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3章3 刻印、そして……

 波打つ様なプラチナブランドの長い髪、紫色の大きな瞳に陶器のような白い肌。


誰もが振り返るような美しい容姿……間違いなく、『ニルヴァーナ』に登場するヒロインそのものだった。


「ど、どうして……」


6年経過して、成長したと言っても以前の自分の面影が何一つ残されていない。

オリーブグレーの髪も、ブラウンの瞳も……全くの別人の姿になっている。


「お、お父様……お母様……」


「6年前……林の前でリオンと倒れていたところを発見したときには、既に今の姿に変わっていたそうだ。だから、誰もユニスだとは気づかなかったのだよ。何しろ2人とも意識を失っていたから尋ねることも出来なかったのだ」


「でも2人の少年がユニスの着ていた服を覚えていたのよ。そこでリオンの両親に、あなたがユニスであることを教えたそうなの」


父と母が交互に説明してくれた。


「アンディとザカリーが……」


きっと2人は、私の姿に相当驚いたに違いない。


「ハイランド氏から、連絡を受けた時は信じられなかったよ。私たちの目で、病院に運び込まれたユニスが本物かどうか、確認して欲しいと言ってきたのだから」


「だけど私達が見ても……ユニスかどうか分からなかったの。ただ、確かに着ている服はあなたの物だったから……」


母が再び涙ぐんだ。

でも、確かに私がユニスだと分かるはずも無いだろう。以前の私の面影など、何処にもこの身体にはないのだから。


「ここから先は私が説明するよ」


不意に先生が話しかけてきた。


「お願いします」


「ここに運び込まれてきたとき、魔力が溢れ出ていたんだ。多分、今まで眠っていた力が一気に目覚めたせいなのだろう。それとも、何か魔力を増大する何かが身近にあったか……」


「あ……それなら心当たりがあります。あのとき、リオンの腕には魔力を増大するブレスレットがついていました。もしかして、それが影響していたのかもしれません」


ロザリンがリオンにプレゼントしたブレスレット。私は間近に接していたから、その影響をうけたのかもしれない。


「なるほど、それは一理あるかもしれない。恐らく魔法を使いたいと強く願う意思とブレスレットの力で、魔法が発動したのだろう」


私はその言葉に何も言えなかった。


「ユニス、あの時どんなことが起こったのだい? 初めて使用する魔法の力が強ければ強いほど代償が伴う。その証拠に君は6年間も目覚めることが無かったのだから」


両親は心配そうに私を見つめている。

私は大切な両親を6年も心配させてしまったのだ。……しかも、以前の娘の姿とはまるきり違う姿で。私は覚悟を決めて正直に話すことにした。


「あの時、気絶しているリオンを背負って林の外へ向かって歩いていたら……燃えている木が私達の上に倒れてきたのです。リオンを助けるために、彼の上に覆いかぶさって……倒れてくる木が止まることを必死で願いました。そうしたら周りの時が全て止まったんです……」


「……そうか。やっぱり、『時を止める』禁忌の魔法を使ったんだね。強すぎる魔力は、時には外見まで変えてしまうことがある。今の君のようにね。それに一度でもあの魔法を使うと、身体に刻印されるんだ。


「刻印……?」


「そう、君の場合は首の後ろに刻まれている。その刻印は禁忌の魔法を使った証でもある」


「そ、そんな……」


刻印が刻まれているなんて知らない。それでは『ニルヴァーナ』のヒロインにも首の後ろに刻印があったのだろうか?


「さて、ユニスさん。6年ぶりに目覚めたばかりの君に、こんなことを告げるのは酷だと思うが……今日から君は魔術協会の監視下に置かれることになる。このことについて、一切の拒否権は無い。いいね?」


それは驚きの言葉だった――



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