91話 『500階層RTA配信:中層』3
「えっと、今どのくらいなんだっけ、えみちゃん」
「……当初の予想では、アタッカーですと今の倍の人数が、良いコンディションで2週間弱……10日と少しでクリアを目標にしていましたね」
「1日50階層、そこから少しずつ降りて行っても40階層くらいは行ける……そういう作戦だったもんね」
「それが、最初の3日は合計で約150階層……そこから4日は極端に落ちて、合わせて50階層……ですか」
【しかしいつ聞いてもやばい落ち方である】
【まぁなぁ、ほんとどこにでも罠があって殺意増し増しだし】
【しかもモンスター、見たことないのしかいないもんな】
【今までの経験が一切役に立たないレベルでな】
【この1週間、ダンジョン関係の人寝てなさそう】
【ああ……】
【寝てないよ】
【寝るなんてもったいないことはできないんだよ】
【寝ろ】
【だめ】
【寝てるあいだにおしごとふえるもん……】
【ああ! メールが! メールが!!】
【やめて、予定表にねじ込まないで!!】
【草】
【阿鼻叫喚で草】
「攻略組……戦闘職の方が、この時点で10名。 補助の方が15名。 ハルさんを護衛していた私たちで、ハルさんを含めて5人」
「全部で30人……少なくなっちゃったね」
【アイツらはいいやつらだったよ……】
【前線張ってたり、とっさの弾受けになったり……】
【ああいう上位陣でも大ダメージは受けるし、予想外の方向からだと即リストバンドなんだな……】
【ダンジョン怖……】
【お前らの分まで俺たち、がんばるからな……】
【まあ見てるだけだけど】
【だって抽選あぶれたもん】
【お前上位ランカーかよ草】
【そうだよ悪いか!! 俺だってなぁ……ハルちゃんを近くで見たかったんだよ……「お兄ちゃんかっこいいですね」って言われたかったんだよ……】
【素直にかわいそう】
【でも言わせてあげない】
【ハルちゃんに言ってもらったらお前、嫉妬でやばいことになるからな? 覚悟しろよ?】
【草】
見渡すと、やっぱり少なく感じるね。
テントの数自体も、松明の数や明るさも……火を囲んで談笑してた声の数も。
最初はもっといたんだけどなー。
3日目くらいからかな、急に人が減り始めたのって。
やっぱ急ぎすぎたんだよ……しょうがないんだけどさ。
「……じゃっ、明日からは私たちもがんばらないとね!」
「るる、可能な限り体力と魔力を温存してくださいね」
「分かってるってえみちゃん!」
「リリさんのパーティーの方たちは」
「私を含めて6名です。 ……お恥ずかしい……」
【しゃあない】
【この状況じゃ、むしろよくやってる方だろ】
【そもそも時間制限なきゃこんな無理しないもんな】
【この配信の視聴でさえ「無理だと思ったらすぐに視聴を中止してください」って通達あったくらいだし】
【でも見ちゃう】
【見ちゃう】
【なにしろハルちゃんの寝顔を堪能できるからな!】
【おかげでうちの事務所、今週仕事できてない】
【草】
【そこはがんばれよ、社会人だろ】
【だって社長からして見守り隊だし……】
【ああ……】
【お前、今のうちに転職考えたら?】
【いや、俺はハルちゃんに熱心な社長を応援したいんだ】
【そうか……】
【でも大丈夫、みんな会社に泊まり込みで応援してるからむしろ仕事は捗ってる】
【これが社員旅行的なやつか……】
【こういう連帯感なら案外悪くないかも……】
【残業も、こうやって実況しながらなら楽しいし……】
【今度は社会に革命を起こしつつあるハルちゃん……!】
【元凶はノーネームちゃんだけどね】
【ハルちゃん特需……?】
【いや、やっぱ大半はサボってるだろうからマイナスだろ】
【でもリリちゃんも良い子よね】
【ノーネームちゃんが許してくれそうだからって、最初に指定された人数よりプラスで攻略できてるもんね】
【さすがはハルちゃんが好きすぎる仲間……理解度が違う……】
【やっぱ海外はレベル高いよなー】
【動きとか違うもんな。 あ、実力はともかく戦術とかがな】
【でもみんな良い子だろ?】
【え、ハルちゃんも?】
