3章13 渡されたメモ
「ところでザカリーはどうしたの? 2人は親友同士だったのじゃないの?」
ゲームの中でもアンディとザカリーは友人同士の描写があった。それなのに、何故彼の姿が無いのだろう。
「親友同士だったのは6年前の話だよ。色々あって……その、今は以前のように交流はしていないんだ」
「ひょっとして、6年前のことがきっかけなの?」
無言で頷くアンディ。
「もしかして……私のせい?」
するとアンディはため息をついた。
「この際だから、正直に言うよ。確かにザカリーとの仲がおかしくなってしまったのは、ユニスが原因だよ。ごめん、でも別に君を責めているわけじゃないからね?」
「やっぱりそうだったのね……。2人の間に何があったのか詳しく教えて貰える?」
「……それが……」
アンディはチラリと隣のテーブルに座るセシルとフレッドを見ると小声になった。
「彼らが近くにいると話しにくいことなんだ。ユニスは寮生になったんだよね?」
「ええ、そうよ。今日から入寮するの」
アンディにつられて、私も小声になる。するとアンディはポケットからメモ帳とペンを取り出すと、素早く何かを書いて料理の乗ったトレーの下に挟み込んだ。
「2人には気づかれないように、そのメモをポケットにしまってくれないか?」
「分かったわ」
小さく頷くと、私はセシル達の様子を伺った。2人は今何か話をしているようで私達の様子に気づいていない。そこでメモを抜き取ると自分のポケットに忍ばせた。
「今夜21時にその場所に来てくれるかな? くれぐれも2人に見つからないようにね」
アンディの言葉に私は小さく頷き、他愛もない話をしながら食事を終わらせた――
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――16時
入学ガイダンスが全て終了し、私はセシルとフレッドと一緒に寮に向かってキャンパスを歩いていた。
「クラリス、久々の学校生活はどうだった? 疲れなかったかい?」
隣を歩くセシルが尋ねてきたので正直な気持ちを告げることにした。
「う〜ん、確かに少し疲れたかも。何しろ、こんなに大勢の人たちを見るのも久しぶりだったし」
「なら、寮に着いたら今夜はゆっくり休んだほうがいいかもな。明日からすぐ本格的な授業も始まるし」
「そうするわ。明日は1時限目から授業があるものね」
フレッドの言葉にドキリとしながら返事をした。
「そうか……それは残念だな。今夜は3人で大学生活が始まったお祝いでもしようと思っていたのに」
「折角計画を立ててくれていたのに、ごめんなさい。今度お祝いしましょう?」
セシルが残念そうな様子を見せているものの、もしかしてアンディと今夜会うことに気づかれているのではないかと、気が気でなかった。
「それじゃ、今夜はフレッドと2人で祝うことにするか?」
「お前と2人でか? 別に今更祝うような仲でも無いだろう? 第一……」
セシルとフレッドの会話を聞きながら、アンディのことを考えていた。
メモには今夜の待ち合わせの場所だけが記されていた。
あの場で話さなかったということは絶対にセシルとフレッドに知られてはいけない内容なのだろう。
寮にいる間は、セシルとフレッドの監視が外れる。
その隙を狙って、アンディは私に何か大事なことを告げるつもりなのかもしれない。
私はメモの入ったポケットを無意識のうちに抑えた――