721話 おじゃるさんへ、撃ち込んだ
おじゃるさんが大きな口を開けて、この付近ごと魔力の暴力で吹き飛ばそうとしている。
「は、ハル……ダメだ! そんなことをしたら君まで――」
それを止めるには、ぎざぎざの牙だらけのお口の中から出てこようとしているのと同じ以上の圧力で相殺しないといけない。
けども僕は姉さんのことを最優先にして飛んできたから戦う用意はなんにもしていなくって、速度最優先だったもんだから両手も下がったままで。
でも――ここでやらないと、やられる。
「………………………………」
僕自身が矢となって、銃弾となって飛び込む。
そうすれば――――――いや、それはダメだ。
だって、痛いのなんてやだもん。
あとおじゃるさんのお口の中とか臭そうだし……ほら、野生動物のお口の中的な?
戦ったあとで臭くなったらやだもん。
僕は意外と清潔好きなんだ。
だから僕は、生成する。
僕が最も使い慣れた――――――コスパを度外すれば、補給が万全なら、可能なら誰かの経費にできるのなら1番お得な、使い勝手の良い「筒」を。
【ハルちゃんの前に何かが】
【光る、細長い……筒?】
【いや、あれはまさか……!】
そういえば「普通の人はそんなスキル持ってないよ」って言われた「クラフト」スキル――なんで使えるのかは分からないけども、男のときからなんとなく「あ、使えるかも」って思って小さいものから改造し始めて、やがては幼女になって心もとない機動性のことを考えて爆発の罠とかを解体して改造して背負い式ロケットまで作れるようになって。
普段使いとして使い勝手の良い銃を、ニコイチサンコイチして作り上げて。
最近はいろいろあって石ころとか弓矢とか魔力で作る弓矢とか攻撃魔法とかに頼ることも多かったけども、やっぱり僕の相棒は――――――
――――――ちゃきっ。
「おじゃるさん」
細長い、ちょっとだけごつい狙撃銃。
僕の両手は、ゆっくりと上がってその銃身と引き金にフィットする。
いつもの動き。
いつもの感覚。
それを、目の前へ突き出して。
――ぎゅるるるんっ、しゅばばばばんっ。
輪っかさんたちと羽根さんたちが飛び上がり、僕の見上げる銃口を中心に円盤を描くように展開し、高速で回転し始める。
金と白の、何十もの輪。
それが、外側から順に前へ前へと突き出されていって――ああ、これはあれだ。
ジャッジメントするときに頭の上でできあがる、りんごんりんごんって鳴る――――――
「いい加減に落ち着いて諦めてくださいね」
――――――――――――――――たぁんっ。
僕の体の奥底から銃口、その先の円環までを1本に揃えた、外付けの砲身――砲台。
おじゃるさんの玉と父さんのくれた力と、さっき飛ぶときに使った何かの残りを凝縮して作り上げた銃弾が、飛び出す。
同時に僕の意識が僕を飛び出し――銃弾ではなく、この場全体を見渡せるどこかからその軌跡を追う。
『!?』
姉さんを倒すために集中しすぎてたのか、ブレスでじゅってしようとした相手がいつの間にかに僕になったのに今さら気づいたらしいおじゃるさんと、僕の体から離れてふよふよと漂っている僕の意識の目が、ぱっちりと合う。
『――――――…………………………!!』
けれども魔王さんの動きを待つことなく僕の注ぎ込んだ力がその口腔へと侵入して内部で拡散――喉の奥、頭蓋、胃袋、心臓に相当する部位のコアを破壊していく。
『――――――――GAAAAAAAAAAA――――――!?』
それらはすぐさまに修復される。
けどもまたすぐさま破壊される。
修復。
破壊。
せめぎ合う力。
どこまでも轟く悲鳴。
何もない空間を震わせる絶叫。
「……ごめんなさい、おじゃるさん」
あんまりにも体がでかくって強くて頑丈でしつこいもんだから、きっと、君の中で暴れる僕の力は君をすぐには倒しきれない。
内部で爆発し続けて燃やし続ける、魔族が苦手な聖なる力。
彼が吐こうとしていたブレスは、けれども半分に切り裂かれ、片方は黒い宇宙空間の明後日の方向にいつまでも伸びていき――もう半分は体内で誘爆を引き起こし、連鎖的に彼の体を破壊し続けていく。
それらが飛び散っていき――――――――やがては彼の後ろに浮いていた新しい玉へ、引火。
『――――――――――――――――!!!!!!!』
輪っかさんたちが囲ってくれているおかげで、囲ってしまっているせいで――彼が自慢にしていた無尽蔵の魔力が、彼の体の周囲で暴れ狂う。
【 】
【 】
【 】
【 】
【ひぇっ……】
【壮絶すぎる】
【でも、これって……】
【やったか!?】
【おいばかやめろ】
【詠唱は厳禁だって言ってるでしょ!!】
【草】
【さすがにこれでもう大丈夫だろう】
【よし、勝ったな!】
【ずいぶん長かった25章、完!】
【お前ら!!!!】
【おいやめろ】
ごおおおおおっ。
まるで、星が爆発しているような光景。
それとも星が誕生しているような光景。
「こういうときにきちゃない袋さんがあればお酒出して、餞別であげられたんですけどね。君の配下のドラゴンさんたちも大好きだって言ってたお酒を」
「……けほっ。は、ハル……なんだよね……?」
「あ、無事でしたか姉さん」
「ふんす」
「ノーネームさん、ありがとうございます」
「ふんふんっ」
姉さんを守るために大きくなってたらしく、今は彼女を抱えながらひらひらと近づいてくるノーネームさん。
その顔は……無表情だけど、どこか自慢気だ。
「えらいですね。えらいえらい」
「しゅきぃ……♥」
「……え? お父さんの匂い……それに、お母さんのも……え、でも、2人はとっくに……」
「そのへんは後で話しますね。僕は」
事態をいまいち把握できていないらしい姉さんを置いておいて、僕はふたたびに特大の花火を見上げる。
「――おじゃるさんを、見届けないといけませんから」
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




