【泣き喚くなら】欲しがり妹とその姉の決意【こちらも喚く】
だいすきな欲しがり妹ものにチャレンジしました!(´∀`*)妙な着地をしました。よろしくお願いします〜!!
「ずるいですわずるいですわお姉様ばかりずるいですわ!!」
「まあかわいそうに。ルシアンナ、姉なのだからかわいい妹のココリスに譲るわよね?」
「当然だな。代わりのものは買ってやるから」
いつもの展開に伯爵令嬢ルシアンナは遠い目をした。
姉妹それぞれ買い与えられたドレス。妹は姉の物を奪おうとする。妹のみを溺愛する両親はそれを後押しし、代わりのものは買い与えられない。いつものことだ。
どうして…なぜですの…?
なぜ私ばかり奪われて…愛されず…
泣き出したかったが、令嬢としての厳しい教育が邪魔をする。
いつか目を向けてくれたら、褒めてくれたらと頑張ったがそれは叶わず、甘やかされたココリスはまともな令嬢教育もされていない。
こんな、泣き喚くなんて恥ずかしいこと…この子は淑女として、これからやっていけるの…?
そう思って、はたと気づいた。
現状やってけてないのは私では?
教えられた通りにマナーを守り控えめに過ごしたところでただ奪われるだけ。泣き喚く妹の勝ち。
ならば、見習うべきでは?
覚醒したルシアンナはぐばっと涙を流して叫んだ。
「ずるいですわずるいですわココリスばかり愛されて贔屓されてずるいですわーー!!!」
「「「!!!???」」」
「どうしてですのどうしてココリスばかりひいきされますの私の物は全て奪われますのーーー!!!」
「なっ…!!なにをわがままな!あなたは姉なのですから…」
「なぜ姉なら我慢しなければいけませんのーー!!お母様は新しいドレスも宝石も沢山持ってますわーー!!!なぜお母様はココリスに譲りませんのーー!!ココリスはどうしてお母様から奪いませんのーーー!!!」
「それは!サイズも違うし私には夫人としての務めがあるのですから……」
「ココリスと私だってサイズ違いますわーーー!!!そして私古びた寸足らずのドレスばかり着せられて令嬢としてみっともないとそしられてますわーーー!!」
「なっ…!!」
「ほらココリス!!お母様のドレスの方がよっぽど上等よ!!そのまま着れなくたってフリルやビーズはつかえるわ!宝石だってつけられる!!あなた私のことはうらやましくて泣き喚くのにお母様のことはうらやましくないの!?どうしてなのおかしいじゃないどうしてなのおかしいじゃないどうしてなのおかしいじゃないどうしてなのおかしいじゃない!!!!!」
「えっ、そ、それはだって……」
ココリスはびっくりしていた。
こんな姉の姿は初めて見る。
だが言われてみればそうで、確かに母のドレスや宝石は姉のものよりはるかに上等だ。
どうして姉のものばかり羨ましいのだろう?と考え、考えることが嫌いなココリスは爆発した。
「お姉様がーーーー!!!お姉様がいじめるーーーー!!!!お姉様がーーーーーーー!!!!!」
びええええええええええと泣き喚く。
ココリスにとってわからない事を言う姉はいじめているに等しかった。
「まあっ…!!ルシアンナ!!かわいそうだと思わないの!!!妹をいじめるなんてっ……!!」
「お姉様がいじめるーーー!お姉様がいじめるーー!!」
「ルシアンナ!いいかげんにしなさ…!!」
「お母様がいじめるーーー!!!お母様がいじめるーーー!!!!」
「「「!!!???」」」
「私は何もしてないのにーーーーー!!!!お母様がいじめるーーーーーー!!!お母様ばかりきれいなドレスを着て私を虐待するーーーーー!!!!私を憎悪しているーーーーーー!!!!自分が優秀な姉と比べて小馬鹿にされていたから見当違いの復讐で私を虐待しているーーーーーーー!!!!!!お母様に殺されるーーーーーーーーーー!!!!!」
「なっ……!!!」
