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3章6 初めての出会い

 降りてきた2人を見て、息が止まりそうなほど驚いた。何故なら2人はゲームに出てくる残りのメインヒーロー達だったからだ。


「おはようございます、先生」


ダークシルバーの髪にグレーの瞳の青年はセシル・オドラン。彼は精霊使いで、様々な魔法を使うことができた。


「おはようございます」


少しぶっきらぼうに挨拶をする、黒髪に青い瞳の彼はフレッド・バイロン。数少ない召喚魔法を扱うことが出来る青年だ。


どうして、この2人が……?

戸惑っていると、背後にいた兄が私の両肩に手を置いた。


「紹介しよう。彼女が今日から君たちが監視する対象者のユニス・ウェルナー。そして今はクラリス・レナーの名前を名乗り、表向きは私の妹ということになっている」


「え?」


私はその言葉に驚き、兄を振り返った。まさかこの2人に私の素性を明かすとは思わなかった。


「! そうか、君が禁忌魔法を使ったのか……」


セシルが驚いた様子で私を見つめた。


「なるほど。だから魔術協会の監視下に置かれることになったのか。俺達と同じだな」


「え? 同じ……?」


フレッドの言葉に耳を疑う。


「とりあえず、話の続きは馬車の中でしよう。入学式に遅れるといけないからな」


兄に促され、私達は馬車に乗り込んだ――



****



「それで先程の話の続きですけど、セシルさんとフレッドさんも魔術協会の監視下に置かれていると言ってましたけど……どういうことですか? 私のように禁忌の魔法を使ったからですか?」


馬車が動き始めると、私は早速隣に座った兄に尋ねた。


「俺は禁忌の魔法なんか使ったことはない。あんたと一緒にしないでくれ」


フレッドは心外だと言わんばかりの口調で私をジロリと見た。


あぁ……この顔はゲーム内で何度も見た。彼は一番好感度が上がりにくく、ゲーム開始時は何かとクラリスに冷たい態度をとっていたことを思い出す。

けれど好感度が一定より上がれば、まるで手の平を返したかのようにクラリスに甘くなるのだ。


「そんな言い方はよせよ、フレッド。ごめんね。口は悪いけど、コイツ本当はいい奴だから」


セシルが笑顔で話しかけてくる。人当たりの良い彼は、この世界でも変わらないようだ。


「はい、大丈夫です。気にしていませんから」


「クラリス。彼らは君と同様特殊な魔法を使うことが出来る重要人物として、魔術協会に所属しているんだよ。別に何も監視しているわけじゃないさ」


兄が苦笑しながら説明してくれた。


「だけど、監視されているようなものじゃないか。定期的に日々の生活について報告しなければいけないし、魔術協会に足を運ばなければならない義務だってある。おまけに、大学だって進学先を決められてしまったしな」


フレッドは余程気に入らないのだろう。ふてくされた態度で窓の外を見つめた。


「そうかな? 俺は『ニルヴァーナ』大学に入学できて良かったと思っているよ。何しろ、こんなに綺麗な子と知り合いになれたんだから。これからよろしく」


セシルが私に握手を求めるように手を伸ばしてきたので、握手に応じようとした矢先。


「おっと、兄の前で妹に手を出すのはやめてくれるかな?」


兄がセシルの腕を笑顔で掴んだ。


「そ、そんな。手を出すなんて、大げさな。挨拶の握手をしようと思っただけですよ?」


「別に言葉で挨拶を交わしたから握手までは必要ないだろう?」


相変わらず笑顔の兄に、セシルは苦笑した。


「分かりましたよ。もうこんな真似はしないので、手を離して下さい」


「うん。分かればいい」


兄は頷くと、再び説明を始めた。


「クラリス。彼らは君と同じクラスに配属される。2人には君の事情を説明してあるから何か困ったことがあれば彼らを頼るといい。……分かったね?」


「はい」


兄の言葉に有無を言わさない圧を感じる。

言葉の裏には、2人の監視の目を抜けるような真似はしないようにと言われているようにも感じる。


「後、これだけは言っておくよ。あの大学には、君の知っている人たちも大勢いることだろう。だが、絶対誰にも自分がユニス・ウェルナーだということを知られてはいけない。分かったね? 特にリオン・ハイランドにはね。君が時を止める魔法を使った時、彼は直ぐ側にいた。君の魔力に触れているということは、本能的に記憶している可能性がある。だから不用意にリオンには接触しないように。いいね?」


この話は既に何度も聞かされていたが、再び念押しされてしまった。

けれど、私の返事は決まっている。


「はい、もちろんです。私はリオンに自分のことを明かすつもりはありませんし、彼には関わるつもりは一切ありません」


だってリオンは私と関われば、不幸になるに違いないから――

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