593話 【11年前のるるちゃんとノーネームちゃん】
【……ここへ、ノーネームちゃんが連れてきたんだよな? 小さいるるちゃん――11年前の、「あの日」のるるちゃんのところに】
【地下――洞窟?の中でひとりぼっちのるるちゃんのとこにな】
【洞窟……あ、地上が魔力に取り込まれてのダンジョン化……】
【大きな岩を、爪が……まで、必死でどかそうとしたってことは……】
【そうだよな 子供が居たら、誰かが守ってくれたはずだもんな】
【つまり……その人は、もう……】
【でも、きっとその人もないないされてるよね】
【ああ】
【そうだな】
【ノーネームちゃんだから、きっとね】
【そうだ だから、ノーネームちゃんは案内したんだね、ここへ】
【ハルちゃんの行く先は、いつもノーネームちゃんが案内してたな】
【合衆国の新兵器……おのれ、合衆国……怒る気も起きない……】
【あれは結果としてハルちゃんのためになったし……】
【草……】
【けど……】
【そのあとから、ずっとな……】
【ああ 「過去」――11年前の「あの日」に起きた、「ハルちゃんたちが居なければ確実に壊滅してた場所」へ、案内してきたよな あの異世界しかり、11年前の各地しかり ノーネームちゃんがずっと、先導し続けて】
【歴史の改変……それを、これまでずっと……】
【ハルちゃんと一緒にね】
【そうだよね】
【ノーネームちゃん……】
【ノーネームちゃんは、ハルちゃんのためになることしか、しない】
【でも、ハルちゃんが望むことはなんでも先回りして叶えようとしてる】
【そしてたぶん、るるちゃんのことも】
【そうだよな】
【うん、ノーネームちゃんハルちゃんのこと、大好きだからな】
【俺たちの大好きなノーネームちゃんだもんな】
【こんな人間大好きっ子な女神様が、たったひとりの女の子のこと、無意味にいじめたりはしないはずだもんな】
【そうだよ】
【どうして気づかなかったんだろ】
【途中まではともかく、それからはずっと】
【ノーネームちゃん、人に対していじわるなんてしなかったのにね】
【けどさ、今だから分かるけどノーネームちゃんが無意味なことなんて】
【るるちゃんの「不幸」ってさ】
【ああ】
【本当に――「不幸」だったのかな】
【いつもいつもすっ転んで擦りむいて】
【治癒魔法がなかったらケガの跡だらけになってただろうけど】
【ダンジョンの後の世界だから、治癒魔法が存在して】
【もし大ピンチでもリストバンドっていう革命があって】
【そうだよ 「ハルちゃんが配信に映っちゃったあの日にハルちゃんが来なかったら死んじゃってた」けど、それまでは命の危険もなかったんだ】
【そうか、あの日か】
【ハルちゃんがるるちゃんの「不幸」に巻き込まれたってきゃっきゃしてたけど】
【それが、もしかして……】
【そうに決まってる だって、ハルちゃんだもん】
【「不幸」って、なんだろうね】
【「不幸」ってさ、実はもっと大きい何かから――】
【るるちゃんを、「死」から守るために】
【みんなが笑っちゃう程度の「不幸」で済ませてた……?】
【でも、るるちゃんのお母さんとお父さんは大ケガをって】
【それってさ 「死んじゃうほどの大事故とかに巻き込まれるはずだった、るるちゃんの身代わり」ってことじゃ?】
【あっ……】
【だって、そのときのるるちゃんは子供だったはずでさ 大人2人が大ケガするくらいの「何か」なら、子供なら……】
【その当時ならリストバンドはまだ……】
【あったとしても、最初はダンジョンに潜る人にしか……】
【一般人だったはずのるるちゃんは漏ってなかったはずか】
【それですら、ノーネームちゃんがずっとずっと……】
【そうだぞ 10年間、ずっと傍で】
【ぶわっ】
【「呪い様」って言われても、ずっとずっと見守ってたんだ】
【ハルちゃんの配信にるるちゃんが合流してしばらくして、ようやく自我が「戻ってくる」までもそれからも、ずっとずっと……】
【身代わり ハルちゃんがGに連れ去られそうになってたときも……】
【身代わり ハルちゃんがティラノさんのレーザー直撃させられそうになってたときも……】
【ノーネームちゃん……】
【もしかして、ノーネームちゃんが最初、体どころか心も無かったっぽいのって】
【えっ】
【あっ……】
【るるちゃんを……守る、ために……?】
【ノーネームちゃん】
【ノーネームちゃん、死んじゃやだよ】
【死なないで】
【俺たち、ノーネームちゃんのことが大好きなんだから死なないで】
【love】
【to death】
【駄目】
【……】
【死んじゃ、ダメ】
【一応その表現は「死ぬほど好き」だけど】
【ノーネームちゃんが死んじゃ駄目だよ】
【そうだよ】
【ハルちゃんが……ううん、るるちゃんだって、他のみんなだって……悲しむよ】
【俺たちも、ノーネームちゃんのことが大好きなんだ】
【種族の差も性別の差も知らない 私は、ただノーネームちゃんのことが好きなんだ】
【家族への愛情だよな】
【わかる】
【この1年半、ずっとそばに居たんだ 何があっても、そばに居るよ――ノーネームちゃん】
【――アリガト】
【ワタシモ】
【――ダイスキ】
【モチロン】
【ハル<比翼>】
【ルル<保護対象>】
【ソノ】
【ツギニ】
【ノーネームちゃん……】
【そんなにも……】
【るるちゃんは保護対象なの?】
【恐怖】
【好】
【草】
【泣いてるのに笑っちゃったよノーネームちゃん】
【ノーネームちゃん、ほんとわがままだね】
【でも、それでも好き】
【そうそう】
【ハルちゃんが好きなノーネームちゃんだからこそ、俺たち視聴者はみんな――好きなんだ】
――ぴこぴこぴこぴこ。
ノーネームさんは、小さなるるさんを見ながら――いつまでもひとりごとをつぶやいていた。
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




