96話 『500階層RTA配信:下層』1
こちらは本日1回目の投稿です。昨日の2話目がまだの方は前話からお楽しみください。
【書けねぇ!】
【何をだ?】
【るるハルへのセクハラコメントか?】
【違う! そうだけど!】
【草】
【いいからはよ】
【アレのことだよ! アレ! こっちで起きてること!】
【ああ……】
【悲報・ノーネームちゃん、まさかの情報シャットアウト】
【なんでぇ!?】
【あの情報、コメントに書いてもBANされるっぽいし、しつこいとボッシュートされるっぽい】
【マジかよ】
【外じゃみんな大騒ぎなのに】
【やべぇ、会社から出られねぇ】
【草】
【ああそうか、対象地域だと家に居たらまだ良いけど泊まり込みとかだと……】
【えみちゃんたちも、事務所さんからの連絡が入らないらしい】
【事務所自体は大丈夫っぽい。 ただ、ダンジョンの中の通信が】
【完全に乗っ取られてるねぇ……】
【深夜のコメント管理担当のかわいそうな人は居るはずだから、寝てるかノーネームちゃんの支配下かのどっちかだな】
【ノーネームちゃん!】
【ノーネームちゃーん】
【ダメだ、返事がない】
【忙しいんだろうよ】
【だろうな】
【ほーら、ハルちゃんのかわいいイラストだぞ☆】
【あ、俺も貼る貼る!】
【私のも!】
【うわぁ……】
【感謝】
【大量】
【歓喜】
【草】
【やっぱ見てるんじゃねぇか!!】
【速攻反応してて草】
【ノーネームちゃん、ハルちゃんのことだけは無視できないからね……】
【ま、まあ、とりあえずノーネームちゃん自身は何か考えて動いてるってことで安心できるのかな……?】
攻略8日目、201階層。
それが今の僕たちの場所。
なんかコメントが止まってる……ああ、選別担当の人もねぼすけなんだね。
「事務所との連絡が……」
「私も、外の者と……」
「……メンタル的に、るるさんとハルさんには秘密に……」
そのせいか、さっきからひそひそひそひそ話してる3人。
るるさんは全く気づいてないっぽい。
「ハルちゃん、今日は大丈夫?」
「はい、なんだか体が軽いんです」
【ハルちゃんそれだめ】
【それ言っちゃ行けないセリフだから】
【草】
【なんでハルちゃん、事あるごとにそれ言うの】
【多分普通にコンディション良いって言いたいんだと思う……】
【ほ、ほら、ハルちゃんってちょっと独特のセンス持ってるから……】
「ここからは僕が先頭なんですね?」
「……可能な限り体力を温存してくださいね」
「はい。 なるべく」
なんでも今日から僕が真ん中でみんなが周りを守るって形になるらしい。
前から横には強そうな人たち、後ろには救護班さんたちやリリさんの護衛さんたち、僕のすぐそばにはいつものみんなだ。
【「なるべく」の信用性は】
【ない】
【あるわけない】
【あったらおかしい】
【あることがおかしい】
【皆無】
【だよね】
【草】
【ノーネームちゃんお墨付きで草】
【ノーネームちゃんもハルちゃんのことしっかり理解しててなにより】
「それではみなさん。 本日からはハルを中心としたフォーメーションとなります」
毎朝の行事として、えみさんがみんなの前に出て訓示もとい作戦会議……だけども今日は僕の前に立って話してる。
こういうときは凜々しいんだよね、えみさん。
ヘンタイさんが出てきちゃったら、みんなどんな顔するんだろ。
【ハルちゃんを中心に展開される輪形陣】
【旗艦はハルちゃん】
【えみちゃんでは?】
【いや、護衛対象はハルちゃんだからさ】
【でも輪形陣言ってもお空からは艦載機来ないけどね】
【代わりに地上からモンスターしゃんたち来るけどね】
【でもそれ、ハルちゃんが居るから居なくなるんだよ?】
【そうだね】
【どうしてそんなこと言うの!!!】
【じゃあお前、ハルちゃんが動き始めても大丈夫なんだな?】
【そんなわけないじゃん!! ばか!!】
【草】
【そっとしておいてやれ……ハルちゃんに情緒を破壊された奴の末路なんだ……】
【けど輪形陣とは言いえて妙だね】
【ああ】
【だってハルちゃんが一方的に射程外から攻撃するからね】
【ああ、アウトレンジってそういう……】
【ハルちゃんは空母だった……?】
【ハルちゃんが母とか冗談でもやめろ】
【スカイママ……?】
【さすがに飛躍しすぎだろ草】
「……という流れで今日は昼休憩まではハルに任せて進みます。 その後みなさんの意見を参考にして今後の」
「えみさん」
【ハルちゃん!?】
【ハルちゃん、えみちゃんが今一生懸命説明してたのよ?】
【ふぇぇ……(先行入力】
【なぁにこれぇ……(先行入力】
「……なんでしょう」
僕の周りに広がる人たちが腰を落としている。
うん、戦う人たち……るるさんたちを含めてみんな熟練の人たちだもんね。
この先にあるモンスターたちがいっぱい居る部屋のことも分かってるんだ。
じゃあ説明は要らないかな?
