726話 やっぱりひとりぼっちが最高
「……ハル?」
「なんです?」
「お母さんが……寝てるハルを襲って……? 妹を作ろうとしてた……?」
「はい」
ようやく僕の言うことを聞いてくれた姉さん。
人って、無視されるのが1番悲しいんだね。
僕、普段は無視されたがってたから知らなかったよ。
「………………………………お母さんが?」
「はい」
「え?」
「はい」
「ハルを?」
「はい」
「……襲う?」
「らしいです」
「なんで? え、いや、本当になんで……?」
「えっと……あ、そうです」
ぎゅーってされるのが緩んだからにょろりんと脱出した僕は、服を直し直しして思い出す。
「確か、僕が男だから……んで、年下だからおいしそうだからって」
「………………………………」
「びみ」
「神話の世界なら親子でのそういうのは普通だとか」
「………………………………」
「ふつう」
「親子なのにそういうことをする背徳感とか」
「………………………………」
「んぅ……♥」
「あと、そういうのを父さんに見られると燃えるとか」
「わかる」
「………………………………お母さんだ……」
「ふぅ」
「?」
姉さん、信じてくれたっぽい?
寝ぼけ眼で聞いてた、ちょっとおちゃめだけど自分の子供――肉体的にはね――に言うセリフじゃないなって感じてた冗談なのに?
【え】
【?】
【なにいってんのハルちゃん??】
【そして何を納得してるのアルちゃん】
【男?】
【??】
【誰が?】
【ハルちゃんが?】
【???】
【なんで?】
【さぁ?】
【????】
【?????】
【んにゃぴ……】
【もしかして:ストレスでとうとう性自認すら……】
【ぶわっ】
【かわいそう】
【これは深刻になってきたぞ】
【え、これやばいんじゃね?】
【やばくないとでも?】
【普通にるるちゃんたちとお風呂、入ってたよな……?】
【だよなぁ】
【ロリコンなえみちゃんを警戒してたよな……?】
【だよなぁ】
【草】
【おめかしして着飾ってもらってたし、普通に女の子だよな……?】
【だよなぁ】
【ないないされた連中により、光度を調節した薄着ハルちゃんのおまたたたたたたたたた】
【ノーネームちゃん!!!】
【草】
【ないないするってことは女の子で確定だな!】
【尊い犠牲だったな!】
【※精神が病むと、マジで自己認識が狂います】
【※脳が限界に達すると生年月日や氏名や住所すら分からなくなります】
【※起きてるつもりでも普通に幻覚と幻聴と妄想の中から出られません】
【※自分の年齢性別職業経歴が分からなくなるのは良くあることです】
【おお、もう……】
【ハルちゃんはね、かわいい女の子なの……】
【ショタよ!!】
【殺すぞ姉御、地の果てまで追い詰めて】
【今、かなりイラッとしたぞ姉御】
【お姉様? 最低ですわ】
【わりと本気の殺意を覚えたよ姉御】
【人としてどうなの? 姉御よ】
【ゴミが……】
【!?】
【姉御?? こういうマジな場面ではおとなしくしようね??】
【コメント欄が殺伐としてきたな……】
【なにしろ、実は1番やばかったのがハルちゃんのメンタルってことになってきたからな】
【1番安心できた子が、実は1番不安定……そして爆発力もまた……】
【おろろろろろろ】
【ノーネームちゃん……助けて……ちょうちょを羽ばたかせて良いから……】
「……お調子者だし行き過ぎた冗談とか言うのは、間違いなく私たちのお母さん……けど、それをハルが知るはずはないんだ……だって、お母さんはもう、とっくに……」
「だから生きてますって」
「ハル。なんにも考えなくっていいからね」
「わぷ」
「ん……」
ふたたびに抱きつかれ――今度は彼女の胸元を押しつけられる。
……こういうの、困るんだけどなぁ……小さい女の子のお胸に顔うずめるとか、犯罪だし……。
「……ノーネーム……は」
「んーん」
「だよねぇ……けど、ならどうして……お父さんに? いや、だからそんなに簡単に会える場所じゃないし……」
簡単に会えたんだけどなぁ。
………………………………。
……こうして小さい女の子だと、みんな、話を信じてくれないよね。
ひどいよね。
やっぱり僕は早く大人の男に戻りたいよ。
少なくとも大人の男が真面目に口にした言葉なら、とりあえずは信じてくれるんだもん。
「困ったなぁ」
「もう考えなくて良いからね」
「いや、ですから」
むー。
……無性に逃げ出したくなってきた。
るるさんたちのときぶりに。
そういや、そもそも僕がひとり暮らし始めたのだって元はと言えば口うるさい母さんから逃げるためだったし。
んで、会社をわざと家から遠いとこにしてストレスフリーな環境になったんだっけか。
「逃げるか……」
「ハルぅ……」
「にがさない」
【草】
【草】
【悲報・ハルちゃん、逃げる算段を立てている】
【えぇ……】
【ああうん、ハルちゃんはこういうの嫌いだよね】
【くしまさぁんから脱走した経歴があるからな!】
【お姉ちゃんは聞いてないけどノーネームちゃんは聞いてて草】
【シンプルだけど絶対に追いつく気概を感じる】
【絶対】
【捕縛】
【ノーネームちゃん?? まずはハルちゃんのストレス軽減させたげよ?】
【あとは精神科……カウンセラー……いや、そもそも女神な神族ってのに人間相手の治療が効くのか……?】
【何やっても効かなそう】
【「そんなの効きませんね」】
【お酒飲みながら言いそう】
【草】
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




