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617話 でっかい魔王さんが来た

『魔王様』

『貢ぎ物があります』

『来てください』

『お願いします』


一つ目さんたちがその場で這いつくばって――このダンジョンの奥のほうへお祈りをしている。


『まおう』

『こわい』

『かくれる』

『めが……も、かくれる?』


「……いえ、大丈夫です。あなたたちはしっかり隠れてくださいね」


――風が吹き始めた。


ダンジョンの中なのに、強い風が。

それから逃げるように巨人さんたちが岩場へ身を寄せていく。


「………………………………」


魔王。

魔の王。


それが何回もごんっしちゃったあの人じゃなければ、魔王さんは複数居ることになる。


「今度の魔王さんが意地悪じゃなければ良いけど……」


そうでないと、祈ることしかできないんだ。


【おのれG!】

【爬虫類、爆発四散せよ】

【炭火焼きだよ?】


【お、近所の焼き鳥屋に人が集まっている】

【うなぎ屋へも押し寄せているぞ!】

【草】


――――――――ずん。


ダンジョン全体が、揺れる。


……これが、魔王の――――――――


『――フェアリー、危ない』

『俺たちの命より、大切』

『守る』

『魔王様、強すぎる』

『弱い存在、消し飛ぶ』


――ばきっ。


天井へ亀裂が入る音。

同時に、僕を覆う影。


……なんだ。


「君たちも、力をもらっちゃって賢くなったせいでいじめっ子になっていたけど……まだ、人なんじゃないか」


たとえ宝物が壊れるのを心配していたとしても、それでも自分たちの体でちっぽけな僕を守ろうと、盾になっている。


――風が強くなってきた中、何人かの一つ目さんたちが同じようにして、逃げ遅れている巨人さんたちを守っている。


その途中で、大きい体がふわりと飛んで行くのを見て……僕はそう思った。


【ハルちゃん……】

【ぶわっ】

【「人」への判定が甘すぎるよハルちゃん……】


【でも、そうだよな  もともとひとつの種族だったんなら、前は同じだったんだよな  それに差をつけて支配してきた魔王の方が「悪」だよな】


【他でもないハルちゃん自身がそう言っているんだ  巨人さんたちの巨人さんたちもまた、人だよ】

【ああ……!】


『――――――――無礼極まる被造物よ』


――ごおっ。


「……っ!」


『守る』

『怒らないで』

『熱い』


鼓膜が裂けそうな空の底からの声と同時に――ブレス。


『熱い』

『ごめんなさい』

『許して』


――視界の隅で魔石になっていく、一つ目さんたち。


『少しばかり朕の魔力を与えてやっただけで、矮小な下等種族が朕を直接呼びつけるか――――――――絶滅を求めるや否や?』


亀裂から入ってきたブレスで天井が泡立ち――一瞬で蒸発し。


その先――上には、


【      】

【      】

【      】

【      】


【ひぇぇ】

【なんだよこれ……】

【え? これって】


【ないないの途中で見た……】

【あの、ダンジョンの上に宇宙があるんですけどぉ……?】

【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】


満点の空。


きらめかない星々の、無数の光。

それを、でっかい黒い影が覆っている。


『述べよ。朕は寛大である』


『フ、フェアリーを発見した!』

『魔王様、探しているって言った!』

『すぐに知らせる、そう言った!』


『――――――――妖精種だと?』


ぴたり。


肺を焼きそうな熱波が収まり、急に寒くなる。


「……僕です」


巨人さんたちのそれよりもずっと大きい手のひらで囲まれていた僕はそろそろと抜けだし――ひらひらと、舞い上がる。


『ほう……』


――――――――ぬっ。


【うわ】

【でけぇ】

【でっっっっ】

【……Gの何倍あるんだ、こいつ……】

【こわいよー】


まるで――この前の魔王さんが赤ちゃんみたいだなって感じるくらいの、大きすぎる顔。


龍の顔。


その両端に光る、爬虫類のおめめ。

その手前に――僕のすぐ前までぐいっと伸びてきている、長い鼻。


「あなたが、魔王さんですか?」


『………………………………』


それは、僕をじっと見ている。


――しゅいんっ、しゅいんっ。


それと僕のあいだに――僕の全身がすっぽり収まるサイズの魔法陣が何十と出現する。


「………………………………」


……これが攻撃を目的としているものなら、僕はすでにおしまいだ。


だから、抵抗しない。


ただただ、その大きすぎる存在のことを――やっぱりドラゴンってかっこいいんだな、そう思いながら眺め続ける。


『……ふは……ふははははははは………………………………!』


「わぷ」


『フェアリー、大丈夫か』

『魔王様、怒らないで』


――それは、ワニみたいなでっかいお口と無数のギザギザした歯を見せびらかしながら、熱いけれどもさっきよりはずっとましな息を吐き出しながら、笑い出した。


……バレたかな、僕が妖精さんじゃないってこと。


『……墜ちし神々の被造物よ。よくやった――褒めてつかわす』


笑いを収めたそれは、一つ目さんたちへ――初めて視線を向ける。


『これは、妖精種などではない――――――――神族、滅びた神々の末裔。朕を呼びつけた無礼、許す』


【ふぁっ!?】

【悲報・やっぱハルちゃんの種族、滅びてた】

【ああ……】

【ノーネームちゃんが見せてくれたあれは、やっぱり……】


【てことは広い世界全体では天と魔の戦い?は、魔の勝利で終わっちゃってるのか】


【そんなぁ】

【でも、魔王が気軽にポップしてくる時点で……】

【え、じゃあやっぱ確率で魔王とかがダンジョンの中から……】

【おろろろろろろ】

【こわいよー】


「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」

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― 新着の感想 ―
流石に魔王相手だと妖精で通らなかったかぁ 現状だとGよりヤバそうだし、この先がどうなるか楽しみです!
魔王が採れる洞窟ってすっごいチョロそうなイメージw
ヒエッ…Gよりも色々知ってそうだけどヤバさも極まってそう…
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