12-7. エピローグ
「さて、そろそろいきましょうか」
「ああ。だが――」
「『だが』も『けど』もないよ。君はいったい、何のためにここに来たのさ??」
「……慰安ではないのか??」
そういうと彼女は右手に握りこぶしをつくり右肩に決めてくる。……地味に響くな。
「違うでしょうが。もっと大切なものがあるでしょ」
「すまない。ど忘れか失念してしまっていた」
『まったく……』と怒りを露わにしては腕を組み、不平不満を垂れている。
表情をころころと変える仕草には不思議と引き込まれる。適わないな。
いまも歩道にはさきほど見送った学生たちとは違った集団が流れていて和気藹々とした声が聞こえてくる。桜花のアーチを潜って先向こうに流れていっている。
そんな学生たちを一瞥して彼女はいう。
「学生さんも学生さんで卒業式を迎えて新しい門出。
――君もこれから新しい道に向かって進むんでしょ」
そういって彼女は立ち上がり、俺に向かって手を差し伸べてくれる。
……なんのために戦っている!?
立ち上がるにあたって『枷』となるものはある。それが私自身にとってはこの言葉だったりする。
事件から数カ月経ったいまでも、自身の選択した答えが果たして正解だったかは分からない。もしかすれば、彼のいうとおりだったのかもしれない。むしろ、そうだったのだろう。いまや肯定したい思いは風前の灯で否定が多くを占めていっている。
だからといって、いまさら国に対しなにか出来る立場にも、力もない。
ただの『個人』となってしまった自分自身にいったい何が出来きる!?
仮にあのまま部隊に残り続けてもそれは同じだったことだろう。
……いい加減、決別する時が来たのかもしれない。
「……ああ。
行くか――。行くとしよう」
彼女の手をとり、自分自身に言い聞かせるようにそれを繰り返す。
進むべき道は未だにわからない。
暗中模索とはよくもいう。道さえも分からず、たとえ道を見つけようとも自分自身に出来ることなどたかだか知れていることだろう。
それでも――。
たたかい続けるほかない。
かの者から突きつけられた――あたかも私自身を試す言葉に抗い続けるには進み続けるしかない。
そしてなにより――俺は、ひとりではない。
彼女の手を取って立ち上がった瞬間にふんわりと花びらを纏った風が舞う。
それは、まるでこれからの先行きに背を押しては祝福してくれているかのようであった。




