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5章 22 エイダの秘密 1

 アンディの転移魔法で、私達は寮の前に降り立った。


「はい、着いたよ。ユニス」


アンディは私の肩から手を離した。


「え、ええ……ありがとう」


「色々あって疲れているのに、連れ回してごめん。今夜はゆっくり休んでね。おやすみ、ユニス」


「おやすみなさい、アンディ」


アンディは笑顔で手を振ると、男子寮へ向って去っていった。

その背中を見届けると、私は女子寮の扉を開けた――




「クラリスさん! 無事で良かったわ! ずっとずっと心配していたのよ?」


寮母さんは私を見るなり、寮母室から飛び出して抱きしめてきた。


「あ、あの?」


「本当に……無事に帰ってきてくれて良かったわ……」


寮母さんの声は涙ぐんでいる。

まさか……私のことを心配して泣いているのだろうか?


「寮母さん……心配かけてごめんなさい……」


私はそっと寮母さんの背中に手を回すのだった……。



****


 寮母さんと今までどうしていたか説明した後、私は真っ直ぐにエイダの部屋へ向った。


――コンコン


ノックをすると、すぐに扉が開かれてエイダが姿を現した。


「クラリス、待っていたわ。さ、中に入って?」


「ええ、お邪魔するわ」


「どうぞ、ここに座って」


エイダにソファを進められ、向かい合わせでソファに座ると私は早速謝った。


「ごめんね。エイダ、待ったでしょう?」


「ううん、そんなこと無いわ。それでどうだったの? アンディに告白されたんでしょう?」


「え!?」


何故、エイダに分かってしまったのだろう? するとエイダが笑った。


「それで、告白の返事はどうしたの? 付き合うことにしたの?」


「それが……返事、出来なかったの……」


アンディから告白を受けたものの……私はその場で返事が出来なかったのだ。


「え!? どうして!?」


「だっていきなり告白されて、気持ちを受け入れて欲しいと急に言われても……どうしたら良いか分からなかったのだもの」


それにまさかアンディが自分に好意を寄せていたとは思いもしていなかったのだから。


「ふ〜ん……それじゃ、アンディと付き合うことは決められなかったのね?」


エイダは頬杖をついた。


「ええ……軽はずみな気持ちで返事をすることは私には出来ないもの。アンディに悪いことをしてしまったわ」


「そうだったのね……でも、今の話を他の皆が聞いたら喜ぶと思うわ」


エイダは意味深な台詞を口にする。


「他の皆って……?」


「そんなのは決まっているじゃない。ザカリー、セシル、それにフレッドのことよ。あの人達は皆クラリスのことを好きなのよ」


「まさか……そんなはず無いわ」


ここは『ニルヴァーナ』のゲーム世界であり、私はヒロインに違いないけれどもこの世界はゲームの世界とは大きく話が変わってしまったのだから。


「どうしてそんなはず無いって言い切れるの?」


エイダが真顔で尋ねてくる。


「それは……皆の態度から……?」


ザカリーのことは良く分らないけれども、少なくともセシルとフレッドは私の単なる監視役なのだから。

すると、思いがけない言葉をエイダは口にした。


「それは違うわ。アンディだけじゃない。ザカリーもセシルもフレッドも……皆あなたに好意を抱いているわ。私にそれが分かってしまうのよ。 クラリス……ううん。ユニス」


そしてエイダは笑顔を私に向けてきた――







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