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【2巻予約受付中・25/10/20発売】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~  作者: あずももも
5章 みんなとお別れするまでの、つかの間のお休み

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61話 僕の抱きつき攻撃でリリさんは気絶なループ@相部屋

「?」


すっごくよく寝た僕は、なんだか嗅ぎ慣れない匂いで目を開けた。


なんか滅多にない爽快感だけど何か疲れるようなことしてたっけ?

そう思いながら、ぱっちりと空けた目の前には……あれ?


「りりしゃん……?」


「!?!?!?!?」


てっきりるるさんだって思ってたけども、この子、どう見てもあの子だよね。

ダンジョンで会った、聞き分けの良い子。


「ふぁ、りりしゃんだいじょうぶだったんだぁ……くぁぁ」


「………………………………!!!」


眠い。


そういえば前に、えみさんが「ハルさんの寝起きは破壊的なんです」とか言いながら悶えてたことあるけど、どうやらこの体、起き抜けすぐは微妙にもどかしい感じになる。


本来の僕は寝起き抜群なはずなのに、この体は追いついてくれないんだ。

このへんは子供の体なんだなって実感する。


一方でなんとなくぼんやり見るリリさん――で良いんだよね?――っていう、色素が薄くて儚いはずの顔が、一気に赤くなってくる。


「おねつあるの……だいじょうぶ?」


まだ寝起きでろれつが回らないからか、いつも以上に幼女っぽいしゃべり方になってる僕。


この体の唯一の弱点、体力の無さとバッテリーの切れの早さ……おんなじか。


とにかく眠いとどうにもならないのは脱出のときも感じたし。


あれ?


あ、僕、ダンジョンの中で飛んだんだっけ。

あのあとどうなったんだろ。


「りりしゃん……?」


『あの……あの憧れのハル様が、こんなガチ恋距離で……』


「え?」


なんか今聞き取れないワードだったけど僕のこと呼んだ?


「……きゅう」

「あ」


彼女はそのままふらっと倒れ、ぽすっと自分の枕に頭を沈めた。


よく見たら僕たち、隣のベッドだった様子。


え?

なんで?


ああいや、運んでもらったんだろう。

この子と相部屋なのは謎だし、ベッドも隣なのが謎だけども。


「んー……」


でもなんか寝ちゃってるし、この子のことはとりあえずいっか。


それにしても、ここはどこだろ……いや病院だろうけどさ。

僕は髪の毛がぶわって広がるのを感じながら見回す。


こういうときにふと「髪の毛切ろっかなー」っていつも思う。

でもめんどくさいからいいや。


周りは白い壁、天井も白い感じ。

ベッドは僕たちの2つがなぜか隣同士、っていうかくっついてる。


相部屋ってこういうもの?

僕、初めてだから分かんないや。


ま、僕たちはおんなじ事件で運ばれたんだろうし、僕たちの肉体的な性別はおんなじだし、僕たち顔見知りだしって病院の人とかが気を利かせてくれたんだろう。


それに多分るるさんたちも運んでくれたはずだし、つまりこの子と一緒でも問題ないって判断のはず。


僕のいろいろは九島さんに丸投げしてるはずだから、できるまじめさんな彼女が判断したんなら大丈夫だよね。


だって僕、寝てただけだもんね。


あ、それともリリさんが頼んでくれたのかな?

いや、るるさんが運んでくれた感じがする……何となくだけども。


いずれにしても良かった、この子も無事で。


……この子もまだ相当疲れてるらしく、顔を枕にうずめた感じで寝ちゃってるからちょっと息苦しそう。


「触りますよー……よっと」


ベッド同士がころころ寝転がりながら移動できる感じになってたから、僕はころころ寝転がりながらリリさんの真横に、それでぐいっと押してあげて……あ、枕から頭が落ちた。


「ふんっ。……重いからいいや」


寝苦しいかもだから持ち上げて乗せようって思った彼女の頭は普通に重かった。


だからごろんってなった彼女は頭だけがちょっとななめに。

ま、まあ、僕がんばったから……ね……?


けども、魔力ほんっとなくなってるんだ……だから補助使えなくって、幼女な筋力なんだ。


肉体的に成人男性から幼女になっても違和感も不便さも少なかったのは、魔法で筋力強化とかできてたから。


にぎにぎとする僕の手はいつもよりちっちゃく見える気がする。

魔力っていう特別な力が、今は使い切っちゃってなくなっている。


つまり、今の僕は普通の幼女。


歩けばちょっとの段差ですっ転ぶ、階段は手すりか壁を頼りにかに歩き、高いところには全然手が届かない、その他いろいろと低身長低出力低単価な感じだ。


それも維持費は1日で400円……おにぎり3つのお買い得。


自炊ならもっともっと安いよ?


