97話 『500階層RTA配信:下層』2
こちらは本日2回目の投稿です。今日の1話目がまだの方は前話からお楽しみください。
【あの、みなさん察知して左右に避けたからいいけどさ、これ、さっきみんなで輪形陣組んでた場所大変なことになってるんですけど……】
【あれ? そういやハルちゃんたちはどこ?】
「……ハル様……」
「あ、リリさん」
罠の位置関係的に爆風は斜め上に広がっていく予定。
だったからこそできるだけ伏せるようにしてえみさんに乗っかってた僕は……なんか気が付いたらリリさんに抱っこされてた。
背中が気持ちいい。
えみさんのでっかいのとはまた違うけどもほどよい感じ。
えみさんのは弾力があって、リリさんのはスライムみたい。
けど……え?
なんで?
【今度はリリちゃんに!!】
【あ、ハルちゃんに抱きつかれて転んだえみちゃんも助けられてる】
【胴体が伸びる猫みたいな格好になってるハルちゃん】
【おみ足がぷらぷらしている】
【ぷらぷら】
【ハルきゅんの下半身がぷらぷら!?】
【姉御……お前……】
【なんで姉御はボッシュートされないんだ……】
【ノーネームちゃんのお気に入りだから?】
【えぇ……】
ぷらぷら。
僕はぷらぷらしている。
「……ハル様は大丈夫なのかもしれませんけれども……」
「……普通の人はね、あの爆風でかなりダメージ受けちゃうんだよ……」
「るるさんまで」
あれ?
大丈夫だと思ったんだけどなぁ。
だってみんな避けたでしょ?
「ほら、あっち見てハルちゃん」
「?」
僕はわきの下から猫みたいに抱っこされた状態で、ぼんやりとるるさんの指先を追う。
しゅうううっと真っ赤になってる地面がある。
「? あのくらいは大丈夫じゃ」
ちょっと熱いくらいでしょ?
「大丈夫じゃないんだよ」
「え、でも」
「そもそもハル様は大丈夫なのですか?」
「はい、だって岩が溶けない程度ですし」
リリさんもレベル高いんだから平気でしょ?
【えぇ……】
【悲報・ハルちゃんやっぱりちょっとおかしい】
【ちょっと……?】
【ちょっととは一体どこの言語なのでしょうか】
【ちょっと(ハルちゃん基準】
【ハルちゃん、熱耐性も高いのね……】
【岩が溶けない程度って……】
【爆発の罠踏みまくってるから耐性ついてる……?】
【そ れ だ】
【マジかよ草】
【もしかしてまーた繋がっちゃった……?】
【爆発落とし穴コンボで何回も落ちてるあいだに耐性ついてたのハルちゃん……】
【えぇ……】
【そら分かるわけないよ だれもそんなこと1回でもしないもん】
【朗報・爆発の罠踏みまくったら熱耐性めっちゃつく】
【じゃあお前やれよ】
【え、やだよ、1回でリストバンドからの病院送り間違いないもん】
【なら言うな】
【草】
【やっぱりちょっといろいろ完璧におかしいハルちゃん】
◇
「ごめんなさい」
僕は頭を下げる。
僕はいい大人だからちゃんと謝れるんだ。
会社でも新人時代に何回下げたことか。
ちなみに謝るときにはちゃんと申し訳なさそうな顔をして深々と。
「いや」とか「それは違います」とかは言わない。
言うと上司のおじさんが怒る。
先にひととおり怒られてから、どうしてもってとこだけあとでさらっと否定しとくんだ。
これも社会人のスキルだよね。
今は幼女だけども。
【えらい】
【いいこ】
【謝れて偉いね】
【そうだよね、うっかり自分基準でいきなり先制攻撃して艦隊全滅させかけただけ……いややっぱり悪いわハルちゃん】
【草】
【輪形陣とは一体……】
【ほ、ほら、映画とかで秘密兵器ぶっ放したときに吹き飛ぶ役ってことで……】
【ああ、映画とかで出て来る通常兵器、基本やられ役ってそういう……】
よくよく思い出して見れば確かにそうだった。
ダンジョンに潜ったことないころはうっかりヤカンとかフライパン触っちゃってやけどしたことあったけど、あれが今の救護班の人たちの一部って感じのはず。
で、男のとき……レベル10と少しのときはドラゴン系のモンスターのブレスとかで痛い目に遭ったこともある。
あー、そういえば爆発の罠踏んでもそこまで痛くもなくなってやけどもしなくなったのってこの体になったからだった。
……そうだよね、この謎の体だもん。
いろいろと感覚がズレちゃってるんだ……反省反省。
【うつむいちゃってるハルちゃん】
【なかないで】
【ぺろぺごめんなさいごめんなさいごめんなさ】
【雑音はともかく反省しているようでなにより】
【ハルちゃんのいいところはすぐにごめんなさいできることだもんね】
「……もう怒っていませんから顔を上げてください」
「えみさん」
抱きついたときによれた服がそのまんまだけどいいの?
