11-11. 対面
「人生一生を価値づける瞬間は最後の締め括りにある。
……けじめをつける必要もある。
そして、演目はすでに終盤。最後の閉幕は互いに認め合った者通し、天に召されよう」
「往生際の悪い奴だ。生憎、俺は死ぬつもりはない」
「──ふっ、それでいい。
私は、いまに抗いたたかう姿勢こそが人の、本来のあるべき姿だと思っている。本人に、良心に逆らうことのない確固たる信念があり、それを曲げず、差し迫る苦痛・困難に直面しても、たとえ恥を晒す局面に置かれてもなお、それを通し抜く姿勢に人は感動を覚えるものだと考えている」
聞き覚えのある一言に内心驚く!?
奴の行動理念なのだとは思うが、同じことを誰かが言っていたような気がする。誰が言っていたか、いまは思い出すことも出来ない。哲学者、思想家、歴史に名を連ねた者たち……。いや、もっと身近に感じれた人からであったように思える。
だが、いまはそれに耽っている時間はない!!
過った瞬間の気の迷いを振り払い、現実に向き合う。
「……哲学か。テロリストに成り下がったお前の言葉は、どれだけ美談らしく飾り立てようと結局は誰も気に留めることなく響くこともないだろう。その言葉は『正道』から語られるべき言葉だ」
「ふっ、そうだな。君のいうとおりだ」
──ドンッ。
間延びない、短くも鋭く辺りに木霊する一撃。
心臓を鷲掴み、すべての時が止まったかのように錯覚させた一音は、心拍数を最高潮にまで至らせた。
……はぁ、はぁ。
相手の拳銃から発せられた音に身が固まり、引き金を引くことが出来なかった!?
……相手の微かな動きを見逃していたわけではない。引き金を引こうとしたところで躊躇いが生じたのだ。なぜだっ!?
だが、幸いにも事なきを得た。
それは、相手の銃口からは火を噴いておらず、ただ手元から床に落とされただけだったからだ。
武装解除した奴からは不思議にも満ち足りた雰囲気を感じ取れた。
「なんのつもりだ。なぜ武装解除する??」
「名残惜しいが、幕切れだ。
こうして、向き合って語り合えた時間は心地よくも感じれた」
「……狂ってやがる。お前自身には敵意しか感じない」
「それでいい──。もし立場が異なっていれば、『友人』になれたかもな」
「御免被る」
張りつめていた空間には絶対的光量が足りていないせいか、相手の表情を読み取ることは出来ない。
ただ、そうありながらも彼の者から放たれる──、これまでは絶対的自信に満ち溢れていた言葉・雰囲気に対し最後に零れた言葉からは、不思議と揺らいでいて悲壮感漂うように思えた。
こうして、国史に刻まれるほどに震撼させた長い一日は終えたのだった。




