635話 「この世界の真実」
「んくんく……けほっ。んくんく……」
お水がおいしい。
お酒のせいじゃなくて、たくさんしゃべったあとに良く染みるあの感じ。
「ふぅ……」
けども……うーん?
なんだか知らないことをでまかせでぺらぺらと……こんな妄想してたかなぁ、僕。
あるいはネット上に広がってる、ダンジョン関係の妄想――一般人の妄想から学者さんの深遠な考察から、はたまたは陰謀から。
そういうのをたくさん読んできたからかなぁ……まぁいいや。
【今……】
【うん……】
【ずっとしゃべり続けてたね……】
【どこも見てなかったよ、ハルちゃん……】
【それに気づいてない……?】
【ハルちゃん……早く戦い終えて戻ってきて なんか怖いよ】
【ハルちゃんが別人になった気がして】
【いかないで】
【るるちゃんのとこに戻るって、約束したじゃん】
【忘れないで】
【このまま、ふらっとどっかに行っちゃいそうで……】
【……記憶を取り戻したハルちゃんってさ 今のハルちゃんとどこまで一緒なのかな】
【やめて やめて】
【で、でも、人の性格ってのは基本的にそうそう変わるものじゃ……】
【忘れたのか? ハルちゃんたちは数千歳だよ?】
【あっ……】
【地球に来てから?記憶を失ってたんなら、長くても11年……それと、その前の長い時間を比べたらな……】
【ひとまず、ハルちゃんが話してくれたことを整理してみよう】
【この世界は、俺たち地球人類――生物が利用しているエネルギーよりも、はるかに効率的なエネルギー――魔力を利用している生命体が居て?】
【それがモンスターで……そうだ、モンスターの大半は「内臓が無い」から、倒したら魔石になる――「魔力だけで構成された生命体」なんだ】
【ハルちゃんが謎の地下で出会った謎のモンスターたちはスプラッターにはなってたけど、あれくらいだよなぁ内臓あったの】
【あれだけが謎だけど】
【ひょっとしたら魔力じゃない、地球と同じ環境で独自進化したモンスターなのかもね……】
【で、魔族ってのは、モンスターの中で進化して知性を獲得したものの呼称……魔力で生きる人間、いや、知的生物】
【地球だって、たまたま猿人類から進化した人間だけしか居ないけど、別の世界なら人以外が進化して……ってのも考えられてきたし】
【SFとかファンタジーでは当たり前になったくらいに、普通の人でも受け入れられる考えだしな】
【世界が無数にあるんなら、ハルちゃんが戦ったケットシーとかコボルトみたいに、二足歩行するわんにゃんから進化した人間も不思議じゃないよな】
【神族ってのは、魔族と意見の違いで別れただけの、元々は同一存在?】
【つまり、元はモンスターなのか】
【でもハルちゃんたち、羽以外は完全に人間だよ?】
【そうじゃないのも居たかもな 魔族ってのがドラゴンだけじゃないのと同じように】
【たまたま似たような見た目に収斂進化ってのをしただけかもな】
【人間と同じ見た目のハルちゃんが地球に来たのも、たまたまかもだしな】
【で、魔王ってのは、魔族――魔力の知的生命体の中でも、特に強い存在】
【モンスターってレベルと強さ別に進化するから、それぞれのモンスターの最上位個体って感じか】
【なるほど】
【ああ、ネコ科の頂点がお猫様みたいな】
【ああ、イヌ科の頂点がわんこみたいな】
【あ?】
【お?】
【お猫様はおバカ犬たちより余程賢いんだが??】
【わんこは駄猫みたいに恩知らずではないのだが??】
【お猫様はだな、駄犬と違って進化の頂点なんだが? ライオンとかヒョウとかと分岐したイエネコ様たちは、オオカミからプライドなんて投げ捨て餌欲しさに媚びたお前らとは違うんだが??】
【はっ、これだから駄猫は 良いか? わんこは忠義を尽くすんだ どこかの「寝子」みたいに食っちゃ寝する生活を「自分たちが偉いから捧げ物をもらうんだ」とか傲慢な考えなど発想になく、共に厳しい世界を生き抜く友としての道を選んだんだが??】
【はー? ネズミとか鳥とか虫とか、人間たちが嫌がる侵入者を始末してやって、でかいくせに怖がりで狩りが苦手なあいつらにくれてやってるんですけどー?】
【大半が家の中から1歩も出ずに、せいぜいが生涯で数回程度、しかも自分よりはるかに小さい雑魚を狩るくらいで何様のつもりなんだか こちとら数千年のあいだ、人間たちと協力プレイででっかい獲物を狩り尽くしてやったんだが??】
【ほーら毎回長文じゃなきゃ反論できない 所詮は家畜なんだよ駄犬】
【思い上がるのも大概にしろ駄猫】
【あ?】
【お?】
【やるか? 猫パンチで泣かしてやろうか? ご主人様の手前、反撃なんてできないんだろ? よわよわだからさ???】
【こちとら普段は我慢してやってるだけで本気を出せば一瞬だぞ?? 処す? 処す?】
【草】
【草】
【まーた変な喧嘩してる……】
【この書き込みにも、もしかしたら紛れているかもな……お猫様とわんこの最上位個体が】
【こわいよー】
【ときどき、明らかに違う世界の記憶持った書き込みとかあるしなぁ……】
【俺たちは見張られているかもしれないのか……】
【ああ、お猫様がキーボードの上に】
【あ、わんこが起きた 唸ってる】
【草】
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




