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5章 21 アンディの思い

 さっきまで皆とハイランド家の屋敷の前にいたのに、一瞬で湖の前に立っていた。


「ア、アンディ。一体何を……?」


突然のことで何があったのか理解できなかった。


「ごめん、いきなりだったから驚いたよね? 転移魔法を使ったんだよ」


「これが転移魔法……すごいのね。本当に一瞬で移動出来てしまうなんて。でも、まさか私も一緒に連れて転移魔法を使えるなんて思わなかったわ」


隣に立つアンディを見上げた。


「それは魔術の鍛錬を頑張ったからね。でもまだあまり遠くまでは移動できないんだ。それに行ったことのある場所にしか転移出来ないし。ここはね、ハイランド家の近くにある湖だよ」


「え!? そうだったの?」


アンディと私はじっと湖を見つめた。

大きな湖には満月が湖面に映り込んでキラキラと輝き、それは美しい光景だった。


「どうだい、クラリ……いや、ユニス。気に入ってくれたかな?」


「ええ。とても気に入ったわ。本当に、なんて綺麗なの。明るい時に見る景色と夜に見るのとでは全然雰囲気が違って見えるのね。でも、何故急にここへ来たの?」


「それは僕にとって、ここは特別な場所だからね。だからいつかユニスと一緒に来ようと思っていたんだ」


「特別な場所……? ここが?」


一体どういうことだろう?


「何かを守るには自分が強くならないと思ったからだよ。もし、あの時この湖の水を火災現場に転移させて、すぐに消すことが出来ていれば……ユニスは禁忌魔法を使うことも、6年間眠りにつくことも……。それに自分自身を捨てずにも済んだはずなんだ。だから自分を戒めるためにも、度々この場所に来ていたんだ。足を運ぶうちにこの美しい景色が好きになって……もし、いつかユニスの目が覚めた時は2人で一緒に来ようと決めていたんだよ」


「そうだったの……アンディ……ありがとう。本当に私のこと心配してくれていたのね」


そこまでアンディが私を気にかけていたとは思いもしなかった。


「ユニス。ところで一つ、聞いておきたいことがあるんだけど……」


「いいわよ、何?」


「リオンのことを、どう思う?」


「え? どう思うって……」


予想もしていなかった質問で返答に困ってしまった。


「ごめん、聞き方が悪かったかな? リオンはユニスの婚約者だっただろう? 6年前は随分リオンのことを気にかけていたけど……今はどうなんだい?」


「今は特に思うところはないわ。だって、婚約していたのは6年前だし」


「それは本当? なら今はリオンに好意を寄せてはいないんだね?」


アンディは笑顔になった。


「好意も何も……リオンには友人のような気持ちしか持ったことは無いわよ?」


「そうか、それを聞いて安心したよ」


「アンディ、何故そんなことを尋ねるの?」


「そんなことは決まっているじゃないか。ユニスのことが好きだからだよ」


「え!」


その言葉に耳を疑う。


「ユニス。僕は6年前から君のことが好きだった。努力家なところも、大人びて儚げなところも。かと思えば自分を犠牲にしてでも、誰かを助けようとする気高いところも……ユニスの何もかもが好きだ。リオンのことを何とも思っていないなら、僕の気持ちを受け入れてもらえないかな?」


そしてアンディは私の手を握りしめてきた――









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