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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
JKボッチと神ゲー編

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12/202

第12話 ミー・イズ・ボッチ

 2047年7月29日(月曜日)。


 昨日、数々のアクシデントを乗り越えた僕に、また新たな脅威が迫ってきていた。


 そう――学校という脅威が目の前まで迫っている。


 セーブできないし、途中でログアウトできないし、理不尽なテスト(ボス)はいるし、強制的にパーティやギルドを組まされるし、ほんっと最悪のダンジョンだ。人と接することを強要し、青春を押し付け、掃除などの肉体労働をやらせる癖に一切報酬は無し。やってられないです。


 通学路、見慣れたコンビニの前を通る。あと3分ほど真っすぐ行けば高校だ。


 どんな高難易度クエストも通学に比べたら楽勝だ。学校より魔王城の方が安心できるよ。


 教室に入る。夏休み直前の浮ついた空気が僕を迎えた。


「明日から夏休みだ~!」

仮想世界(AR)で新しいテーマパーク出たらしいよ。夏休み入ったら行こうよ!」

「彼氏がさ、リアルじゃなくてバーチャルでファーストキスしてきたんだけどありえなくない!?」

「えー、別に良いと思うけどな」


 ああ……楽し気な会話が聞こえるなぁ。無論、僕に話かける人間はいない。ミー・イズ・ボッチ。

 早く来ると強い孤独感に襲われる。だけど万が一にでも遅刻して目立ちたくないから早く来てしまう陰キャ脳。


 明日から夏休み。本来は8月入ってから夏休みだけど、今年は明日から猛暑日になるようで早めの終業式を迎えることになった。


「おはよう皆の衆」


 桜井先生が入ってくる。全員が席に着く。


「さぁ終業式だ。シンプル(簡易)デバイスで集会場にログインしろ。URLを間違えるなよ」


 首に掛けたチョーカーをONにし、フルダイブする。

 シンプルデバイスはフルデバイスと違ってヘッドギアではなくチョーカーであり、近くにある『仮想(Another)世界(Real)』端末にしか接続できない。昔でいうローカル通信専用って感じかな。


 集会所と呼ばれる体育館を模した広場に学校用アバター……というか現実そのままの姿形で参加する。なぜわざわざ仮想世界にて集会を行うかと言うと、時間効率がいいからだ。基本的にAR(アル)(Another Realの略)では時間の流れが現実と違い、ARの1時間が現実では20分程度にしかならないのだ。


 授業は普通にリアルで行うが、これは法律で『学校におけるARの使用は現実時間で30分までとする』と決められているからだ。なんでもARを利用した学習は一定時間を超えると効率が著しく下がり、さらに精神に悪影響を与えるらしい。この法律が無い頃はARを利用し、1日で20時間も授業をする学校があったそうだ。そりゃ病みますよね。


 集会所で校長からありがたいご高説が並べられる。ARを利用した事件が多発しているから気を付けろ……という話を手を変え品を変えしているが、結局伝えたいことは同じなので非常につまらない。

 ちなみに校長先生はマイクを使わず話している。すでに齢60を超えるおばあさんだけどその声は全生徒の耳に届いている。このサイトに存在する全生徒に向けて通話機能をONにすることで小さな声でも全員に響くようにしている。


 仮想世界ゆえに眠気なんてないけど、欠伸がしたくなるぐらい怠い。早く銃触りたい。引き金を引きたい。とか思っていると、


「えー、それでは私の話はこれぐらいにして、次に生徒会長の月上(つきがみ)星架(せいか)さんより夏休みの注意点を述べて頂きます。月上さん、よろしくお願いします」

「はい」


 壇上に、白銀の長髪を持った女の子が上がる。

 あの人を見る度に思う。神様は不平等だ、と。


「1年生生徒会長だ……かっわいい」

「あれノーメイクだよね。やばない?」


 生徒会長は3年生がなるもの、という常識を軽々と破壊した怪物。前生徒会長が6月の段階で生徒会長の椅子を譲り渡したほどの人気者だ。


 容姿端麗、成績優秀、完璧超人。校内だけに留まらず校外にもファンが居る。家柄も高く、父親は大手ゲームメイカーの社長、母親は超有名なファッションデザイナーだったはず。


 なんでもできて、なんでも持ってて、人気もあって、可愛くて。僕とは大違い。


(それにしても生徒会長の声……)


 なんか、聞いたことあるような……。


「――それでは皆様、トラブルに気をつけつつ、夏休みを楽しんでください」


 生徒会長の話が終わる。それから生徒指導の先生の話をえて、終業式は終わった。



 ---



「はぁ」


 終業式が終わり、クラスも解散となったのだが、僕はまだ学校にいなくちゃいけない。


 1部活の部長として、仕事があるのだ。


 この学校は部活動に必ず入らないとならない。僕は『プラモデル部』に入ったのだが、入ってみると部員数は僕含めて4人。3年生2人、2年生1人。3年生は幽霊部員で2年生の1人は僕に部長を押し付けて幽霊部員になった。


 結果的には良かったと思っている。先輩達に思うところはあるけど、1人で部活ができるのは良いことだ。


 今日は生徒会に夏休みに行う活動予定を提出しないとならない。文化部に属する部活動は強制だ。


 活動予定はそこまで細かく書かなくていい。合宿とかするなら別だが、特別な活動をしない場合はおおまかな目標を書けばいい。僕は夏休みに作る予定のプラモデル一覧を書いただけ。


 午前中は他の文化部が生徒会に押し寄せているため午後に提出するつもりだ。


 僕は梓羽ちゃんお手製の弁当の入ったカバンを持ってそそくさと階段へ。上の階、上の階へと進む。

 屋上に繋がる扉の前、そこには机や椅子などの備品が並んでいる。屋上は解放されていないため入れないが、ここは別に封鎖されていない。僕はいつもここで孤独に食事をしている。


 備品の中には扇風機が3個ある。コンセントもあるため、このコンセントで扇風機3つを起動させて、涼みながらお弁当を食べる。なんでこんなところにコンセントがあるかはわからない。屋上にARを展開するための装置があるからかな。


「さすがに夏場真っ盛りだと暑いなぁ」


 でもトイレで食べるよりマシだ。暑いトイレは地獄。


「今日もお弁当おいし」


 梓羽ちゃん凝り性なんだよな~。ウィンナーはちゃんとタコさんだし、お米にはピンクのふりかけでハートマークが描いてあるし。


 カツン。


「え」


 足音がした。 

 下からこっちに近づいてくる。


(誰かが階段を上がってきてる!? どどどどうしよう!?)


 てんぱっている内に、階段の音は目の前まで来ていた。


「あなた、そこで何をしているの?」


 現れた人物は完全に予想外で、

 僕は思わず、目を擦った。


「月上……さん」

「うん。その通りだよ。()()()()さん」


 晴天の霹靂(へきれき)

 まさに雲1つない青空から雷が落ちてきたような気分だ。いや、雷じゃなくて、隕石ぐらいの衝撃がある。

屋上前にコンセントがあるのは清掃道具を使うためです。屋上にはARの機器があるため、常に清潔に保つ必要があり、毎回放課後に掃除してます。

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テンプレだと…月上さん=白い流星?さんってのが定番
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