「あ――……」


知らない天井をぼんやりと眺める。


病院。


あんまり覚えてないけども、多分お手製の脱出装置で眠くてむしゃくしゃしながら落ちた穴を逆走したはず。


で、多分るるさんっぽい子が見えて、それで。


「心配……かけちゃったなぁ」


しょうがなかったとはいえ「呪い様」っていう――るるさん、あの子が1番気にしてるやつだろう原因での崩落。


あの子が気にしないはずはないよねぇ……後で撫でられてあげよ。


「好きなだけハグして良いですよ」って言えば大体機嫌直るし。


女の子ってちょろい。

えみさんはそう言ったら気絶するくらい喜んでくれるからもっとちょろい。


でも、良かった。


「きゅう……」


赤かった顔がだんだん引いて行く、隣で寝てる女の子――リリさんの顔を、なんとなくでのぞき込む。


通訳さんな人たち連れての腕試しだったんだろうこの子は、たぶん、いいとこのお嬢さんな子。


幸薄系美人さんって感じ?


でも僕には敵わな――いやいや僕は負けた方が良いんだ、「この子の方がかわいい」って思っとかないと僕の心がやばい。


とにかく良かったんだ、この子を無事に助けられて。


……急がなくても良かったっぽいし、なんなら僕が来なければ――るるさんの「呪い様」ってのが来なかったはずだから、もっと平和だったんだろうけどさ。


「くぁぁ」


眠い。

寝よう。


僕はまたとろけるような眠気に――いつもの昼寝みたいに、手近なあったかさに身を寄せて落ちた。


あれ?


なんか普段と違ってちょっとだけ柔らかい……。





『ごめんなさ――あひゃぁっ!?!?!?』


それから1時間ほど、次に目を覚ましたのは「リリー」と名乗った彼女。


長い銀髪と蒼い瞳の彼女は、なんだか素敵な夢を見ていた気がして良い気分で起きたところ。


そうして妙に首の痛い体を起こして、ふと温かくて小さくて良い匂いのする感覚に視線を落とし。


彼女が「ずっと追いかけていた相手の愛くるしい姿」が――よりにもよって彼女自身にしがみついているのを知覚して、


「はるさま……きゅう」


もう1回気絶した。





「……はっ!?」


次の復帰はわりと早く――慎重に起きた彼女は「ハル」と呼ばれている「幼女」が、自分に真正面から抱きつくようにしてすやすやと寝ているのを確認してもう1回意識を手放しそうになった。


