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4章10 報告と方針

 学生食堂の入口に到着すると、フレッドが繋いでいた手を離した。


「もうセシル達は来ているだろう。入るぞ」


「ええ」


中へ入ると、食堂の中は多くの学生たちで混み合っていた。


「何処かにいるはずなんだがな……」


「そうね」


2人で食堂内を見渡していると、突然人混みをかき分けるようにエイダが現れた。


「こっちよ、向こうに席を確保しているわ。私についてきて」


「ありがとう」

「分かった」


エイダに連れられて円形のテーブル席に行ってみると、そこにはセシルの他にアンディとザカリーの姿もあった。


「げ……あいつらも一緒かよ」


私の後ろを歩くフレッドが露骨に嫌そうに呟くのが聞こえてしまった。

本当に彼は2人が苦手のようだ。


「2人を連れてきたわ」


席に到着するとエイダがセシル達に声をかけた。


「待ってたよ」


「早く座りなよ」


「随分遅かったな。一体何してたんだ?」


笑顔で声をかけてくるセシルとアンディ。それとは対称的にザカリーはムスッとした様子でフレッドを見た。


「何だと……」


フレッドとザカリーが睨み合うと、すかさずアンディが止めた。


「まぁまぁ、落ち着こうよ。食事しながらでも会話はできるだろう? とりあえず僕たちはここで待ってるから、クラリスとエイダは先に料理を注文してくるといい」


「そうね、行きましょう。クラリス」

「ええ」


私達は連れ立って、注文カウンターへ向った――


**


「それにしても驚いたわ」


食事が始まると、すぐにエイダが口を開いた。


「何が驚いたんだい?」


セシルが尋ねる。


「勿論、あなた達がアンディとザカリーの知りあいだったことよ」


「知りあいだったわけじゃないよ。僕たちは同じクラスで、たまたま近くの席に座って顔見しりになったんだ。そうだよな? アンディ?」


「あ、ああ。そうなんだ」


不意に話を振られたアンディは笑顔で返事をした。


「それよりもさっきの続きだ。何でここへ来るのが遅かったんだ?」


ザカリーの視線が私とフレッドの両方に向けられる。


「それは……」


答えようとすると、フレッドが止めた。


「いい、俺が説明する。教室を出たとき、ロザリンというヒステリックな女にクラリスが言いがかりをつけられて呼び止められたんだよ。一緒にリオンて男もいたな」


「え!?」

「何だって?」


アンディとザカリーが同時に驚く。


「また会ってしまったのね? 大丈夫だった、クラリス?」


エイダが心配そうな様子で声をかけてきた。


「大丈夫よ。フレッドがいてくれたおかげで助かったわ」


「言いがかりって……一体何があったんだい?」


「ええ、実は……」


セシルが質問してきたので、中庭での出来事を話すことにした……。



****


――食事が終わり、私達は食後の飲み物を飲んでいた。


「そうか……そんなことがあったのか。それじゃ、クラリスはロザリンに目をつけられてしまったということか……」


セシルが神妙そうな顔つきになる。


「あぁ、本当に凄い迫力だった。人の目なんか、全く気にならない様子だった。あれじゃ、リオンて男もたまったものじゃないな」


フレッドが肩をすくめた。


リオン……。

少なくとも、初等部の頃の2人はとても仲が良かった。何しろリオンは私と婚約解消して、ロザリンと婚約しようとしていたのだから。

リオンとロザリンの関係がおかしくなったのは、あの火事が原因で……。


「……自業自得だろう」


ポツリとザカリーは呟くが、その言葉に返事をする者は誰もいない。


「それで、エイダ……だったか? あんたに頼みがあるんだ」


フレッドがエイダに話しかけてきた。


「私に? 何かしら?」


「俺達が一緒の時は対処出来るが、問題は女子学生だけの授業のときだ。そのときはあんたが一緒にいてもらえるか? あの様子では、クラリスを1人にさせるのはマズイと思うんだ」


ちらりとフレッドが私を見る。


「ええ、勿論よ。あなたに言われるまでもなく、私はクラリスの傍にいるつもりよ」


「エイダ……ありがとう」


「気にしないで、だって私達親友でしょう?」


そして私に笑いかけてくる。


エイダを見ていると、まるで私がユニスであることを知っているのではないかと錯覚してしまいそうになる。

そんなはずはないのに……だって今の私はあの頃とは全く違う外見になってしまったのだから。


「皆、私のために迷惑をかけてごめんなさい」


改めて皆に謝罪した。


「別に謝ることはないよ」


アンディの言葉に全員が頷く。


私のせいで、皆に迷惑をかけてしまっていることが申し訳無かった。

自分でも何か出来ればいいのに……。


そんなおこがましいことを考えていたせいで私は忘れていたのだ。

ここが『ニルヴァーナ』のゲームの世界であることを。


そして、自分を待ち受けている運命を――





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