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3章17 誰にも言えない

――21時


 私はアンディから指定された場所にやってきた。彼が指定してきたのは学園の中庭にあるガゼボだった。


美しい満月に照らされた中庭へ行ってみると白い石造りのガゼボが見えてきた。

近づいてみると、既にアンディが椅子に座って待っていた。


「待っていたよ」


アンディが私を見て笑顔で立ち上がった。


「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」


ガゼボの中に入ると、すぐに謝った。


「そんなに待っていないから大丈夫だったよ。それより座りなよ」


ベンチを勧められて、座ると早速アンディが尋ねてきた。


「ここへ来るのに、誰かに話したり見られたりしていないかい?」


「ええ。誰にも話していないし、多分見られてもいないと思うわ」


「そうか……なら、良かった」


アンディがホッとため息をつく。


「アンディはどうだったの? セシルやフレッドに見つかっていない?」


2人に罪悪感を抱きながら質問した。


「大丈夫だよ。2人とは部屋も離れているしね。寮でも一度も接触していないし」


「そうなの?」


アンディは、セシルやフレッドと同じ様な立場にいるのに仲が良くはないのだろうか?


「ところで、寮の様子はどうだったかな?」


「え? 大丈夫、特に何も問題無かったわ」


入寮そうそう、トラブルに巻き込まれたことをわざわざ報告してアンディを心配させることも無いだろう。


けれど、アンディは私の言葉にまゆをひそめた。


「問題なかったってことは、本当は何かあったんじゃないのかい? 実は、君たちと別れた後女子学生達に問い詰められたんだ。昼休みに一緒に食事をしていた女子学生は誰だって。だから友人だと答えておいたんだけど、どうにも納得していない様子だったんだ。それで心配していたんだけど……」


「本当に心配しなくて大丈夫よ。寮母さんはいい人だし、それに入寮してすぐに友達も出来たのよ。夕食も彼女と一緒に食べたの」


あの後、部屋の荷物整理を行うために私達は一度別れた。その後、夕食の時間にエイダが私の部屋を訪ねてきたので2人で一緒に学食で食事をしたのであった。


「へぇ? もう友達が出来たのかい? 良かったじゃないか」


笑顔のアンディ。

だけど、本当に過去の私を知るエイダと友人になっても良かったのだろうか?


セシルとフレッドには相談できなくても、アンディになら……。


「あのね、アンディ。今から話すこと、セシルとフレッドには黙っていておいてもらえないかしら? 絶対誰にも言わないで欲しいの」


「え? もちろん構わないよ? 誰にも言わないって約束する」


そこで思い切って話すことにした。


「実は友達というのは……私がユニスだったときの親友だったの……」


「え? それって単なる偶然じゃないのかい?」


「だと思いたいけど。だって、今の私はあの頃とは似ても似つかない姿なのよ? だけど、彼女は気になる言葉を口にしたの」


「気になる言葉? 何て言ったんだい?」


「事情があったとしても、絶対に詮索したりしないからって。それに、初めて私を見た時、何だか驚いた顔をしていたようにも見えたし……」


「う〜ん……確かに彼女の言葉は気になるけど……でも、驚いたのは君があまりにも綺麗だったからじゃないかな? こうして月の下で見ていると、本当に女神様のように神々しく見えるからね」


「え……?」


その言葉にドキリとした。

何故ならゲーム中で、アンディがクラリスに今と同じセリフを口にするシーンがあったからだ。

しかもこのセリフが聞けるのは、アンディのルートに入ったときのみ。かなり好感度が高くなければならない。


「何? どうかした?」


「い、いいえ。何でもないわ。それよりもアンディ。ザカリーの話があったのでしょう? 教えてくれる?」


「うん……実は……」


アンディはあたりを見渡し、声のトーンを落とした。


「魔術師教会には言っていないけど、実は……ザカリーも君がユニスだということを知っているんだ。僕が話してしまったから」


「え?」


思いも寄らない話に、私はアンディをじっと見つめた――







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