「お父様は面倒でお母様の言いなりになっているーーーー!!!!虐待幇助をしているーーーーーー!!!!むしろ家長なのだから全責任があるーーーーーー!!!!私殺害の主犯はお父様ーーーーーーー!!!!!」
「ななっ…!!!」
「ココリスは私のものばかり奪い蔑み貶めているーーーーーーー!!!!甘やかされて図にのっているーーーー!!!!人間性がクズーーーーーー!!!!弱いものいじめのクズーーーーーー!!!!」
「よ、弱いものいじめなんかしてないもんーーー!!!」
姉がいじめると泣き叫んでいたココリスは、反論できることを言われていきごんだ。
「お姉様のほうが年上だから偉くて強いの!!だから私は弱いものいじめじゃない!!!お姉様が弱いものいじめをしてる!!!」
ルシアンナはココリスの頭をつかみガッと額を突き合わせた。
「いっつ…!!」
「いいえ違うわ。あなたは弱くなんかないあなたはわたしより強いわたしよりお母様に愛されているからわたしより強いだからわたしからものを奪うわたしのものなど欲しくないくせにわたしから奪うわたしをいじめるためだけにわたしをいじめるためだけにわたしがよわいからわたしをいじめているいじめてよろこんでいるたのしんでいるおまえはくずおまえはくずおまえはくずおまえはくず」
「びっ……!!!」
「わたしがよわいからおまえはいじめるわたしがよわいからものをうばうおかあさまはつよいからうばわないわたしがよわいからうばうおまえはくずおまえはくずおまえはくず」
「びいっ……!!」
「ルシアンナ!!いい加減に……!!」
ココリスは限界だった。真っ暗な目で瞬きひとつせず至近距離で見つめられぶつぶつ言われて脆弱な精神は耐えきれなかった。
そして叫んだ。
「お母様がずるいーーーーーー!!!!」
「「!!??」」
ココリスは姉の言葉に反発した。弱いものいじめのクズと言われ耐えられなかった。
(わたしくずじゃない!!よわいものいじめじゃない!!)
(だからおかあさまのもうばう!!!!)
「お母様がずるいーーーーー!!!お母様ばかりずるいーーーーーー!!!お母様ばかり宝石をもっていてずるいーーーーー!!!高級なレースがついててずるいーーーーーーー!!!!お母様がずるいーーーーーーーー!!!!!!!」
「なっなにを……!!」
「お母様がずるいーーーー!!お母様がずるいーーーー!!!」
ドレスにしがみつき泣き喚くココリス。
引き離そうとするも叶わず、姉はとみれば
「姉だから譲れと言うなら母ならもっと譲るべきなのでは?」
無表情に言われカッとなった。
バチーーーーーン!!!
母の手が激しく振り下ろされルシアンナは倒れた。
倒れたまま開き切った目でぶつぶつぶつ
「母なら譲るべき姉なら譲るべきというなら母ならもっと譲るべきそうしないのは妹のためではないからココリスのためでないから姉をいじめたいから自分の敵わなかった姉をいじめたいからそのために二人産んだのだいじめるために産んだのだ私をいじめる為にうんだのだでなければゆずるはずだココリスにゆずるはずだでなければ」
「そうよーーーーーーーっっっ!!!!」
母はキレた。
「そうよーーーーーっっっ!!!!!姉が嫌いよーーーーーっっっっ!!!!!完璧と言われて褒められまくっていい気になってるあの女が嫌いよーーーーーーっっっ!!!!!姉そっくりのあんたが嫌いよーーーーーーー!!!!あんたなんか地べたをはいずりまわっていればいいのよーーーーーーーーー!!!!!!姉はすべてを妹にゆずるべきなのよーーーーーーー!!!!!!!」
「ならばよいでしょう」
ルシアンナは立ち上がりばっとドレスをぬいだ。
「妹だから譲るのではありません。あなたが私を虐待しそれを強要している。あなたが姉に嫉妬し無関係な私を虐待するクズだから。ココリスのためと言いながら自分は何も譲らないのだからあなたは私を虐待しているだけだからあなたはクズなのだからお認めになったのなら結構です」
ドレスをココリスへなげつける。
「ほらココリス。どうぞ。母の虐待の手伝いをするよき妹よ。鬼の子よ。すべてを奪うがいい」
