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5章 5 仕方の無いこと

 私とエイダが学生食堂に行くと、既に4人全員が揃っていた。


「2人とも、待っていたよ」


一番フレンドリーなアンディが真っ先に声をかけてきた。


「席を取っておいてくれて、ありがとう」


私がお礼を言うと、アンディがニコリと笑顔を向ける。


「2人は何がいい?」


セシルがメニュー表を差し出してきたので私とエイダは無難なところで、レディースセットを注文した――



****


「それで、初めての魔術の授業はどうだったんだ?」


食事が始まると、真っ先にフレッドが尋ねてきた。


「それが聞いてちょうだいよ。驚くことにロザリンが一緒のクラスだったのよ。しかもリオンまで!」


エイダが興奮気味に語る。


「何だって!? それは本当の話か!?」


ザカリーが驚きの声を上げる。


「こんなこと、冗談で言えるはずないわよ。ね、クラリス」


「え、ええ。そうなの……まさか女子学生のクラスに男子学生が来るとは思わなかったわ……」


皆の手前、あえてリオンの名前は口にしなかった。


「驚いたな……確かにロザリンとリオンは常に同じクラスに在籍していたが……まさか男女別の授業まで一緒に出ているとは……」


アンディが眉をひそめる。


「それじゃまるで、リオンはロザリンの保護者みたいじゃないか」


「いや、保護者というよりはロザリンに管理されているようなものだ。2人はまるで主従関係に近いと思う」


セシルの言葉にアンディは首を振る。


主従関係……。

6年前の火事で、リオンとロザリンの関係は大きく変わってしまったのだ。リオンは完全にロザリンに支配されてしまっている。


「……可愛そうだわ」


思わず、本音が口をついて出てしまった。


「え? クラリス……?」


エイダが怪訝そうに首を傾げる。視線を感じて顔を上げると、じっと私を見つめるセシルとフレッドの姿があった。


「ほ、ほら。私もロザリンに怒鳴られたでしょう? あの勢いで毎日ロザリンから怒られるのは辛いだろうなって思ったのよ」


セシルとフレッドの前でリオンに感情移入するわけにはいかず、慌てて取り繕った。


「そうだな。でもリオンが一緒にいるなら、今後ロザリンがクラリスに何か文句を言ってこようとしても止めてくれるんじゃないか?」


「うん、僕もそう思うよ。大体、あの授業は月に2回しかないからね。ところで話は変わるけど……」


ザカリーに続いてアンディが話題を変えてくれて、この話は終わりになった。


食事をしながら、6人での楽しい会話が続いている。

けれど、セシルとフレッドが時折じっと私を見つめてくることに居心地の悪さを感じずにはいられなかった。


……きっと、この様子では後で2人から呼び出しをされてしまうかもしれない。

憂鬱な気持ちを抱えながら、私は食事を続けるのだった。



――昼食後


皆で食べ終わったトレーをカウンターに運んでいると、背後からセシルが小さく声をかけてきた。


「クラリス、今夜話がある。21時に中庭のガゼボで待っているから」


振り向くと、セシルの隣にはフレッドの姿もある。彼は無言で私を見下ろしている。

やはり先程の件で、2人から釘を刺されるのだろう。でも私の監視が彼らの役目なのだから仕方無いことだろう。


「……分かったわ、今夜9時ね」


「うん、待ってるよ」


セシルは笑顔で頷いた。



けれど……この日、結局私は約束を守ることが出来なかった――



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