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第108話 底知れず

 六仙さんは空に1発撃ち、すぐさま2丁の照準を月上さんに合わせた。僕もアサルトライフルで月上さんを狙う。


 僕と六仙さんは同時にレーザーを放つ。


 月上さんは連弾を全て回避するが、これは予想内。


「シキ君! 君はそのまま本体を狙え!」


 六仙さんは集中して月上さんを狙うのをやめ、弾をばら撒き始めた。月上さんの動きが六仙さんの弾によって抑制され、次第に僕の弾丸が月上さんを捉え始める。月上さんは仕方なくシールドピースで防御を固める。


「来るよ。後退しつつ火力を維持」

「りょ、了解!」


 月上さんは防御を固めながら突進してくる。


「左に飛んで!」


 僕は六仙さんの言う通り左に飛ぶ。六仙さんは逆に右に飛ぶ。

 左右に散った僕と六仙さん。月上さんは六仙さんを追う。


「よし、そのまま背後を狙って!」


 六仙さんが正面から月上さんに攻撃し、僕が背後から月上さんを狙う。


(上手い! 自然と挟み撃ちの形になった!)


 これはさすがの月上さんもどうしようもないはず。


「高出力モード」


 月上さんは右手のサーベルを高出力モードにし、サーベルを延長。

 伸びたサーベルを手もとで回しながら直進。六仙さんの弾丸を回転させたサーベルで弾いて接近していく。


(サーベルを盾代わりに!?)


 僕の射撃はシールドピースでガードされる。

 ダメだ。削り切れない……!


(いやでも、高出力モードが終わるまでに六仙さんとの距離は詰め切れないはず!)


――スン!!


 と、風を切る音が鳴った。

 月上さんは右手のサーベルを投げ、六仙さんの右手のハンドガンを貫き破壊した。


「ちっ!」

「終わりだよ」


 六仙さんは残った左手のハンドガンで応戦するも、月上さんは真っ向から回避しつつ接近。左手のサーベルで六仙さんの胴体を切断する。

 デリートされた六仙さんはすぐさまその場に復活するけど、もちろんもう戦いには参加しない。


(削り切った!!)


 月上さんが六仙さんを倒すと同時に、シールドピースを削り切れた。防御の手を失った月上さんの左腕を僕の射撃が削り切る。


 月上さんは右手にサーベルを持ち替え、今度は僕に突撃を仕掛ける。


「あ」


 そこでちょうど、アサルトライフルがエネルギー切れ。


(慣れない武器だからエネルギー残量見誤った!)


 しかも、もう1つの武装はサーベルをチョイスしているという二重ポカ!


(まぁいいか。月上さんの剣術を直に見るなら、サーベルが1番!)


 僕はサーベルを起動させ、飛んできた月上さんと斬り合う。


「……サーベルもそれなりに使えるんだね」

「はい。剣が出てくるゲームも経験はあるので!」


 ガンマニアとはいえ、一通りのゲームジャンルは経験している。


「あなたは狙撃の技術が飛び抜けているけど、体術・剣術・戦術……他の能力も並じゃない。隙らしい隙は無いね」


 人に見られると緊張するという欠点はありますけどね。特に、接近戦は視線を直に感じるから体がちょくちょく硬直する……! やっぱり、接近戦で達人レベルに一歩遅れるのはこれが原因だなぁ……!


「と思ったけど、隙あり」


 月上さんのサーベルに首を落とされる。


(また首……! 偽物も含めたらこれで3回目の首斬りだよ!)


