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1. はじまり

「こちら〇〇県にあります原子力発電所前の状況になります。

 施設を占拠したとされるテロリストグループが犯行声明を出してから、約三時間経過しています。

 ご覧頂いている通り、辺りは警察・自衛隊が押し寄せ、依然と緊迫した状態が続いています。

 仕掛けたとされる爆弾ですが、施設の○○に仕掛けられているとされ──」

「こちらは原子力発電所から〇〇キロメートル離れた避難所になります。

 市により避難所の開設がなされ、高齢者を中心に避難が進んでいる状況ですが──」

「こちらは高速道路の状況です。

 近傍のインターチェンジ付近は既に混雑のため身動きが取れない状況が続いています。

 上空からご覧頂いている通り、高速道路の上り及び下り方面で約〇〇キロメートルにわたって渋滞しています──」


 テレビを見やれば、どの局も当初予定していた番組を取りやめ、急遽テロに関わるニュースに切り替えている。

 テレビ局からしてみれば、一年の締めくくりに、何カ月も前から時間と労力、そして莫大な費用を投じて臨んだ生番組が、いま起こっている事件によって流されてしまって多大な損失を被ったことだろう。しかし、そんな背景がある中でも、彼らは画面向こうにいる者たちには決して悟られないよう振舞っている。微塵も感じさせない振舞は、彼らがプロだからという誇りに加え、彼ら以上に追い込まれてしまった被災者への使命意識が大きく表れての動きなのかもしれない。


 いまも、端末からは現地からのリアルタイムの映像が流れる。


 カメラに映る焦燥感、嘆きに、悲しみ──。

 被災した彼らには、日常からの、予告もなく強制的に執行された切り離しに反発さえも出来ずあえいでいるように見えた。

 一方で彼らの声、表情、仕草等一挙手一投足の根底には、事を引き起こした者への、猛々しく燃え上がる憤りがあるよう彷彿ほうふつさせた。


「……今回のテロで地域住民の方含め、国内に住む者全員が不安に駆り立てられている。

 一刻も早くテロ集団を捕らえて頂きたい──」


 ニュース解説者は、ただただ起こった出来事に対し早急に鎮静化してほしいと願うかのよう言葉を絞る。

 言葉に裏づく声の調子からは、彼らが不憫に思えてならない──、そして被災している者たちの様子を通して、事を引き起こした当事者たちに良心的な痛みはないのかと訴え掛けているようであった。

 どの番組を見回しても、テロリスト集団に対しての特集が組まれ、非難の声が続いている。

 彼らの言い分は正しく、実にそうあるべきだ。

 自然災厄とは異なり、明確に人為的に為されたことがはっきりしている以上、非難されて然るべきである。


 一方で、気になる点がある──。


 どの局においても、不思議と共通して『あること』には触れようとしない!?


 強調すべき点があることに理解はするが、些か作為的な感覚に囚われてしまうのは私個人の錯覚なのだろうか。

 一部だけでの報道であれば、そうと納得する。

 しかし、全局においてもそうなのだから、そう勘ぐってしまう。

 

「……」

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