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【2巻予約受付中・25/10/20発売】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~  作者: あずももも
6章 500Fダンジョン攻略RTA

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84話 『500階層RTA配信:低層』3

「すぅ……すぅ……」


「こしょ……こしょばゆいぃぃぃ……!」

「るるさん……普段は平気でしょうに……」


ハルの寝息が絶妙に首筋にかかる様子で、抱きついた手もだらんと落としながら眠りこけるハルを起こさないようにとがんばりつつも、もだえながらへなへなと座り込んでいく――アイドルがしてはいけない顔になりつつある、るる。


【草】

【草】

【マジで腰砕けになってる】

【るるちゃんが早速ピンチだ!】


【ハルちゃん完全に寝ちゃった】

【寝ちゃったねぇ……】

【かわいいけど……こんな出だしで大丈夫?】

【まぁハルちゃんが動かない限りは逆に安全だから……】

【そうそう】


それを代わろうとしゃがんだ、ちほ。


――そんな彼女たちの前に、近づいてくる影。


「……こんなこともあろうかと、ってね」

「こんなに早いとは思わなかったなぁ」


青年と、少女。


配信画面からは――補助要員なのか、加工された2人が映る。


【急に誰?】

【分からん】


【女の子と男か】

【男は要らない】


【要るの!!!】


【姉御うるさい】

【姉御、落ち着け  こいつはどう見てもショタではない】

【そっちの方向で黙らせるの!?】

【草】

【草】


「あなたは……」


「研究開発部門の……まぁいいでしょ、細かいことは」

「今はまだ秘密のほうが何かと都合が良いからね」


ちほたち現地勢は、彼らの姿を認識し――今どきのダンジョン潜りとしての不文律により容姿について言及はしなかったものの、総じて「ダンジョンには慣れていない技術屋」と感じた。