『……いけないいけない……協定を守らないと……』


母国語でつぶやきながら、慎重にその小さくて柔らかくてぷにぷにとしている手をものすごく名残惜しくも解いていく。


――「彼」への無断接触は「始原」協定違反。


『……でも今回私は気を失っていて、彼が抱きついてきてくれたから』


「うへへぇ……」


『あっ、尊――きゅう』





『こ、今度こそ』

「もむもむもむ……」


『な、何かを食べる夢を――きゅう』





『まるで本物の子供のように私の胸に顔をうずめてきゅう』





意識が戻り、「次こそは」と心に決めてから目を開いた彼女は、


「      」


目の前30センチにあった幼い顔を見て気絶した。





『……沈静化。ふぅ……ダンジョン外ですとあまり効かないのですよね……』


そのあざといまでの幼い魅力にKOされた彼女は意識を失っては目を覚まして、目の前のそれにまた気を失うというループを繰り返して何回目。


目が覚めるたびにしがみつく幼女のしがみつきっぷりが変わるため、新しい感触で落ちるループは天国であり地獄だった。


そんな「リリー」な「リリさん」は周囲を見渡し、自分の私物がベッドサイドに置かれているのを確認する。


――私も、彼のリストバンドで地上に転送されてすぐに気を失ったのね。


そうして手に取るスマホにはたくさんのメッセージ。


それらを操作し、まず先に繋がった先に伝える言葉は、


『……「会長」様。私、誓って。私からはハル様に手を出していませんからどうか除名だけは! 制裁は受けますからどうか……あ、はい。え? 監視カメラ? ……あ、はい』


英語に切り替えての会話を始め、すぐに天井の隅を見上げた彼女は――病院だから当然だが、監視カメラを見る。


――今のもあの人たちに見られていた……いえ、当然でしょうね……。


しばらくやり取りをした後に「じゃあ歩けるようになったら招集ね」という残酷な宣告を聞き……それからは彼女の家の者へ電話を掛ける。


『……ええ。ですからご安心を。みなさまにも――』


「……りりしゃん?」


『!?!?!?!? ……またご連絡差し上げます!!!!』


ぴっと切ってばっと振り返った先には、リリの声で目を覚ましたらしい彼――「ハル」の姿。


彼はあのダンジョンで見たように日の光で輝く長い金髪を体にまとわりつかせ、彼女と同じ蒼い瞳は眠そうで小さい口は子供的な健康さを纏い、市民向け――カジュアルの中ではそこそこのブランドのシャツにスカートを……そのシャツは寝相が悪かったのかはだけていて胸元が見えておりスカートに至っては完全にふとももがむき出しになっていて、その下の白いレースの


「きゅう」


「え?」


ぱたりと、気絶した。





「くぁ」


この子も魔力使い切ったみたいだね。

こんなにも眠そうだし。


じゃあやっぱ早く助けて良かったんだ。

そう思い込んでおこっと。


僕がもっかい起きたらもっかい気絶したリリさんをもっかいそれなりな感じに寝かせて、そっとベッドから降りる。


「ふぁぁぁ……」


たくさん寝たらなんかちょっとテンション上がってきた。


だって僕、病院とか初めてだもん。

あ、いや、近くの病院とか会社の健康診断とか以外でってことでね?


白い壁、消毒的な匂い、無機質さ。


男ならテンション上がらなくてどうするのって感じ。


……ヒマだし、ちょっと見て回ろっと。


別に点滴とかぴっぴっとかなるやつとかついてなかったし大丈夫だよね。


でも病院の人に迷惑掛けちゃわないようにって、隠蔽はほぼ切った状態でがらりと扉を――引き戸なんだね――空けた僕は、ちょっとした探検に出かけてみた。


適当にぶらつこう。


あと病院の売店ってなんか興味あるし。





【ハルちゃんの天然さは凶悪】

【凶悪過ぎてハルちゃんと一緒に寝るとか言ううらやまけしからんことしてたあの子も10回くらい撃沈】


【そりゃあそうなるよ】

【そうなるな】

【ずるい】

【いいなぁ】

【ハルちゃんからしがみついてて……そうじゃなかったら今ごろ……】


【しかしあのムーブはやはりレギュレーション違反では?】


【処す? 処す?】

【あやつの動きはギリセーフ  ギリでハルちゃんに自分から接触してなかったから】

【あと1ミリ指を近づけていたら……口惜しい】


【気絶中に無意識で抱きしめ返したりはしてたけど、残念なことに意識があるわずかな時間はむしろ距離取ろうとしてたからな、非常に残念なことに】


【鉄壁の理性  なかなかできることではないな】


【チッ】

【チッ(殺意】

【ねえ、やっぱやっちゃおうよ】

【待て、証人喚問してからだ】

【そうだな】


【というか、なんでハルちゃんの盗撮してるの?】

【盗撮ではない、経過観察だ】


【だってハルちゃんの配信切れないんだもん、しょうがないんだもん】

【そうだもん、だからなぜかカメラが監視カメラに接続されてるんだもん】


【これも全部ノーネームってやつのせいなんだ】

【「様」を付けろ、でこ助野郎】

【人間のせいじゃないから俺たち始原もセーフ】

【なんでまた俺たちだけ繋がってるんだろうな】


【ノーネーム様の粋な計らいってやつよ】

【ノーネーム様好き】

【ノーネーム様愛してる】


【ノーネーム様、もっと画質良くならない?】

【ノーネーム様、ダンジョン協会と交渉しない? お互いに良い取引ができそうだよ?】

【ノーネーム様の扱いが雑になってきているぞ】


【でもさ、リリちゃんはともかくハルちゃんのはだけた姿とか犯罪級なんですけどー】


【見たからには同罪な?】

【そんなー】


【ハルちゃんのあんな姿見たら何でもする気になってきた】

【俺たちだけの秘密  俺たちだけの宝物……】


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― 新着の感想 ―
ハルちゃんの破壊力ヤバい! リリさん始原の一人だったのかww 撮れた映像は永久保存よのぉ
[一言] ノーネーム「全員(りりしゃん以外)極刑に処します 強制転移500層 生命維持等の処置により特定エリアから出なければ死ぬことはありません」
[一言] つまり、ノーネーム様は実質始原だった…?
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