表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
595/639

595話 【速報・えみちゃん、聖母だった】

【速報・ハルちゃんだけじゃなくノーネームちゃんも人助け】


【何百回も、誰にも褒められずにひとりずつ助けてきたハルちゃん、そして人知れずないないしてたくさん助けてきたノーネームちゃん……】


【双子だもんね】

【行動原理もそっくりだね】


【2人とも、去年まで誰にも知られずにな】

【どころかたぶん、ノーネームちゃんに至っては自分の体も心も喪ってもずっと……】


――ちん。


レンジからあつあつのパウチを取り出して……ん?


「はぐっ、はぐっ……」


……るるさん、そういえば最初以外はずっとお水飲んでないみたい?


もしかしてお腹が空いた以外の理由で、おかゆを必死で食べてる……?


「るるちゃん、おかゆはストップ」

「え……」


ぴたっと手を止めるも、とても悲しそうな目で見上げてくる彼女。


僕はなるべく優しい笑顔をしながら、語りかける。


「水分は大切だから……これ、経口補水液。今の君には、こっちの方が……喉が渇かなくなりますよ。今の君には、水分が必要なんです。ゆっくり、時間をかけて飲みましょうね。ひとつ飲んだらおかゆも食べて良いですよ。代わりばんこです」


「うんっ……うんっ……!」


レンゲをお皿に置くと、急いで――喉も渇いてるよね――こくこくと経口補水液のパウチを飲み干していく。


「……やっぱり急がないのは無理かぁ……大丈夫だと思いますけど」


あまりにも美味しいのか、僕のことも聞こえていなくって――ひと息つくと、余っちゃった水分がこぼれ出た目じりを袖でぬぐって、またお皿を持ち上げて。


――はぐっ、はぐっ。


何歳の子供が――小学校低学年と思しき子供が、たかがレトルトのおかゆひとつに、全生命をかけて食らいついている。


食べてひと息をつくと、今度はちゃんと水分を――「病人用の水分」を、おいしそうに飲み込んでいる。


本当は……食べものも水もろくに摂らなかった子供に、こういう食べ方をさせるのは行けないのかもしれない。


でも、



【大丈夫】



ぴこん。


――ここには、ノーネームさんが居てくれるから、きっと、大丈夫。


「………………………………」


ばちっ、ばちっ。


頭と視界が、明滅する。


………………………………。


ここは、とても静かだ。


なんにもない空間――洞窟。


さっきまでは光すらなかった空間。


音も光も――温度も空間。


そんな場所で、たったひとり――恐らくは脱水症状で意識がぼんやりしてたほどの時間を。


その岩の下の■■■■■■、■■■■■■■■ようと――ただ、それだけを考えて。


一体どれだけ泣いたんだろう。

一体どれだけ絶望したんだろう。


……でも、この子は生きていてくれた。


僕は、それだけで――――――


【……なぁ】

【ああ】

【この気持ち、どうすればいいのかな】

【やるせないって、こういう気持ちなんだ】

【歯がゆいよな】


【今まではずっと、ハルちゃんがひとりでなんとかしてくれてた】

【だから「なぁにこれぇ……」って呆然としたり笑ったりするだけでよかった】


【でも】


【ハルちゃんでも、すぐには助けられないこともあるんだ】

【ノーネームちゃんのないないも、あくまで最終手段だもんな】

【それに、2人とも……もう魔力も使い果たしてぼろぼろで……】


【三日月えみ「<URL> こちらが、ダンジョン事変における、孤児への募金先です」】


【えっ】

【えみちゃん!?】


【三日月えみ「<URL> こちらは私たちの国の被害者への募金先」】

【三日月えみ「<URL> こちらは他の国の被害者への募金先」】


【三日月えみ「<URL> こちらは、未だ養子になるまで待っている子供の養育費の支援先です」】


【!?】

【こんなにたくさん……】

【すぐに出せるほど、リストアップして……?】


【三日月えみ「<URL> こちらは……私が個人で支援している、あの日以降に心の傷を負った――今は大人になっても、子供のままで居させられている人の治療に必要な、支援先です  どうか……御一考を」】


【九島ちほ「<URL> ダンジョンで被害を受けた方をサポートするボランティア活動の広報です  お金でなくても、手は……いくらでも差し伸べられます  強制ではなく、あくまで任意ですが……私からも、お願いします」】


【くしまさぁんまで……】

【支援先……こんなに、多く……】


【あっ……】


【え?】


【……いえ、私もこの団体とか支援していたんですけど  これらの支援メンバーの中に、共通して……本名を隠してはいますけど、今見ると明らかに三日月さんだって分かる名前が……それも、だいたいの支援先で上位の寄付金を感謝されてて  すごい人だな、偉いなって前から思ってたんですけど】


【たぶん、ダンジョン潜りとして活動を始めてからの収入のほとんどだと思われる金額を……あ、そういえばえみちゃんが活動始めたあたりから名前を見るようになったような……】


【えっ】

【……えみちゃん……?】

【ロリコンこじらせて孤児とか支援してるって思ってたけど……】

【もしかして……】


【もしかしたら、照れ隠しだったのかもな  いや、ヘタすればえみちゃんのキャラ自体も、孤児へ目を向けさせるための……】


「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
えみちゃん……そういうとこだぞ(泣)
えみちゃんは普通にへんたいふしんしゃさんですね だからといって善行をしないわけではない でもへんたいふしんしゃさんですね はい、タイーホ
えみちゃんは普通に変態さんだと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