11-6. 対面
コツ、コツと踵を鳴らす音が室内に響き、沈黙があたりを支配する。
「米国が主導的立場に立って、この騒動を引き起こしたのは分かった。
この騒動には米軍も関係しているのか??」
「騒動とは。穏やかではないな」
「実際、世界に波及した事実を鑑みれば、適当な表現だ。どうなんだ??」
「国が動く以上、なにより軍の最高司令官が動く以上は当然軍も動く。当然のこと」
「……作戦室からの報告では参加していると聞いていた。
だが、蓋を開けてみれば米軍が関与した痕跡は一切見られず、俺ひとりの単独演習だった。
なぜ、彼らは参加しなかった?? 貴様のいうイメージ戦略を踏まえれば、それこそ名分もたつ。なぜだ??」
「簡単な話しだ。彼らが参加出来なかったのは大統領命令による──」
「ん?? それはなぜだ?? 大統領も自身の選挙を鑑みれば、米軍の動員はするだろう。先のイメージ戦略からしても有効であることは違いない。
米軍からしてみても、リアルに近い大規模な演習は軍事データの蓄積という観点からみても参加するはず!? なにより米国が発案に関わっていれば、なおさらだ」
「さきも言ったように大統領命令による──。
そしていまは大統領選を控えている時期でもある。『演習』のなかで兵士である『自国民』を失えば、それこそ支持率低下に繋がってしまう」
「なにを言っている。『演習』は『演習』だろう。
……まさか
」
「──『演習』と思えたはずのものが、誰かが『脚本』に手を加えたかな」
……チャキ。
相手から鈍い金属音が聞こえる。
注視していた相手はいつの間にか、こちらに向き直り、手先をこちらに向けていた。
……こいつ!?
背筋に冷や汗が流れる。
敵意を感じないと慢心していた自分自身に再度『喝』を入れ直し緊張させる。
ガラス越しからはいつの間にか再び月明かりが差し込み、二人を包み込んでいた。空には明かりを遮る一切のものはなく、心なしかガラス越しに映った満月は不思議にも普段より大きく見えた。
「それが、お前だというのか!? お前はいったい、なにものだ!? 」
「難しい質問だな。それへの返答には立ち位置からしていくつもある。
ただひとつ言えることは、君たちの敵であることには違いない。
一方で君の部隊にも正式なメンバーとして参加している。いや、『参加していた』というのが正しい表現か」
「作戦室と連絡が繋がらない理由は、そのためか!?」
「彼らに、これまでの内容を知られるのは具合が悪い。
それ以前に彼らもまた、こちらをモニターしている状況にはないようだ」
「なぜ、そのリスクを背負ってまで、俺に事の全容を話す!? 」
「さきに話したとおり、君はこの舞台の『功労者』だからだ。賛辞だけで留めておくのはじつに忍びなく感じた」
「俺からの情報漏洩は考えないのか!?」
「断じて、それはないな」
「なぜ、そうもはっきりと断言できる!?」
「それは君自身が一番分かっているだろう。
第三者的裏付けの取れない根拠の乏しい話し、可能性には誰も耳を傾けない──。
そしてそれ以上に、君の声は届かない」
「……まさか口封じか」
「なにも私だけが潜伏しているわけではない」
舌打ちしたくなるほど、先手を取られている事態にイラつきを覚える。
まさか、こうも組織の存在はおろか情報漏洩が続くとは。
何よりイラつきを感じさせるのは、相手にとって脅威とさえ受け取られていない自分自身の不甲斐なさだった。




