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【書籍化決定】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
コロニー崩し編

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第101話 格闘の申し子

 今回の目的は1階の奥の祭壇。この迷宮(ピラミッド)は基本的に上に向かっていくんだけど、階段は無視し、奥へと進んでいく。


「ソルニャーは後ろの警戒をお願い」

「にゃっさ~」


 機世獣には何度も襲われたけど、問題なく討伐できている。ソルニャーのサポートが良い。

 ソルニャーはプレイヤーじゃないから、僕に緊張によるデバフが掛からない。単純に戦力の増強になっている。


 ソルニャーの装甲はかなり分厚く、大抵の攻撃は通らない。敵の攻撃から身を挺して守ってくれる。爪型レーザーサーベルと、どっから出したのかわからないバズーカで敵を倒してくれる。ガードナーとボマーの特性を併せ持つ重装兵だ。


 難点は速度。ピラミッド内の狭い通路だから爪の攻撃もバズーカも当たっているけど、もうちょっと開けた場所に行ったらきっと敵を追い切れない。バズーカで牽制ぐらいしかできないと思う。ちなみに懸命に腕を振って走る姿はとてもかわいい。


「ここが祭壇の間だね」


 開けた空間に出た。

 天井も高く、大きな松明がいくつもあるため明るさもある。

 祭壇は広間の奥、壁際にある。華美な装飾の成された祭壇で、壇の上には黄金の盃がある。


(ここに例の写真を……)


 黒歴史、もとい自身のコスプレ写真三種を盃に乗せる。

 スク水、メイド服、バニースーツ。3枚の写真にスキャンしたような緑のエフェクトが走る。すると祭壇が奥へとスライドし、地下へ繋がる階段が現れた。


「……本当に開いたよ」

「ちょっと狭いにゃ」


 僕が先に階段に足を掛け、ソルニャーが続く。ソルニャーは体を入り口に引っ掛けていたけど、マシュマロボディでなんとかすり抜けた。


 階段を降りると、正面にエレベーターがあった。エレベーターに乗り、ボタンを見る。


 ボタンは1~100まであるけど、100分の99はダミー。23階だけが実在し、別の階を押すと罠が発動してエレベーター内が爆発するそうだ(ラビちゃん談)。


 23階を押し、扉を閉めるとエレベーターは下降。目的地に到着し、扉が開く。


 煌びやかな廊下に出る。黄金の壁・天井・床。床には赤いカーペットが敷いてある。カーペットの先には3種の鍵のついたドアがあり、あのドアの先に宝物庫がある。鍵は全部ラビちゃんから入手済み。


(ラビちゃんらしいな。派手派手だ)


 しかし、この通路にも1つ仕掛けがある。それは、赤外線トラップ。


「赤外線センサーがあるから気を付けてねソルニャー」

「にゃっさ~」


 予め用意しておいた赤外線探知ゴーグルを装備する。


(うっ……これ、ソルニャーは通れないな)


 赤外線の数はかなり多く、細身の人間しか通れない程度の隙間しかない。

 赤外線に触れると天井が開き、無数のレーザー銃が天井から現れるらしい。その銃で真上から蜂の巣にされ、ゲームオーバーというわけだ。


 エレベーターから降りる。エレベーターから1mぐらいの範囲は赤外線センサーの無い安全エリアだ。そこで呼吸を整える。


「ソルニャーはここで待ってて」

「にゃっさ~」


 僕は赤外線センサーの森へ足を踏み入れる。


(う~! 頭の中に、これまで見て来たスパイ映画が蘇る! 1度やってみたかったんだよねぇコレ!)

「あぶにゃ」


 ドスン。と僕は柔らかい物体に背中を押された。片足で立っている時だから容易く転倒した。

 当然センサーには触れ、警報が鳴り響く。

 背後を見ると、ソルニャーがのほほんとした顔で頬を掻いていた。


「そるにゃ~、どうしてぇ……」

「閉まるエレベーターの扉に挟まれそうになったにゃ。ごめんにゃ」


 天井が開き、無数の銃が現れる。


「ソルニャーはそこに居て!」


 僕は2つの武装を展開する。


(G-AGE! 緋威!!)


 シルバーのハンドガンと赤いマントを出す。


「炎纏!!」


 マントに赤いエネルギーが迸る。


 始まる一斉射撃。


 炎纏モードの緋威でレーザー弾を弾き疾走。宝物庫への扉にある3か所の鍵をG-AGEで撃ち抜き、解錠。


「うおおおおおおおっっっ!!」


 シールドピースを犠牲にしながら弾幕を突破。マントにくるまり跳躍し、僕は宝物庫へ飛び込む。

 炎纏モードを終え、マントは消失。シールドピースも半分を失った。でもダメージは無し。


「あれ……?」


 だだっ広い、殺風景な空間。

 そこにはすでに、何もなかった。

 1人を置いて、何もなかった。




「時すでに遅し。ここはすでに宝物庫ではなく、貴殿と我の決闘場となった」




 学ランを着た黒髪ロングのスペースガールが鎮座していた。纏う風格は覇者のソレだ。

 両手にはなぜか、黒い稲妻が走っている。


「あ、あなたは……」


 いやまさか、そんなはずがない……。


「『Reckless(レックレス)Fighter(ファイター)』という格闘ゲームを知っているか?」

「知ってますよ。ARでやる格ゲーですよね……」


 世界的に人気のあるゲームだ。

 総プレイヤー人口はインフェニティ・スペースに匹敵する(男女合わせてだけど)。


 いまあのゲームの名を出すということは、やっぱりこの人は――


「我はそれの、世界チャンピオンだ」


 全身に電流が走る。

 体が一気に戦闘モードになる。


「世界チャンピオン……神堂(しんどう)カムイ選手……!!」

「左様。あちらに敵はいなくなったのでな。強者を求めてここへ来た」


 カムイ選手は立ち上がり、両手を開き、僕に殺意を向けてくる。


「退屈させてくれるなよ。バラシ屋……」

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