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4章4 トラブル 3

「セシル、席を代われ」


突然一番端の席に座っていたフレッドがセシルに声をかけた。その声は凄みを帯びている。

声を聞いただけで嫌な予感がする。


「……分かったよ」


セシルはため息をついて、2人は席を入れ替わると早速フレッドはアンディに詰め寄った。


「おい、お前。どういうつもりだよ」


「どいうつもりって?」


アンディはフレッドの苛立ちを気に止めることも無く返事をする。


「あの男は誰だ?」


「俺のことか?」


今度は私を挟んでザカリーがフレッドを見る。


「ああ、そうだ。お前のことだよ」


「人に名前を尋ねるときは、まず自分から名乗るべきだろう?」


「!」


その言葉にフレッドの肩がピクリと跳ねる。……どうも2人は性格が似ているようだ。


「……俺はフレッド・バイロン。そして隣に座るのがセシル・オドラン」


「え?」


セシルは頼まれてもいないのに、自分の紹介までされて戸惑っている。


「ふ~ん。お前たちがアンディの新しく出来た知り合いか。俺はザカリー・ロード。アンディとは幼馴染だ」


「そうか、それでその幼馴染とやらにお前は俺たちを紹介したかったのか?」


フレッドは再びアンディに尋ねる。


「これから4年間、同じ大学を共に過ごすんだ。友人は多く出来た方がいいだろう?  そう思わないかい? クラリス」


突然アンディが私に話を振ってきた。


「え? あ、あの……」


私に集中する4人の目。

アンディとザカリーには6年前、お世話になった。

そしてアンディとフレッドは私の監視者……。どちらの顔も立てなくてはならない。


するとザカリーが口を開いた。


「そうか。君はクラリスって言う名前なのか……いい名前だな。俺とアンディは初等部の頃から学園に通っている。分からないことがあったら俺たちに聞いてくれ。いろいろ教えてやるよ」


そして私を見て口元に笑みを浮かべる。

まさか、あのザカリーが6年の間にこんな表情をするようになったなんて……。


「そ、そうね。ありがとう」


この私の言葉が決定打になってしまったのだろう。アンディが笑った。


「ほら、クラリスがそう言ってるんだ。まさか君たちは友人を作ることまで制限させるつもりなのかい?」


「なっ……!」


文句を言いそうになるフレッドをセシルは止めた。


「まさか。そんなはずはないよ。え~と、ザカリー。これからよろしく」


「……ああ、よろしく」


セシルの挨拶に返事をするザカリー。


その時。

タイミングよく教授が教室の中に入って来たので、一旦この場は終わった。



「……」


教授の話を聞きながら、私は4人のヒーローたちの様子をそっと見た。

全員、真剣な眼差しで前を向いて教授の話を聞いている。


先程の様子から、人当たりの良いセシルならザカリーともうまくやれるかもしれ

ない。

けれど、ザカリーとフレッドの関係はどうだろうか?


チラリと隣に座るザカリーを見ると、視線が合う。


「どうかしたのか?」


ザカリーは顔を寄せてくると、私に聞こえるだけの小声で尋ねてきた。


「いいえ、何でも無いわ」


それだけ答えるとザカリーがフッと少しだけ笑った。

そこで私も笑みを返し、再び視線を教授の方に向けるも、何とも居心地が悪かった。


すぐにでもザカリーとフレッドはトラブルを起こしそうだが、問題はそれだけではない。

それは他の学生たちの視線だった。

男子学生たちは私を好奇心に満ちた目で見てくるし、女子学生たちの視線は冷たい。


これでは女子学生の友人を作ることは難しいだろう。


せめてエイダが同じクラスだったら良かったのに……。


私は心の中でため息をつくのだった――

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