「それで、何故あのような蛮……ことをしたのですか」
【草】
【えみちゃん、今蛮行って言おうとした?】
【しょうがない】
【危うく黒焦げだったんだからしょうがないよ】
「あ、はい。 次の部屋が大部屋でモンスターが寝てる場所で」
「……モンスターハウスのことかな?」
「そうとも言うみたいですね」
「みんなそう言ってるんだよハルちゃん」
「そうなんですか」
んー、僕そういうのあんまり詳しくないからなぁ。
【優しく諭す、るるちゃん】
【優しいね】
【これって呆れてるって言わない?】
【るるちゃんのジト目……いいね】
「それで、モンスターハウスを以前の配信のように吹き飛ばそうと」
「あ、いえ、違うんです。 その下と下、さらに下の階層も見えたので」
「え?」
「下の……下?」
「どゆこと?」
【え?】
【は?】
【ハルちゃん……?】
【朗報・ハルちゃん、3階層下まで索敵できてる】
【えぇ……】
「で、その下の下の下までみんなモンスターがたくさん居る大部屋だったので」
【もしもしノーネームちゃん?】
【鼻歌】
【草】
【すっとぼけようとしても無駄だよノーネームちゃん】
【なんでそんなことしたの!】
【3階層下までってことは4階層連続でモンハウとか殺意高すぎない?】
【ハルちゃん以外は普通の人間なの! リストバンドあっても怪我はするし痛いの!!】
【ほら、言いなさい!】
【不満】
【推】
【運搬】
【2週間】
【大不満】
【えぇ……】
【そういうことはちゃんと言いなさいって言ったでしょ!!】
【なるほど、ノーネームちゃんのお茶目だったのね】
【お茶目(高難易度の200階層で4階層連続モンハウの準備】
【殺意以外の何ものでもない】
【というかあんな罠ある時点で殺意しかないよね】
【ま、まぁ、これまでちゃんと斥候職の人が回避してきたし……】
【それ、間違って踏んでたらどうなってたんですかね……】
【配信が「見せられないよ!」になってたね】
【リストバンドあるにしてもひでぇ】
【なぁにこれぇ……】
「ひらめいたんです。 なんか、パズルみたいに罠を連続起動させられたらって」
【いいことひらめいた】
【やべーことひらめいちゃった】
【なぁんでそんなこと思いつけるんですかね……】
【なぁにこれぇ……】
なんだか今日の僕は無性に冴えているんだ。
こうして立っていても、ここに居る全員の体力とかがなんとなく分かるし……あ、えみさん何か我慢してる……トイレ?
結構ぎりぎりじゃない?
休憩にはまだ早いけど、プレハブトイレ出す?
とにかく、ぎりぎりで下の下の下までがマッピングできてる不思議。
レベルが上がった感覚はないし、スキルが上がったのかも。
「だからがんばって考えて、最初のパズルを……あいたっ」
すこんっとはたかれる僕。
「そういうことは! 先に相談なさい!」
「いひゃいですえみさん」
「尊っ……こほん、ハル様、さすがに私もそう思いますよ?」
【●REC】
【ノーネームちゃんが涙目なハルちゃんに夢中だから放置で大丈夫だな】
【けどさすがにおこなえみちゃん】
【えみお母さん……】
【さっきちょっと変だった気がするけど、今はちゃんとお母さんしてる】
【まぁね、ハルちゃんたち以外みんな血の気が引いたり座り込んだりしてるもんね】
【そりゃあね】
【ここに居る多くが歴戦の猛者だからこそ分かるだろう、ハルちゃんのやらかし】
【丸焦げになりそうになってリストバンドで強制送還からの治癒魔法漬けで病院直行だったもんなぁ】
「心配もしますし、何よりも」
「ごめんなさ」
「――ハルさんに抱きしめられていよいよ私もと思ったら押し倒されてハルさんのやわらかくてぷにぷにな体が私に密着してしかもあろうことか胸に顔をうずめてきて思わず出ない母乳を授乳したくなるような気持ちに駆られて熱くなって来てこんな衆人環境でと高揚したところで引き剥がされたこの気持ちは後でいつもみたいに縛られて踏んでもらう程度じゃ! ――――――――あ」
「あ」
「えみちゃん……」
「とうとう……」
【えっ】
【えみちゃん……?】
【あの、今のってえみちゃんがしゃべったん……?】
あーあ。
我慢してたのってヘンタイさん成分だったんだね……なんかその、ごめん。
抱きついたのがとどめだったっぽいし、ちょっと反省。
でもさ?
こんなことで盛らしちゃう程度だし、いずれどっかでバレてたと思うよ?
ほら、人の性癖ってやつは隠し切れないって言うじゃん?
だから僕は悪くないよね?
ね?
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