【ぼかしが相当強いし……非公開勢か】

【るるちゃんくらいの歳の女の子は良いとして、野郎、テメーはダメだ】


【ちょっと!! 男の子同士の友情に何てこと言うの!!】


【姉御はステイ】


【何よ!! 応援呼ぶわよ!!】


【姉御、お前……】

【荒ぶる姉御で草】

【というかハルちゃん寝てるから友情も何もないだろ草】


「そのハルちゃんだけどね、会議でそういうこともあるだろうって言われてたのよ。だからこれ使ってちょうだい……えっと、るるさんだっけ」


ふんすっ、と、少女が手招きをすると――ふよふよと浮いて迫ってくる謎の物体があった。


「うん、そうですけど……えっと。……なにかなぁ、これ……?」


ハルの寝息を堪能してりせっとされたるるが、ダンジョンという人類領域外のエリアで目にしたものとは――


「反重力……っぽい力で浮くイス? イスさん?」


――最大限に配慮する表現で、現代アートだった。


少なくとも大衆の誰にも理解されない類いの。


「イス……かな?」

「イスだったかも……」


「最初はイスだったんだけどねぇ……」

「何回も徹夜したからみんなハイになっててねぇ……」


その「イス」を招いた2人は――頭を抱え、うずくまっていた。


「イスだと思うんだけどなぁ……」

「イスよね……イスなんだけどぉ……」


彼と彼女は、思い悩んでいた。

懊悩していた。


「あの、何故それを持ってきた方が疑問形で……?」


芸術――それも絵画ではなく物体――を全く理解できないものの、えみという理解しがたい存在を最近に知ったちほが、恐る恐るでその「何か」に近づく。


「いやー、寝心地研究して作ってたら」

「いつのまにかこんなSFチックになっちゃって」


「そ、そうなんだぁ……」


「か、科学者の方にはそういうこともあると言いますね……」


ちほは「えみさんよりは理解できる」と、思考を放棄した。


【草】

【ああ……最前線がすごい勢いなのに最後尾はぐっだぐだだよ】

【けどなんか浮いてる!!】

【なんだこれ】


【イス……かな?】

【イス……かも……】

【草】


【でも待って、今この子「作った」って言わなかった?】


【上位ランカー、かつ技術職とか……】

【男はまだしも女の子の方やばくね?】

【いや、男のほうも高校生くらい?でここに選抜されてるら、充分すごいっていうか】


「まあまあ良いじゃん、それより使ってよ。ハルちゃんが遅れたらみんな困るんだから」

「そうそう、これは少なくともハルちゃんには危害は加えないから使ってね」


「……るるさん、せっかくですから」


「そうだね……」


「んぅ……」

「あふんっ」


びくんっ。


ハルが不意に漏らした寝言で、るるは今度こそ座り込んだ。


「あ……ごめん。ハルちゃんの寝息で腰抜けちゃった」

「……仕方ありませんね……よいしょ、っと……」


そしてハルは今度こそ、ちほに抱き上げられる。


【えぇ……】

【朗報・濃厚百合開幕】

【そこまで良いのか……ハルちゃんの寝息……】

【ASMRにしたら快眠できそう】

【ハルちゃんのあったかさと匂いとで確かにやばそう】


完全に脱力し――「るるとちほの傍だから」という理由で、無意識に警戒を放棄している幼女は……無事、ちほがその「イス」へと収められた。


「……乗せましたけど……」


「すごいね、これ……ハルちゃん乗せてもふわふわ浮いてる……」

「しかも中はクッションのようで……」


それは……イスと表現するには、少しばかり居心地が良さそうだった。


「あとはこれ、押すだけで良いから」

「あんまり力かける必要ないからね」


「あ、はい」

「……このようなものが……この国のダンジョン技術は進んでいますね。この時期で……」


遠巻きにしていたリリも合流し――ぽつりと漏らす。


「うん、これ反重――それは今はどうでも良いから軽く押して早く追いつこうよ」

「じゃ、そういうことで。がんばってねー」


ハルへ「イス」を捧げた2人は、そのまま部隊の最後尾へと走って行く。


「うぅ……ハルちゃん、だっこもおんぶもできないぃ……」


一方で足腰が復帰したるるは、己の弱さを嘆いていた。


【今「反重力」って言わなかった?】


【……気のせいだな!】

【そうだな! それっぽい力だもんな!】

【そうそう! そんなSFな力なんてまだあるはずないもんな!】


【けど、るるちゃんが悲しみすぎてて草】


【気持ちは分かる】

【抱っこしたい気持ちは、よーく分かる】


【でも、これじゃ全然進まないからね……】

【うん……】

【るるちゃんたち、まだほとんど進んでないもんね……】


【えみちゃんたち先頭組は、もう3階層に突入してるのにね……】

【ハルちゃんたちと今の2人を待ってた最後尾の部隊の人たちも、数分間立ち尽くしてたからね……】

【草】


「ほら、押して良いですから行きますよ、るるさん」


「……元気になったらまた抱っこする」

「無理では?」


「そのときは私が代わります!!」


「リリちゃん、ハルちゃん起きちゃうって!」

「いえ、起きておいてもらった方が本当は良いですからね?」


「くう……くう……」


ふよふよと浮く「イス」は、その存在感を飲み込んだら――完全に乳母車になっていた。


【すやすやハルちゃん】

【この幼女だけが呑気に寝てる……】

【やっぱりハルちゃんが居ると普通の攻略配信にならないね……】


【でもかわいいよ?】

【ならもういいや……】

【草】



【●REC】



【ほら、ノーネームちゃんも夢中だし】

【ノーネームちゃん、順調に俺たちを学習してるな】


【ノーネームちゃんがハルちゃん巻き込んだんでしょ?? もうちょっと急かしたりしよ??】


【お前、こんなにあどけない幼女の寝顔を邪魔するのか!】



【同意】


【強】


【同意】



【ごめんなさい】

【草】

【ノーネームちゃんが露骨で草】


【朗報・ハルちゃんの寝顔と寝息を眺める配信のスタート】

【趣旨が最初っから変わってて草】

【なぁにこれぇ……】





「……ハルちゃん……ハルちゃん、起きて……」


「んぅ?」


なんだか新鮮な目覚めな気がする。


なんだろ……るるさんに起こされるのはいつものことだけども、こう、空気とか気配とかが違う感じ。


「あれ?」



ここ、どこ?


「……起きた……良かったぁ……」


【ぜんっぜん起きなかったハルちゃん】

【爆睡ハルちゃん】

【幼女だからね、たくさん寝ないとね】

【けどすごいな、何回も起こされて全然起きなかったし】


【寝顔と寝息をずっと眺めていられて俺たち満足】

【ノーネームちゃんも満足】



【満足】



【だって】

【なら問題ないな!】

【草】


「………………………………?」


目を開けて見回す。


……なんか人多くない?


なんで?


あ、ここダンジョンだった。


【きょろきょろハルちゃん】

【こういう仕草だけ見ると、普通に和める幼女なんだけどなぁ……】


【ハルちゃんがおかしなことやらかさないためには、こうやって寝かせておくしかない……?】


【そうかも……】

【まぁ寝ててもひと騒動だったけどな】

【うん……いつもみたいにちょっとおかしいことしでかすよりはずっと平和だったね……】


【ま、まあ、まだ低層だし……】

【初日だし……】

【扱いが猛獣かなんかで草】

【違うとでも?】


「……ここ、40階層より下ですか?」


「ええ。予定どおりに50階層の手前の階段です」


きりっとしてるから、なんだか違和感がすごいえみさん。


けども……あれ?


