713話 【ハルちゃんが、戻ってきた】
「さいおし」
「いちおし」
「さいあい」
「だいすき」
「はる」
女神が、手を伸ばす。
「………………………………でぐちは、ここ」
「のーねーむは」
ごうっ。
「――――――ここ」
黒き女神が、その黒い魔力を限界まで吐き出す。
動けずに居たあいだに貯め込んだ魔力を。
黒い炎が、なにもない空間で揺らめく。
それはただの放出。
意味は、なにもない。
だが――――――
「……ぷは。助かりました」
玉の表面が、揺らぐ。
「父さんに手伝ってもらって意気揚々と外に出ようとしたんですけど、なんかいろんなとこに繋がってるっぽくって全然たどり着けなくって」
その頭上の光輪は、すでに100異常に増殖して高速で回転している。
その長い金髪は、腰をゆうに越える長さで輝いており。
「でも、急に焦った感覚が伝わってきて。たぶんこれは姉さんのでだいたいの方角が分かって」
その碧い瞳は、眠気を取り払い。
「最後に、ノーネームさんの魔力。これがあったから」
白い服を纏った、金髪の女神。
「……ノーネームさんのピンチに、間に合ったんです」
彼女は――ハルは、腕を上げる。
「久しぶりだなぁ、これ。――――――ジャッジメント」
普段のように眠そうな声でつぶやくと、光輪のたったひとつが回転しながら軌道から外れ、真正面へと飛翔していき――――――
『――――――!?』
「えっ……今の……」
直径は3キロ、長さは数十キロに及ぶ――アルに対しての攻撃に比べればずっと弱くとも、単体で大型惑星の大陸すら焼き尽くすことが可能なブレス。
その先端へ光る輪が差し込まれ……金属同士が衝突して回転し合うような高音が響き渡る。
回転により円盤となったその力は、ブレスをそのまま粉砕していく。
まるで工場の大型機械が木材を削り、藁にしていくように。
【ふぁっ!?】
【ハルちゃん!?】
【!?!?】
【ノーネームちゃんがちょうちょしてたと思ったらちょうちょしてなかった!!】
【草】
【草】
【今!いいとこ!】
【てか待って 今ハルちゃん、「父さん」って言った!?】
【あっ……】
【え?】
【もしかして:玉の中にハルちゃんたちのお父さんが居た】
【????】
【なぁにそれぇ……】
【でもハルちゃんはそう言ってたし……】
【んにゃぴ……】
【……そういやハルちゃん、最初期の話で病弱なシンパパを養うためにおにぎり1個でダンジョンに……】
【え?】
【あっ】
【もしかして:繋がっちゃった】
【繋がっちゃったね……】
【え? マジで?】
【完全に忘れてたけどそういやそうだったわ】
【養ってたお父さん、あんな玉の中に居たの!?】
【草】
【さ、さすがに違う場所じゃね……?】
【そうそう、ハルちゃん、迷ってたって今言ってたし】
【ハルちゃんが何回か通ってた、あの謎空間でワープでもしてたんじゃね?】
【あー】
【あー】
【魔法ってすごいね……】
【科学よりファンタジーだな!】
【でも……ハルちゃん、怖くなってない……?】
【頭上の輪っかが何十とかになって、全部いろんな方向に回転してる……】
【こわいよー】
【ハルちゃんの髪の毛が……あれ何メートルどころじゃなくね?】
【こわいけどかわいいよー】
【草】
【んで羽が……無数に……】
【ハリみたいに尖って全方向に突き出してるわ光ってるわ揺らめいてるわ】
【ひぇぇ】
【ハルちゃんの本来の姿ってやつ?】
【そうかな……そうかも……】
【神様ってさ、明らかに人外でどう見ても兵器としか見えないのもあるっていうよねぇ……】
【あっ……】
【ハルちゃん自身がかわいいからセーフだけど、これ、完全に戦闘兵器とかなんじゃ……】
【魔王のブレスを完全無効化させられる輪っか×たくさん+明らかにやばい羽だもんなぁ】
【ハルちゃん……まさか心まで変わってたりなんか……】
「ふむ」
じりりりりり――――――ぱしんっ。
ブレスを刻み切った輪っかがブーメランみたいに戻ってくるのを受け止める。
にぎにぎ。
「ほんのりあたたかい」
「あたたかい……♥」
「お、これ、リサイクルできるんですね。石ころよりも優秀だ」
「ゆうしゅう……♥」
【草】
【あたたかいのか……】
【よかったね】
【草】
【ああ、これはハルちゃんだわ】
【凶悪な兵器でもインストールされてるのがハルちゃんなら大丈夫だな!】
【感想がくっそかわいくて草】
【てかそれ、再利用可能なのね】
【悲報・石ころ、戦力外通報】
【かわいそう】
【石ころかわいそう】
【大丈夫大丈夫 ハルちゃんは「石ころの形検定名誉会長」だから見捨てたりなんかしないよ】
【そんなの……本当にあった!?】
【マジだ、検索したら出てきたわ】
【なぁにこれぇ……】
【あー、スリングショットとか斥候職、その他ハルちゃんのおかげでブームになった団体がこぞって勝手に祭り上げてるのね】
【ハルちゃんガチで神様だし恩恵ありそう】
【草】
飛んできたノーネームさんが飛びついてきて――そこで僕の髪の毛が足のずっと下までゆらゆら浮かんでるし、羽がものすごく長くなってなんか光ってるのとか、輪っかさんたちが無数にあるのが目に入る。
こんなの僕、知らないんだけど。
これってまるで、るるさんたちとの買い物で「シンプルなのでいいです」って頼んだのにフリルとかアクセサリーとかマシマシにさせられたときのあの感じなんだけど。
やめてほしいなぁ……勝手にオプションパーツつけるの。
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




