591話 家に帰ろうとして、るるさんと会った
【良かった……良かった……】
【ハルちゃんが帰ってくる……】
【泣いた】
【分かる】
【本当にな】
【ハルちゃんが女神に戻っちゃったら、もう帰ってこないんじゃないかって思ってたから安心したよ】
【やめろ】
【おいやめろ】
【召喚の儀は厳に慎めって言ってるでしょ!!】
【不吉すぎる】
【ヨンダ?】
【草】
【なんか懐かしい流れで草】
【涙出てきたわ】
【分かる】
【でも違う違う、ノーネームちゃんじゃないの】
【ノーネームちゃんが来てくれたら嬉しいけどね】
【それはないないというのでは……?】
【ないないでもいい……一生に1回でも美少女が俺の家に来て、天国まで手を引いてくれるだけで……!】
【ぶわっ】
【泣いた】
【あー、召喚の儀ってノーネームちゃんを呼び出す呪文だったか】
【草】
【本当に気軽すぎる女神様で草】
――ぶぉん。
僕の前に――あ、ちっちゃなノーネームさんが手を突き出した先だ――ぼっかりと空いた穴が出現。
ここに来たときの、あの謎空間への扉。
「――人の世へ助力を……悪魔共を排除してくださり、再度に神の国へご帰還されるのですな……」
「え?」
「は?」
「………………………………」
「………………………………」
「?」
【ごらんよ、ハルちゃんが不思議そうな顔でこてんとしてるよ】
【かわいいね】
【かわいいね】
【かわ――はっ!? いかん、サキュバスの侵食だ!】
【草】
「……違うのですかな?」
「あ、はい。僕、家が大和の国にあるので。えっと、田舎……じゃない、つい最近に都心近くのたわまん?ってのに引っ越したので、そこが今の家ですね」
たぶん新幹線か飛行機使えば、国内ならどんなとこでも1日以内には着く。
会おうと思えば会える距離って、実質近所だよね。
【草】
【タワマンに疑問符がついてて草】
【ハルちゃん、ほんっと言葉がいちいちかわいいんだよ】
【わかる】
「ふぉぉぉぉぉ!? 神が……我が国に住んでおられる!? ……あ、こ、腰が……!」
「大丈夫ですか?」
なんかすっ転んで腰を痛めたらしいおじいさん。
……金属製の床って、すっごく痛そう。
【草】
【草】
【そらびっくりするわ】
【ハルちゃん……どうして……】
【そうだよな、ハルちゃんはるるちゃんたちと住んでるんだもんな】
【忘れてなくて感動した】
【感動した】
【ハルちゃん、帰る場所覚えてたね】
【良かった……良かった……】
「お、畏れ多くも……いずれ、御礼参りをすることは……?」
「え? あー……10年、や、11年経ってたら大丈夫だと思いますよ? 九島さんに話、通しときますね。そのころには僕の名前とか、どっかで聞くでしょうし」
困ったことがあれば頼れる九島さん。
ちほさんって呼ぶと恥ずかしがる人。
彼女ならきっとなんとかしてくれるだろう。
そして、なぜかるるさんとえみさんと九島さんとリリさんが押し寄せる家に住んでたころには――なぜかバズってのを起こしてすごい数の人が僕のことを知っていたんだ。
なら、きっとこのおじいさんも知る……あ、いや、ネット知らないと知らないままかなぁ。
「11年!? そ、それに『クシマ』なるお方とは一体……!?」
「九島さんは九島さんですね。そのうち分かります。女神とか言われてますね」
【女神だよ】
【くしまさぁん is goddess】
【くしまさぁんを崇めよ!】
【九島ちほ「ハルさん!!??」】
【草】
【草】
【あーあ】
【さすがに黙ってられなかったくしまさぁん】
【悲報・くしまさぁん、お偉いさんに名前を知られる】
【しかも女神から女神言われたぞくしまさぁん】
【もうロックオンされたね☆】
【かわいそう】
【おいたわしい……】
【ハルちゃん関係では完全に保護者な被害者で草】
【くしまさぁんは報われて……】
「……このお礼。本当に、奉納だけで……?」
「? ……あ、お酒のこと。……んー、そうですね」
僕は、ちょっとだけ考える。
………………………………。
……そういや、最近何も食べてない気がする。
「……お酒のつまみも、おいしいのをください。それで嬉しいです」
「……はっ……! 我が命の限りを――」
「や、そういうの要らないので、おじいさんが好きなつまみとお酒、持ってきてください。で、また会ったら一緒に食べて飲みましょう。半分こです。僕は、それで充分です」
【速報・ハルちゃん、おなかがすいた】
【しかも奉納したのを半分こしてくれる天使っぷり】
【草】
【草】
【ああ、ずっと戦ってたもんねぇ……】
【えーっと? ……うん、ゾンビと戦ってからずっとだね!】
【たまには二足歩行してたサメさんのことも忘れないでください】
【サメが襲ってきたぞっ!】
【草】
【ハルちゃんだってお腹空くよね】
【ああ、人間に限りなく近い神様だからね】
ばさっ、ばさっ。
僕は、大きく羽ばたいて――もう1度だけ、この世界の景色を眺めて。
「じゃ、また会いましょう」
そう言い残して、僕は不思議空間へと飛び込んで――――――
◇
「……おねえちゃん……だれ……?」
「……るるさ――――、るるちゃん?」
その先に居たのは――小さな/あのときの/どうして忘れてたんだろう/僕がなんとか助けられたはずの/泣きはらして呆然としている――るるさん。
……え?
なんでるるさんが?
いや、僕は――そうだ、確か「この体が■■■前に」――――――
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




