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4章15 学園の役割

「……気に入らないな」


3人で教員室へ向って歩いているとフレッドがボソリと言った。


「何が気に入らないんだ?」


セシルがフレッドに尋ねる。


「決まっているだろう? あのザカリーとかいう男だ。何だって、あいつは何かというと絡んでくるんだ? アンディならまだしも」


明らかに私に向けられている言葉ではあったが、その問いに答えることは出来なかった。

ザカリーが私の正体を知っていることは絶対にバレるわけにはいかない。


「アンディの親友だから、クラリスのことが気になるんじゃないか? そう思わないかい?」


「そ、そうね。そうかもしれないわ。」


いきなりセシルに話を振られてドキリとしたが、余計な話をするのはやめた。

秘密をバラした罪で、魔術師協会から監禁されるのだけはイヤだった。

6年間も眠り続け、目覚めれば監視下に置かれている。

これ以上自由を奪われたくはない。


「それより、どうして先生のところに行こうとしているんだい? 差し支えなければ話してもらえないかな」


セシルが話題を変えてきた。


「ロザリンとリオンの履修科目を教えてもらえないかと思って……私、あの2人と同じ授業には出たくなくて」


「頼めば教えてくれるんじゃないか?」


フレッドが返事をした。


「そうよね……、きっと教えてくれるわよね?」


私は自分自身に言い聞かせた――



****


 

 私達は魔術課の教員室へやってきた。


「いきなり訪ねて大丈夫だったかしら……」


扉の前にいざ来ると、躊躇してしまう。何しろ、私はこれから頼みにくい話をするからだ。


「何してるんだよ」


私が躊躇っていたからだろう。フレッドが前に出てくると扉をノックした。


――コンコン


『はい』


すぐに返事があり、扉が開かれると偶然にも兄が現れて怪訝そうに首を傾げた。


「クラリス……それに君たち。一体どうしたんだ?」


「クラリスが先生に話があるそうですよ」


セシルが私の代わりに返事をした。


「大事な話なのかい?」


「はい、大事な話です」


その言葉に頷くと、兄は少し考える素振りを見せて部屋から出てきた。


「なら場所を移そう」


兄がニコリと笑った――



連れてこられたのは面談室だった。

細長い机に向かい合わせに椅子が3脚ずつ置かれている。


「とりあえず座りなさい」


兄に言われ、私を真ん中に左にフレッド。右にセシルが座った。

それを見届けた兄は部屋に鍵をかけて向かい合わせに座ると、早速質問してきた。


「それで、話というのは何かな?」


「はい……あの、まずは謝らせて下さい……」


ギュッとわたしはスカートを握りしめる。


「謝る? 何のことだい?」


「あれほど、リオンに接触しないように言われていたのに……リオンと、婚約者のロザリンに関わってしまいました」


「……え? 何だって?」


その言葉に兄の眉がピクリと上がる。


「言っておくけどな、クラリスから近づいたわけじゃないからな? あれはたまたまだったんだよ」


フレッドが話に入ってきた。


「たまたま? どういうことだい?」


一瞬、兄はフレッドに視線を移すと再び私に尋ねてくる。


「それは……」


そこで私は今まであった経緯を全て説明した。

次のガイダンスへ行くために、中庭を通り抜けたところ口論をしていたロザリンとリオンに遭遇したこと。

そして盗み聞きをしたとロザリンに目をつけられてしまったことを。


「……なるほど。そんなことがあったのか……でもまさか入学早々、そんなことになるとは……」


「ですが先生。同じ大学にいるのですから、遅かれ早かれ、リオン達とクラリスが遭遇してしまう可能性はありましたよね? だったら、他の大学に入学させるべきだったのでは?」


普段穏やかなセシルの口調が何処か強い。


「仕方ないよ。この大学はそういう学生を受け入れるための大学でもあるからね」


兄が肩を竦める。


「そういう学生……? 一体、どういう意味ですか?」


次の瞬間、兄の口から耳を疑うセリフが飛び出した。


「この『ニルヴァーナ』学園にはね、クラリスのように他にも禁忌魔法を使ってしまった人たちがいる。そんな彼らをまとめて管理下におく役割も果たしているんだよ」


「え……?」


その言葉は衝撃だった。これにはさすがのフレッドもセシルも驚いている。


「他にもいるって……一体誰なんだよ」


フレッドが尋ねるも兄は首を振った。


「それは流石に教えるわけにはいかない。禁忌魔法を使った人物は重要秘密事項なんだよ」


「「「……」」」


その言葉に、私達は口を閉ざすしか無かった。


「もうこの話はいいかな? それじゃ本題に入ってくれるかい?」


兄は膝を組み直し、私をじっと見つめてきた――









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