この子、先頭に立ってたんじゃ?


なんでこんなとこに?

ていうか……50階層?


「………………………………??」


【草】

【おめめぱちぱちハルちゃん】

【あ、普段眠そうなハルちゃんがぱちぱちしてるの、何気にレア】


【普段ってお前、この前からじゃん】

【そうだけどさ、今日もほとんど寝てたし】

【ああ……】


「ハルさん――いえ、ハル。現在時刻は17時23分。ほぼ予定どおりに47階層までの攻略を終えたところなんです」


「あ、そうですか」


きりり。


あー、今は身内扱いだから呼び捨てにするかもって言ってたっけ。

だんだんいろいろ思い出してきた。


「ご苦労様です」


【草】

【草】

【寝過ごしすぎてるのに全く動じてなくて草】


【ハルちゃん、何時間寝てたよ?】

【ダンジョン潜りたてが確か朝9時だから……】

【あの、健康に8時間睡眠してるんですけど……】


【うん……ときどき寝返り打ったりして実に健康的だったね……】

【ほら、幼女だから……ちょっとおかしいのを除けばガチ幼女だから、ね……?】

【体が思うように着いていかない幼女か……いい……】

【ああ……】


なんだか周りがぞわぞわしてるなって思ったら、広い階段を丸々占拠して護衛のみなさん……って呼べばいいのかな……が、シート広げたりして休憩している光景。


確かにここはダンジョン内のセーフゾーン周辺でのキャンプ地だね。


僕、いつも必ず隠密を最大にしてすり抜けてたから、使わせてもらったこと1回もないけども。


「47階層に中ボスフロアがあったため、こちらで今夜を過ごす予定です。モンスターはさほど湧かないはずですが、念のため夜番以外はこのセーフティゾーンの階段で睡眠を」


「あー、今日の予定、ほぼそのまんまですね。くぁ」


「う゛っ……!」


【かわいい】

【かわいい】

【あくび】

【えみママがダメージを受けている】


【ハルちゃんがかわいすぎるからね】

【今のは……うん、そういうことにしておこう……】

【8時間もすやすやしてたら、そりゃああくびも出るよね】

【ハルちゃん、もしかして昨日あんまり寝てない?】


「ハルちゃん、昨日寝てないのかってみんなが」


あ、るるさん。

君はいつもそばに居るね。


「寝てましたけど……なんていうか、朝からすっごく眠くって」


けども、やっぱり眠い。

やたらと眠い。


なんでだろうね。


【ハルちゃん、夜更かししないえらい子】

【しかし子供でも朝から夕方までなんて寝たりしないぞ?】


【ハルちゃん、もしかして緊張してた?】


【ない】

【ないな】

【あるわけない】

【そんこなことあるもんか】

【お前はなに言ってるの?】

【お前はこれまでなにを見てきたの?】

【あのハルちゃんだぞ?】

【このハルちゃんだよ?】



【皆無】



【えっと、なんかごめんなさい……】


【草】

【草】

【なかないで】

【総ツッコミで草】

【まぁねぇ……ハルちゃんがこの程度でってのはねぇ……】


眠い。

重い。


なんかほんと、今朝からこんな感じなんだよなー。


なんでだろ。


まぁ眠い以外は大丈夫そうだし、いっか。

予定じゃ、あと1週間は運ばれるだけだし。


「くぁぁ……」


【この調子じゃハルちゃん、自分が空飛ぶイスで運ばれてたって知らなさそう】


【あれってイスで良いのか?】

【SF的なリクライニングというか】

【どっちかって言うと……クレードル?】


【朗報・ハルちゃん、ベビーベッドですやすや】


【悲報・ハルちゃん、見せ場ない】


【いや、それ朗報だろ】

【そうだそうだ】

【配信もハルちゃんの寝息と寝顔実況だったし】

【実に平和だった】

【信じられないくらい平和だったな】


【お前ら、先頭でがんばってたえみお姉ちゃんとみんなのことも見てあげろよ】


【見てたよ?】

【でもね、やっぱハルちゃんは別格だから】

【「こんな娘がほしいなぁ」って思いながら応援してたよ?】


【そう思うでしょ? ノーネームちゃん】



【至福】



【ほら!】

【草】

【ノーネームちゃんが満足しているあいだは被害が出ない……つまり、ハルちゃんはずっとすやすやさせておくべきなのか……】


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― 新着の感想 ―
ノーネームちゃんがコメントの人達と大体同じこと言ってるww 椅子作った二人って多分始原の……
[一言] ベビーベッドですやすやは草
[良い点] ドラク○Ⅵに空飛ぶベッドは有りましたが、ようじょ用の反重力ベビーベッドとは……新しい!
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