 デリートされ、すぐに復活する。


「2対1で勝てなかったのは残念だけど、良い線まではいけたね。正直、君との差はもっとあると思っていたよ」


 挑発するように六仙さんは言う。


「もしも2人が本来のロールだったら、私が負けてただろうね。だけどそれは、あくまで通常の私が相手の場合。次が、本番」


 月上さんは1度俯き、そして間を置かず顔を上げる。


「「!?」」


 僕と六仙さんはその威圧感から、思わずスラスターを使ってまで距離を取った。


「私は右腕一本(このまま)でいい」


 なんだ、アレ。

 右眼に、『∞』のマークが浮かんでる……。


「これが――∞バースト。無限の力だ……」


 月上さんは合図を待たず、駆け出す。

 僕らは当然応戦するも、その場から動くことすら許されず、すれ違い様に僕も六仙さんも首を切断された。


(速い……はずはない。能力値は変わってないんだ。速度はさっきと変わらないはず! なのにまるで反応できなかった!!)


 無駄が無かった。1ミリの無駄すら無かった。

 弾の1発1発を、極限まで引きつけて回避していた。あと1ミリで掠るぐらいのギリギリで躱していた。体捌きも、これ以上無いほど洗練されていた。


 まるでRTA (リアルタイムアタック)――この条件で、僕と六仙さんを倒す最短ルートを月上さんは走ったのだ。


「お、驚いたな……これが君の全力か」

「いいえ。全力ではない」


 六仙さんは眉をひそめる。『マジで……?』と目は言っているが、口では言わない。

 六仙さん、やっぱり月上さんに対してだけはいつもの余裕が無い。ライバル意識みたいなのを感じる。


「私の特性は『スロースターター』。尻上がりに調子を上げていく能力。大体戦闘開始から10分ぐらいで私の調子は最高潮になる」


 まだ僕らは戦い初めて5分も経っていない。

 つまり、あと5分、彼女の調子は上がり続けるということ。


「もう5分、君と戦わないと君の全力は見れないということか」

「違う。『10分間調子が上がり続ける』というのは()()()の話。さっきも言ったけど、∞バースト発動中は基礎能力だけでなく、個人の特性も大きく強化される」

「は……?」

「まさか、∞バーストが発動している時は、もっと上限が上ってことですか……!?」


 そんな……怪物過ぎる。


「一体どれだけの時間調子が上がり続けるんだい? 20分? 30分?」


 月上さんは首を横に振る。


「上限は()()


 僕と六仙さんは、瞳から光を消した。

 上限がない。それはつまり――


「無限。戦い続ける限り、私は永遠に強くなり続ける」


 白い流星、月上星架。

 底が知れないと常々思っていたけど、そりゃそうだ。底も知れないはずだ。なぜなら彼女に底なんて無いのだから。


「きっついな……ならば君を倒すには短期決戦じゃないとダメってことか。神速で動く君を短い時間で倒すなんて、無茶にも程が――」

「ふふっ。――あ、いや、すみません」


 思わず、笑ってしまった。そんな僕を見て、六仙さんは目を細め、月上さんは僅かに頬を緩ませた。


(やっぱり月上さんは凄いや。理不尽に強い。だからこそ『良い』。まだまだ僕の力じゃ足元にも及ばない……だからこそ『楽しい』)


 このターゲットだけは、誰にも譲れない。


(必ずあなたは、僕が撃つ……)

本作、なんと……なんとなんと……カクヨム様の「あなたの”好き”が読みたい 百合小説コンテスト」にて「ファンタジー部門賞」を受賞しました!!!!

コンテスト受賞は人生初の経験で、めっっっちゃくちゃ嬉しいですっ!!! 頑張ってきて良かった……。


これまで応援してくれた読者の皆様のおかげです! 誠に、ありがとうございます!!!


今日の20時より、ファンタジア文庫『GLine放送局』にて本コンテストについて語るらしいです! 詳細知らないので本作の名前は一切出ない可能性大ですが、ぜひ見てみてください!


それではこれからも何卒、よろしくお願いいたします!!

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ツギクルバナー スピンオフ『シスター・イズ・バーサーカー』もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >(∞バースト発動中のみとはいえ)私の限界は……無限だ。 なにこの某宇宙の帝王さんの戦闘力発表&その後の私は後二回変身可能という申告並みに絶望を感じる台詞…!?最強の座は伊達じゃ…
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