ココリスは投げつけられたドレスをだきしめ、へにゃりと笑った。
空気の父親はこれが地獄かと思っていた。
それからどうなったかといえば、祖父母がかけつけてきて親族会議となった。これはやばいとなった家令が呼んだのだ。できた家令である。
そしてルシアンナは祖父母の家で暮らすこととなった。いくらなんでも母親と一緒にしておけない。
父親はもっとしっかりしろと叱責され、反省しつつも無理だと思っていた。無理。こわい。
なので自らすすんで、定期的に観察にきてくれるよう頼んだ。無理だから。
母親も叱責されたが、同時に祖父母に謝罪もされた。そんなつもりではなかった、平等に愛した、姉と差はなかったと諭された。母は鼻で笑った。
妹は厳しい家庭教師をつけられることになった。このままではやばい。優しい虐待だったのだ。
そして長い月日がたった。
ルシアンナはココリスと二人、豪奢な庭で茶を飲んでいた。
「お久しぶりねお姉様」
「ええそうね、元気にしていた?」
「もちろんよ。お仕事は順調?」
ルシアンナは弁護士になっていた。
かつて学んだ、黙っていては誰も助けてはくれないという思いから、戦う言葉をもたない弱者を助け、とにかく弁舌で押し倒せという学びから、窮地に陥った悪人を助けている。
どちらにしても、依頼を受ける際には嘘を許さない。
悪人なれば特に綺麗事で依頼をしようとするが、えぐりこむようになぜ?それはなぜ?と自己を見つめさせ続ける為、実際依頼になる物は少ない。
それでも己の欲と醜さを認めてそれでも他人を踏みつけいい目を見続けたいというのなら、ならばよしとなにがなんでも勝たせてみせる。
「思えばあの頃、あなたに色々な物を奪われたわ。とても悔しかった。でもそれは、物を奪われたのが嫌だったのではないの。いやまあ嫌は嫌だけど。
妹だから譲らなければ優しくないと、欺瞞で責められるのが嫌だったのよ」
「お姉様は真実の人ね」
「あなたもね」
ココリスはふっと笑った。
「私、あの頃お姉様が羨ましくて仕方がなかった。お姉様のものが欲しくて仕方がなかった。でもそれは、あなたより優遇されていると実感したかったからなのね。認めるわ。私が欲しかったのは、物ではなく、優位な立場よ」
「そうね」
「そして間違っていたわ。お姉様は虐げられていた。私が奪うべきものをあなたは持っていなかった。ただの嫌がらせになっていたわ。ごめんなさい」
「いいのよ。あなたは理解したわ。それならいいの」
「私もう、お姉様がうらやましくなんてないわ」
「でしょうね」
「王妃様、そろそろーーー……」
「今行くわ」
二人は挨拶をし、それぞれに庭を去った。
ココリスは王妃となった。
あの時弱いものいじめをしていると言われ、違うそうではないと反発し、それが魂にすりこまれた。
それからは強いものから奪うことにした。
強いものから奪うには泣き喚くだけではだめだとも学んだ。つけられた家庭教師からよく勉強し、己の欲望を叶えるべく努力をかさね、ばれない悪事を学び、ついに王妃の座を手に入れた。かつての欺瞞を真実にしたのだ。
しかしココリスは常に欲しがり続けている。
欲望は無限大だ。
ルシアンナは今日、別れの挨拶に来た。遠くの国へ移住することにしたのだ。
ルシアンナは確信している。
ココリスは隣国を手に入れようとする。
この国を手に入れたなら、次は他の国だ。
それが政略的なものなのか軍事的なものなのかはわからないが、一国を手に入れたとて次へ、また次へと止まらないのはわかっている。
いずれきっと、ろくなことにならない。
だから遠くの国へ逃げるのだ。
そして、いつか彼女が酷い目にあい、しかし命があったなら、鍛えた弁舌で助けてやろうと思っている。
相変わらずクソムカつく妹だが、きっと嘘はつかないだろうから。
完!!
お読み頂きありがとうございます!!(´∀`*)
両親は虚無感をかかえつつひっそり暮らしました。トホホ!