要らないよね。
【ねぇハルちゃん何考えてるの……?】
【やめて……お願い……】
【みんなの顔ちらちら見てるのかわいいけどこわいよー】
【視聴者が悲鳴を上げている】
【だってハルちゃんだもん……】
【爆発事故動画って予告されて観てるようなもんだし……】
みんな、近くにいる人同士でぼそぼそ話してる。
良かった、じゃあもう良いよね?
【顔色悪くなった一同】
【だってハルちゃんが動き出しそうだもん】
【……ちゃんと事前に話せてえらいね!】
【そうだね! 何にも言ってないけどね!】
【だってハルちゃんだよ?】
【だってハルちゃんだもん いきなりぶっ放してもおかしくないし……】
【期待】
【期待】
【ああうん、ノーネームちゃんは待ちに待ったんだろうねぇ……】
【わくわくノーネームちゃん】
【俺たちは戦々恐々だけどね】
かちゃりと特殊弾に換装した僕は、正面の通路の先へ照準を合わせる。
「……あの、どうして銃の弾を……いえ、その銃はそもそも」
「あ、私が提供した試作品のですね、ハル様」
「はい。 なので大きな音と爆風が来ますから伏せてください」
「え?」
「えっ」
「ま、待ってハルちゃん、もしかしてそれ――」
ぱぁんっ……ひゅるるるる。
リリさんが売るために持って来たらしい、射程が超長い銃から発射された超遠距離狙撃用の弾――こっちは会長さんが「お勧めなのじゃ」とか言ってこっそりくれてたやつ――が暗闇の中を突き抜けていく。
ひゅるるると通路が後ろに後ろにって過ぎていって……あれ?
なんで僕、銃弾が飛んでいくのを銃弾視点で見えてるの?
なにこれこわい……あ、モンスターたち見えてきた。
【悲報・やっぱぶっ放したハルちゃん】
【あーあ】
【こうなるとは思ったよ】
【逆にこれまでよく我慢できたって感心するレベル】
「あ、あの……」
意識すると半分くらい透けて目の前が見える……けども。
え?
他の人たちみんな避け始めたのになんでえみさん、突っ立ってるの?
るるさんもリリさんも動いてるのに。
「……もうっ」
「えっ、は、ハル――」
【!!!】
【ハルちゃん!?】
僕の撃った方向をぽやっと眺めていたえみさんに抱きついて引き倒す。
……もう、他の人はみんな言うとおりにしてくれてるのに、こんなときにえみさんったら。
ぽふっと地面に……あ、ちゃんと片手で後頭部ガードしてる。
ごめんね、気が付かなくって……でも高レベルだからちょっと痛いだけでしょ?
それにしてもでかい。
顔が、ほっぺが両方から包み込まれてなんにも見えない。
【●REC】
【ハルちゃんがえみちゃんに抱きついた!!】
【予想外の攻撃で倒れるえみちゃん】
【えみちゃんそこ変わって!】
「何を――はうんっ!」
えみさんが何か言おうとするのを僕の体でぎゅっとプレス。
まぁどうせ軽いし痛くもないでしょって全力で。
【ぱふぱふ】
【でかい】
【いや、そんなバカなこと言ってる場合じゃ】
――僕が放った弾丸はモンスターたちを素通りして、部屋の中心にあるおっきな罠に刺さる。
弾が弾けてまぶしくなって、そこで弾視点から完全に僕の目線に視界が引き戻る。
――そうして首筋にどどどどっとぶわっと来るのは真っ赤な爆風。
【ひぇっ……】
【ダンジョンが揺れてる……】
【やべぇ、ASMR用のヘッドホンだからめっちゃ迫力あるわ】
【俺も】
【炎の渦が通路の先から……】
【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】
【ハルちゃん今度は何しでかした!?】
【中ボスフロアのドラゴン系か!?】
【いやいや、この前の200階層が中ボスフロアだったろ】
【じゃあこれは一体】
【爆発罠】
【3】
【爆縮罠】
【5】
【崩落罠】
【3】
【3層同時貫通破壊】
【人類記録更新】
【はぇ……分かんない】
【えぇ……】
【解説ありがとね、ノーネームちゃん……良く分かんなかったけど】
【それでこんな地獄の業火が】
【ハルちゃんハルちゃん、これ「大きな音と爆風」って表現じゃないのよ】
【何かもっとえげつないものだよね……】
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