12-1. エピローグ
月日は流れ、春の到来を知らされる。
季節の到来を告げる身を刺すような寒波は終わり、梅の香が鼻腔を擽っては、いまでは桜が開花、見事咲き誇っている。
線路沿いに設けられた堤防上の歩道には桜並木が続いている。地元の方曰く、この地に生まれ都で資産家として成功した人が地元貢献にと歩道に千本の桜を植えたそうな。彼の者は、この地に植木職人を同伴し訪れては直接植樹したらしいのだが、いまでは毎年のように満開を咲き誇る、短くも魅せてくれる光景を見ることなく去ってしまったという。もし彼に告げる機会あれば、感謝の言葉を告げたい。そう思えるほどに満たされ、綺麗だ。
咲き誇る光景のそばには一級河川が流れ、陽の光を受けて柔らかく光を発し、雑多な生活圏から切り離してくれる流水音はじつに心地よい。そんな歩道を歩く正面には、花々の間から見え隠れする百名山と名高い山々が織りなしていて、残雪ある光景は神秘的に見て取れる。
そんな贅沢と思える光景のなか、歩道から一段下がったベンチに腰掛けた。
自身のこれまでの迷い、後悔というべきか後ろめたくも感じる思いさえも消し去ってくれて、純粋に心の底から清々しく思える。手のひらに落ちる桜花はじつに愛らしい。
……あれから数か月。
事を引き起こした者たちは捕縛、検挙され大々的に報道されるようになった。
報道に映し出される人物。
それはかつて俺と向き合っていた者とは『異なった』者であった。
余程、政府含め今回の事件に関わった者たちは真相が明るみに晒されるのは具合が悪いと見受けられる。
米国が手引きしていた事実が世界に漏れることのないよう両国で内密に取引してのことか。……いや、そんな対等な交渉ではないな。むしろ押し込まれたと判断するのが自然か。親米派議員通じての圧力に相手の物言いをそのままに受け入れるしかなかったところだろう。
もしくは、そもそもがその真相さえも知り得ずにいるのかもしれない。
部分的情報しか持たない俺自身にとっては、数か月経ったいまでもその経緯を確かめることも出来ない。
聞こえてくる知らせでは、捕縛された者に対しては近日中に裁判にかけられるらしく執行猶予に付されるのが濃厚とのこと。茶番でしかないな。
そして、俺は部隊を除隊した。




