708話 義理だけど実の父さんらしい
『けどなぁお前……いくらなんでもお前……俺たちからすりゃあ、こんな赤子同然のに手を出そうとなんて……しかも義理とはいえ実の子供になんて……お前……』
『え、そっち!? 貴方が見てる前で不倫しようとしたことに怒ってるんじゃないの!? 嫉妬の炎じゃなくって!?』
『呆れてるんだよバカ』
『ひどい!!』
おかしい。
僕の目の前でコントが始まっている。
ていうか「赤子」とか「不倫」とか「手を出す」とか、もしかして昼ドラ展開ってやつ?
僕が小さいころは母さんが大好きでテレビにかじりついてたから一緒に観てたけど、何が楽しいのかさっぱりだったやつ?
何の話してるのかはさっぱりだけども、母さんなら楽しめるやつ?
『……こいつがアルの同位体、しかも人間のか?にしてはずいぶんマトモだな』
「そうなんですか?」
『ああ、コイツに絡まれて動揺してない時点でな。素直に驚嘆に値するぜ』
「へー」
なんだか知らないけど褒められた。
僕はなんだかとても嬉しくなった。
『……おう、お前の色仕掛け、たった今出てきた俺の一言より効果無かったってよ。マジで』
『ひどいわハルくん!?』
よく分からないけども、ひとまずとして気分屋らしい自称母さんは、マッチョさんに弱い……いやこれ、単純な思考だからかな。
『長生きすりゃあアルよりも大物になりそうだな……いや、今でもすでにか。見た感じ、作戦とか1から100まで全部自分で決めて末端まで指揮しないと納得しないアイツとは真逆だしな』
『アルちゃんはかわいいでしょ!!』
『ツラもガワもおんなじじゃねぇか……』
『どっちもかわいいの!』
……なんだかるるさんみたいな印象が濃くなってきたね。
普段ならえみさんや九島さんがセーブしてくれるところをセーブしなくって、リリさんと一緒にきゃっきゃしながら僕の髪の毛を三つ編みにしたりお団子にしたり好き勝手してくる、あの感じ。
……あ、そういえば。
「姉さん――アルさんの親どころか神族って種族は数千年前に滅びたって聞きましたけど、本物なんです?」
『滅びてないわよ!?』
滅びてないらしい。
良かったね姉さん、あとノーネームさん。
『正確には、当時幼かったから魔力を辿られずに逃げ延びることができたアルとノーム……そして破壊される寸前だったが魔王も魔族もみんなぶっ倒して、だがやけに元気なのが出てきたから死んだ演出してなんとか隠れきった、俺。そのへんが生存した純粋な神族――まぁ人間のお前さんからしたら神様って認識で良いだろ――だ。残りの奴らは魔族と戦って、文字通りに対消滅したってこった』
「そうなんですか」
僕とそっくりな姉さん、アルさんにノームさん――ノーネームさんのことだろう――そしてマッチョさん。
それだけが、生き残り。
つまり……。
「その人は恋愛結婚で新婚ほやほやなときまではラブラブだった奥さんで、でも旦那さんが毎日残業と接待、休日はゴルフでずっと家に居なくなって話す時間すらなくなって熱が冷めて、けども熟れた肉体を持て余したせいで目に着く男は片っ端から粉かけていく三十路の専業主婦ですか」
『……やけに具体的だな』
「こういうの、母さんが好きだったので」
『私はそんなどろどろしたのは好きじゃないわハルくん!』
「違います、僕の母さんです。産みの方の。自称第2母さんじゃなく」
『「自称第2お母さん」って何!? それって私のこと!?』
「違うんですか?」
『ハルくーん!?』
『……クハハハハ! お前、やっぱおもしれーわ! あー、やっぱお前はアルの同位体――つまりは双子とかに近い存在ってやつだ! クハハハハハ!』
なぜか自称さんが泣きついてこようとしていて、それを押しとどめてくれてる優しいマッチョさんが爆笑。
おじさん――って言うのは失礼だ、それだと元25歳成人男性な僕もおじさんと呼ばないといけないことになって心がちくちくするんだ――お兄さんは、声がものすごく大きい。
彼が筋肉隆々な腕で筋肉隆々なふとももをばしばし叩きながら笑ってるせいで、とにかく音量はうるさい。
……けど、なんでだろう。
この人の発している音だって思うと、そんなにうるさいとは感じない。
なんでなんだろうね。
『……あー、笑った笑った。マジでこんなのは消滅しかけたあの戦い以来だわ』
『もうっ。お母さんって言ってハルくん!』
「母さんはもう居るので」
『まぁそう言ってやるな、アル――じゃなくて、ハル。お前の今の肉体……アルのそれをコピーした複製の体は、元をたどりゃコイツと俺が親なんだからよ』
「そうなんですか」
『おう。つまりは義理だが血の繋がりってのがあるパターンだな』
「へー」
『私がおなかを痛めて産んだのよ! 認知してハルくん!』
「あなたに産んでもらってませんし、その言い回しはひたすら卵を産んで認知を迫ってくるっていう、元ドラゴンなくっころさんっていう人とかぶるのでやめてください」
『何その痴女!? 泥棒猫はお母さん許さないわよ!』
『お前……』
ああ。
いいな、こういうの。
何が良いって――暴走状態のるるさんみたいな人から僕を守ってくれる人が居る状態が。
それが、僕の父さん――男として生まれた方のじゃなく、TS幼女としての方のだって思うと、なんだかほっとするんだ。
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




