707話 僕は修復されたらしい
『……くーん。おーい、ハルくーん。襲っちゃうぞー、夢で勝手に孕んじゃうぞー、ニュージェネレーションな神話産んじゃうぞー』
ゆさゆさ。
僕の眠りが阻害されている。
「んぅ……」
『……ほ、ほんとうだぞー。お母さんでも息子を襲っちゃうぞー、見境ないぞー、なにしろ神話時代出身だからねー』
「んー」
『や、やれるんだぞー……ハルくんは男の子だから、女のお母さんと魂くっつけたらすぐだぞー……』
なんだかうるさい。
僕の全力を込めてまぶたを1ミリくらい開けてみる。
『…………!!』
この1年間――幼女になってからるるさんに捕獲されるまでの期間――鏡で毎日見てきた僕の顔からしてちょうどお母さん、あるいはお姉さんって感じの女性の顔が、どアップで映っている。
「くぁぁ」
『 』
けども僕は金髪幼女な僕の顔に慣れてるし、以前から別に綺麗な人相手でもなんとも感じないし、自称母さんなら自称家族ってことで、つまりは心を動かす必要なんて一切にないんだし。
そうだ、母さんだ。
部屋でごろごろしてるとドアを勝手に開けて用事を言いつけてくる、僕を産んでくれたくせに僕とは全然違う精神構造をしている母さんがいくら綺麗でも、なんとも思わない。
なんなら安心するだけ。
そうか、この人は母さんだったのか。
そう認識した僕は、もう1回うとうとし出した。
母さん相手なら、ちょっとうるさいくらいほっとけば良いもんね。
布団むしられるくらいなら別にどうだっていいや。
『……これは同意……魂をまぐわ――交わるって言っているのに、欠片もガードしていない……つまりは誘い受け……無知シチュ……いえ、知っていてもどうでも良いタイプの極上の……いえいえさすがに待つのよ私、いくらなんでも神族全体が爆発四散してノームちゃんたちと夫以外が絶賛再構成中で現在の暫定第一位階が、ちょっと理性を解放して貪るだなんて……で、でも、魂は幼いけど青年くらいにはなっている、子を成す本能については赤子も同然とかいう純粋にもほどがあるショ――男の子そのもので、とてつもなく良い匂いがするくせ警戒心はゼロだし、これ絶対無理やりしてもそのまま受け入れて……じゅる……いえ、ダメよダメダメ、仮にこれがアルちゃんとノームちゃんにバレたら、せっかく数千年ぶりに感動の親子再会できるはずが数十万年絶縁状態に……!』
「くぅ」
ああ。
やっぱり昼寝は最高だ。
◇
『くっ……もう少し私に、勇気があれば……!』
「よく分かりませんけど、こんな場所で勇気が必要なことあったんです?」
あんまりにもそばでもぞもぞもじもじぶつぶつほわほわされるのに疲れた僕は、目を覚ました。
『……はぁ……ハルくんの魂と肉体は修復完了しといたから……圧縮された世界に飛び込んじゃったのもあって結構欠けちゃってたとこも補充しといたから、元の場所に戻れば状態異常が回復してHPもMPもフルで行けるわぁ……はぁ……』
「よく分かりませんけど、ありがとうございます」
体を起こして羽をぱたぱた、輪っかをつかんでしゅいんって1回転。
「よく分かりませんけど、元気になってそうですね」
『……ハルくん、感覚派なのね』
「よく言われますね。僕自身は極めて頭脳派だと思うんですけど」
しいていえば職人肌。
好きだから良く見るドキュメンタリーとかで、たったひとつの作業を自分が納得するまで何時間でも何日でも何週間でも平気で楽しくやってるおじさんたち。
僕は彼らを尊敬しているんだ。
頭脳派、けどもそれは試行錯誤の果ての肉体そのものが精密機械となった存在なんだ。
だから僕はダンジョンで寝泊まりしたりキノコ採りしたりしてたんだ。
おすすめはキノコスープだよ。
『……何処の世界<宇宙>に、生まれたての新しい息子を食べようとする母親が居るんだ……しかも俺が見てると知りながら。ああいや、居るか……暇を持て余した連中はひととおりのことをやるからなぁ……倫理観が無い修羅の時代も、その後の平穏すぎる時代も……だからさっさと神族共々地上から引き上げさせたってのになぁ』
『あら、あなた♥』
『「あら」、じゃねぇぞ馬鹿野郎』
『妻よ!』
『チッ……コイツ……再構成すんの、最後にすりゃ良かったか……』
『今、舌打ちした!?』
「ん?」
なんだかとてつもなく大きな声と気配がして――けども嫌じゃない感じのそれが、自称第2の母さんの横に立っている。
男の人?
僕の仲間?
「そちらはどなたで?」
『………………………………』
「?」
金髪碧眼のまっちょなおじさん――みたいな雰囲気だけど20代くらいで、隣に立つ第2母さんとお揃いの雰囲気だ――が、僕を見ている。
第2さんや僕と同じく白い布を着てるだけだけど、胸元がはだけているからかっこいい胸筋がかがやいている。
僕たち男は細マッチョもいいけど、やっぱりマッチョに憧れるんだ。
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




