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5章 6 ゲーム通りの世界へ……

――20時45分


私は、待ち合わせ場所のガゼボに行くために女子寮を出た。


ホーウ

ホーウ


夜空に、どこからともなくフクロウの鳴き声が聞こえている。

ガス灯に照らされた敷地内を歩いているのは私だけだった。


「それにしても、まさかセシル達からも同じ場所を指定されるとは思わなかったわ」


つい独り言が漏れてしまう。

ガゼボを目指して歩いていると、ふいに何故か前世でプレイした『ニルヴァーナ』のストーリーを思い出してしまった。


ヒロインのクラリスは度々親密度が上がったヒーローと夜のガゼボでデートをし、恋人同士の時間を楽しんでいたことを。

そして今現在……信じられないことに、私がヒロインのクラリスになってしまった。

けれど今の私は、あの4人のヒーロー達の誰とも恋愛をするような関係にはなっていないし、ましてデートで呼ばれているわけでもない。

どちらかというと、呼び出しを受けているという表現をするべきだろう。


「今夜も満月が綺麗ね……」


そういえばゲーム内でクラリスがリオンに捕まって監禁された時も、美しい満月の夜だったっけ……。


その時。


ザッ!


背後で何か音が聞こえた。


「え?」


振り向こうとしたその矢先、突然背後から羽交い締めにされて口元を布で押さえつけられた。


「んっ! んんっ!!」


何!? 一体何が起こったの!?


必死で暴れるも、力が強すぎて敵わない。それどころか徐々に意識が朦朧としてくる。


「……ごめん……」


私の耳元で聞き覚えのある声が聞こえ……私の意識はそこで途絶えた――




****



 酷く頭が痛い。

ズキズキと断続的に続く頭痛で頭が割れそうだ。


「う……」


自分のうめき声で、徐々に意識が戻ってきた。ぼんやり薄目を開けると、天蓋付きのベッドに寝かされていることに気付いた。


月明かりで青白く照らされた部屋は、とても広かった。


「こ、ここ……は……? うっ!」


ベッドから身体を起こした途端、ズキッと激しい頭痛で呻いてしまった。


「一体何があったの……?」


頭を押さえながら、辺りを見渡す。


「確か私はセシル達にガゼボに呼び出されて……それで……」


そうだ。その時背後に人の気配を感じて振り向こうとした時に何者かに……。


「私……攫われたんだ……」


自分の言葉にゾッとする。ベッドに寝かされていたということは、酷い扱いを受けずにすみそうだけれども……。


「まさか……私を誘拐したのって……」


そこまで口にしたとき。


カチャ……


静かに扉が開く音が聞こえ、振り向くと扉の前に誰かが立っている姿が見えた。


まさか……。


「……あれ? もしかして……君、目が覚めたのかい?」


その人物は私の方に近づいてきた。


「そ、そんな……」


嘘だと思いたい。

だって、この世界の私は誰とも恋愛関係になっていない。それに彼とだって、殆ど関わっていない。


それなのに……何故、彼がここにいるの?


やがて、その人物は私の前にやってくると足を止めた。

月明かりの下で、その姿がはっきりと見える。


「良かった。中々目が覚めなくて、心配になって何度も様子を見に来たんだよ」


笑顔で私に話しかけてくる。


「リ……オン……」


笑顔の彼は、ヒロインが監禁されたときに登場するリオンその者の姿だった――

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