第117話 2人の助っ人
クレナイさんから聞いた情報をまとめる。
・ウィング『実翼型』
消費EN:小 重量:大 改造:可
スラスター出力上昇値:中 スラスター容量上昇値:中
・ウィング『光翼型』
消費EN:大 重量:小 改造:不可
スラスター出力上昇値:大 スラスター容量上昇値:小
(実翼型の最大の利点は消費ENが少ないこと。それでいて改造の余地があり、色々とオプションをつけることができる。一方で光翼型は軽量且つ、実翼と違って実体の翼が無く、的が小さいため破壊される心配がない)
僕はEN容量が少なく、スラスター容量は多いため、シンプルに考えれば実翼型が合っている……。
「スナイパーは基本的にどちらを採用するんですかね?」
「基本は実翼だな。だけどお前のようにコンパクトに体を動かすタイプは、実翼はちと重いかもな。試着してみろよ」
「は、はい!」
まず2枚羽の実翼をスラスターに取り付けてみる。
(な、なるほど……国語辞典を2冊入れたリュックを背負っている感じだ)
これは……!
「スラスターを使っている時は重量は消えるし、翼を畳めば重心も動かせるけど……どうだ?」
「ん~? ん~!? ギリギリ、気になる重さです……」
「わかるわかる! 慣れりゃいいけどな、実翼はギリ支障をきたす重さだよな。じゃあ次、光翼」
光翼型をスラスターに連結。光翼型のデバイスは背中のスラスターを覆うように設置する。イメージとしては、スラスターが一回り大きくなったような感じだ。
(辞書が1冊、減った)
それでいて重心の位置もシンプル。
「……こっちがお好みみたいだな」
クレナイさんは僕の表情から僕の考えを読み取った。
「お前、今のEN容量はいくつだ?」
「216です……」
「あらら、光翼型を使ったらすぐに空になるな。EN瓶で回復できるとはいえ、ガチの戦いの最中に消費アイテムを使うのは難しい」
それに僕は銃がメイン武装。EN消費はただでさえ少なくない。ウィングを使うプレイヤーでアタッカーが多いのは、サーベルの消費ENが少ないからでもある。銃メインのロールで光翼を使うのはきついかな、やっぱり。
「これなんかどうだ?」
クレナイさんが指さしたのは『WH-2(ライトウィング)』。
デバイスカラーはブラック、ウィングカラーはバイオレット。性能は『スラスター容量1.5倍 スラスター出力2倍』……。
「アレ? 性能ちょっと低くないですか?」
「そうだな。基本、ウィングってのは実翼で容量2倍&出力2倍、光翼で容量1.5倍&出力2.5倍。でもこれは1.5倍&2倍。つまり」
「なにか特殊なオプションがある……ってことですか?」
「ああ。なんとこのウィングは――」
僕はゴクリと唾を飲み込む。
「消費ENが他より圧倒的に少ない」
「……それだけですか!?」
「それだけだよ」
「なんかこう、翼から弾丸が出せるとか、一定時間出力が爆発的に増すとか……そういうの期待したんですけど」
「クセのあるモン使うより、まずはベーシックなタイプに慣れとけ」
クレナイさんは僕の額に人差し指を当てる。
「ウィングは馬だ。ウィングを使うってことは騎兵になるってことさ。最初から黒雲や赤兎馬に乗ってたら掴めるものも掴めない」
「……な、なるほど?」
「今はオレが何言ってるかわからないと思うが、使ってみればわかるさ」
---
ウィングを装備して、ジョリー・ロジャー近くの砂漠に足を運ぶ。ウィングの試運転だ。
紫のエネルギーで構築された双翼が展開される。翼を展開してもウィングの重さは変わらない。
脳波でウィングの出力を調整し、飛行。
(は、速い……)
出力が倍になるだけでこうも違うのか。いや、数値以上の加速力を感じるぞ。多分、最高速に到達するまでの速さも違うんだ。
加えて5.4秒、息継ぎなしの飛行が可能。
(これは……世界が変わる!)
ただし使っている間はステルス性が消失。それに動きが直線的になりがちだ。可動域はスラスターだけの方が広い。
馬に例えた理由がわかる。小回りが難しい。
(思ったよりピーキー。扱いづらい。これは『慣れ』が必要だ。実戦でも何度か試さないと……)
ピリリリリッ!
「なんだろう。着信……?」
六仙さんからだ。
『ハローハロー。シキ君、決戦に向けて準備は万端かな~?』
「ば、万端です! ……多分」
『そりゃよかった。例の宇宙戦艦による奇襲作戦、現状の宇宙戦艦のクルーは君とチャチャ君とイヴ君、あとイヴ君のペットのソルニャー? だっけ。計3人と1匹だよね?』
「はい。そうです」
『ちょっと少ないよね~。2人助っ人を呼んだから、その子達も戦艦に乗せてあげてよ』
「えぇ!? あ、あの、お言葉ですが……」
せっかくの善意に対してこんなこと言いたくないけども……。
「下手に数増やしても足手まといになります……」
『足手まといかぁ。それ、助っ人の2人を見ても同じことが言えるかなぁ~?』
通信が切れる。すると、
(レーダーに反応2つ! プレイヤー!?)
気づいた時には大盾が3枚飛んできた。
「これは……!」
盾は高速で動き、僕を撥ねようとする。
僕はウィングを使い、飛んで盾を躱す。
(G-AGEで処理しよう)
僕がG-AGEを右手に構えると、ヒュン!! と電磁の弾丸が背後から僕の右腕ごとG-AGEを破壊した。
「レールガン……!?」
6枚の遠隔剣が飛んでくる。
(速い!?)
高速のアタックピースと強固な大盾の連携。さらにレールガンの援護射撃。
僕はスラスターを全開にして躱すも、スラスター切れを起こし、砂漠に無防備に着地してしまった。
(速度が付いていた分、着地の硬直が長い!!)
隙を衝かれ、2人のスペースガールに挟まれてしまった。
正面から盾の刃を首に添えられ、背後からはハンドガンの銃口を後頭部に押し付けられた。さらに6枚のアタックピース、六花が僕を包囲する。
「どうも~。足手まとい1号2号で~す」
「どうですかシキさん。これでも、居るだけ邪魔ですかね?」
さっき、六仙さんと通話していた自分をぶん殴りたい。
この2人が来てくれれば、怖い相手なんていない……!!
「お久しぶりです! ――シーナさん! ツバサさん!!」
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