【良い子だろ 勝手に動かしちゃダメってだけで】
【良い子だよ? でも目を離しちゃいけないだけで】
【良い子に決まってるだろ 画面のこっちから眺めていたい危険度なだけで】
【良い子よ? ただただほっとけない天然なだけで】
【SCPかな?】
【人類にとってのSCP、モンスターにとってのFOE】
【あながち間違いでもないよね】
【だって顕現した天使だし】
【これは天使ハルちゃんと悪魔ノーネームちゃんの戦いだった……?】
【小悪魔だ、間違えるなよ】
【草】
【冗談はさておき、元からダンジョンの規模と難易度、攻略速度的に無茶な構成だからなぁ】
【ノーネームちゃんのわがままのせいでね】
【おい、消され……ないんだったか】
【ああ、この程度なら大丈夫らしいな】
【一応元凶って言う自覚はあるノーネームちゃん】
【ノーネームちゃん、基本的にセクハラとかネタバレとかハラスメント的なのに反応するから……】
【そう思うと意外とまともなノーネームちゃん】
【でもやっぱり1番悪い子なのがノーネームちゃん】
「ハルさん」
みんなが落ち込む中、焚き火の反射で赤く見えるえみさんがいる。
「えみさん」
「……明日から……日中、起きていられますか……?」
「多分?」
両手をぐーぱーしてみる。
「ぐっ……」
こんなのでヘンタイさん成分がにじみ出るえみさん。
毎日補給しても足りないし耐性つかないんだね。
【かわいい】
【なんで起きてられるっていうアピが両手ぐーぱーなのよハルちゃん】
【あ、えみちゃんに向けておてて突き出してる】
【かわいい】
【えみちゃんも悶えてる】
【そりゃ悶えるだろ】
【しかし発想が幼女過ぎる】
【ハルちゃん、本当に純真だよね】
【話すのがめんどくさいって理由で体動かしてアピるからね】
にぎにぎ。
ほら、こんなにも動く。
こんなにも元気なのにね。
「ぐっ……!」
「えみちゃん……!」
【真顔でおててを動かすハルちゃん】
【それをほほえましく眺める一同】
【ぜんいんの しきは 3 あがった!】
【ああ、みんなちょっとほんわかしてる】
【こういうのだけでよかったのにね……】
【まぁ、ノーネームちゃんがにこにこしてたの、こうなること見越してだろうし……】
【やっぱこのダンジョン、難易度:ハルちゃんなんだろうなぁ……】
【難易度ハルちゃんとか何そのムリゲー】
【天使の難易度と人類の難易度を並べてはいけない】
【ふぇぇ……】
【あーあ、まーた幼女が生まれちゃった……】
「明日も9時スタートですよね?」
「そうですね」
「じゃあもう寝てきます」
「え、まだ7時……いえ、お供します」
ぐーっと伸びをして、僕は着替えを取りに行く。
さっさとお風呂入って寝よっと。
明日から攻略できる。
そう思うと布団に入ってからわくわくしながら気持ちよく眠れるんだ。
……今日もリリさんが着いてきてる……別にいいけど。
【草】
【えぇ……】
【緊張感皆無なハルちゃん】
【いや、あれは明日から動けるからわくわくしてると見た】
【19時に寝る宣言するハルちゃん】
【本当に幼女だね】
【そうだな 小学生以下の、ガチのな……】
【ああ……】
【これで最初の頃は合法ロリ疑惑あったとかもうみんな忘れてる】
【ああ……】
【そうしてうきうきとテントに入るハルちゃん】
【ちょっとして温泉旅館によくある服入れを持って出て来るハルちゃん】
【なんであんな物あるの?】
【と言うかなんでシャワールームが毎日建つの?】
【だってハルちゃんのきちゃない袋、なんでも入るんだもん……】
【すごいね、きちゃない袋……】
【酷使され続けるきちゃない袋】
【でもハルちゃんに酷使されるのって?】
【最高】
【だよな】
【分かる】
【俺も酷使されてきちゃなくされたい】
【お前……】
【分かる】
【真実?】
【お願い冗談です本当にやめてください】
【ノーネームちゃん、これ比喩表現!!】
【冗談くらい言わせてよノーネームちゃん】
【草】
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