ちょっと……なのにシーナさんのシールドピースの速さは僕の物より倍は速かった。たった100ちょっとでこれだけの差が出るものなんですか?」

「数値の差(プラス)技量の差です。脳波の数値は才能に依るため、大きく変動はしません。ですが、脳波操作の技量は当然研鑽を積めば高まります。技量が高まればシールドピースの速度も上がります」


 同じ肉体を持っていても、走り方で速度差が出るように。とシーナさんは言葉を紡ぐ。


「世の中には100程度の脳波強度で、私に迫る速度で脳波武装を扱える人もいますよ」

「数値が絶対じゃないってことだね」


 才能にさして差が無いのにもかかわらず、六花にはまるで対応できなかった。それだけ僕とシーナさんの間には技量差があったということだ。脳波操作において、僕はシーナさんの遥か後ろを歩いているということ。

 兵器の差で負けたと、少しでも思っていた自分が恥ずかしい。


「勝負を分けたのは、僕とシーナさんの技量差……やはり完敗ですね」


 まだまだ足りないものばかりだ。


「落ち込む必要は無いですよ」


 シーナさんが声を掛けてくれる。

 僕が俯いてるのを見て、僕が対戦で負けたことに落ち込んでいると思ったようだ。


「50もレベル差があったのですよ。しかもシキさんはゲームを始めてまだ1か月ぐらいじゃないですか」

「悔しいですけど、落ち込んでは無いです。まだまだ技術的に上があるというのが嬉しくて、喜びをかみしめていたんです」

「そう……ですか。これは失礼しました」

「えっと、こちらこそ紛らわしくてすみません」


 それにしてもシーナさんはやりにくかったな……ザ・才気煥発ってタイプより、ジックリ構えられる方が苦手だ僕。


(面白い……やっぱりシーナさんのチームを離れて良かった。シーナさんとの戦いは面白い……! 色々な発見がある。いつか、ランクマッチで戦うのが楽しみだ……!)


 思わず笑みが零れる。


「あんなボコられて、なんで笑っているわけ?」

「ふふっ。これがシキというプレイヤーの強さですよ」

「なにその『私だけはシキさんをわかってます』って顔。ムカつくから辞めて欲しいんだけど」


 僕はシーナさんに顔を向ける。


「もう1本! お願いします!」

「はいはい。いくらでも付き合いますよ」


 それから僕はシーナさんと特訓したり、戦艦の火器の試運転などをして過ごした。

 リアルでは夏休みの宿題を進め、ゲームでは決戦に備えトレーニング。


 日々はあっという間に過ぎていき、夏休みの宿題が全て片付いた頃……決戦の日は訪れた。


 8月31日――

【読者の皆様へ】

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 つまりアレですな?ガンダ○シリーズで例えるならシーナさんは『一基だけだけど火力のある、福岡νガンダ○のロングレンジフィンファン○ルを操る』が得意で、ツバサさんは『量産型キュ○レイ…
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